いわき市 平園芸へ
今回はもうすぐ「母の日」ということで,母の日のプレゼントの代名詞と言えるカーネーション、鉢物に迫ります。
美しいカーネーションで有名な福島県の平園芸のもとへ訪れます。
上野駅からスーパーひたちに乗っていわき駅へ。

田園風景を想像していたので、都会さに驚きです!
車で15分ほど行くと到着です!

今回平園芸のたくさんのウンチクを教えてくれたのは薄葉大介さんです。
2011年9月からお父さんの丈夫(たけお)さんから代替りされました。
ちなみに平園芸の名前は地名に由来し、「福島県 いわき市 平」から来ています。
花芽を合わせる
さっそくカーネーションに迫っていきましょう!
平園芸では直径15cmの5寸鉢を主に、4寸鉢と6寸鉢も作っています。
鉢物のカーネーションは「すべては母の日のために」と言えるほど、母の日前の出荷に照準を定めます。5輪程がきれいに咲いた頃が出荷のベストな時期だそうですが、咲き加減を合わせるためにハウス内の日照管理、温度管理は非常に大切にされています。ハウスの窓を開けたり、暖房器で調節したりします。


一鉢ずつ見極める

ハウスは全部で18棟もあります!
そして、カーネーションは全部で3万2千鉢も植えられています。

ハウス内はきれいに縦横ともにピシッと整列したカーネーションの鉢花が並びます。
さらにここがポイントなのですが全体的にそのハウス内の咲き加減が揃っているのです!
実はこれは人の手によってできた光景なのです!
品種は同じでも、各鉢ごとに、やはり多少の成長の早い遅いのずれが出てきます。
例えば、暖房の吹き出し口のあたりは気温が高くなりがちなので花の開花が他の場所より早くなります。一方で、ハウスの入り口近くはハウス内より低い温度の外気に触れる機会が多いので開花が他の場所より遅くなります。
また、ハウスの真ん中あたりは日が当たりやすいのに比べ、ハウスの端や柱の場所、ハウス内のカーテンの継ぎ目で2重になっているあたりは陰になりやすく、花の成長も遅れがちになります。
そうした置く場所による花の成長のずれを全体として差が出ないように、日陰で成長の遅かったものを日当たりの良い場所へ移すといった置き直しを一鉢一鉢見て判断し、行っているのです。
この成長の差の判断は各人の目で判断されるので、パートさんたちとの共有で難しい点でもあるようです。
見事に咲き加減が揃っていて、たくさん育てられていた「グランルージュ」という品種は、最初にみたハウスでは1輪かつぼみかというもので統一されていましたが

次に入ったハウスではもっと咲いているものでそろっていました。
3万2千鉢を一つ一つそろえるとは、非常に手間暇がかかっています。
このハイレベルさなので水やりも一鉢ずつ手でやっています。「よく底面給水で鉢の下から水を吸わせる方法がありますが、それだと常に根が濡れていて根が弱くなるんです。」
パートさんたちにも水やりをお願いしていますが、6人ほどのパートさんたちで3時間程もかかるようです。
根が強く育つことのメリットは何でしょう。
それは水ストレスに強いことです。
カーネーションが市場などに出荷された後は様々な環境が待っています。
直射日光がたくさん当たるところだったり、日光が当たりにくいところ、、、また、日本全国どこへ行くかもわかりません。暑かったり、寒かったり様々です。
カーネーションたちにはそれまで育ってきた温度良し、日照良し、肥料良しの平園芸のハウスの環境が一番居心地良いので、外に出ていくことは過酷に違いありません。
植物全般に言えますが、快適にすればするほどその環境が当たり前だと感じて育ってしまいます。水やりも底面給水にすれば常に水がひたひたの状態が当たり前になってしまいます。
すると、出荷後水が常に十分ではない環境に置かれるとすぐにストレスを感じ,根が傷んでしまうのです。
根が傷んでしまうと、植物全体元気がなくなってしまい、葉の下の方(下っ葉)も黄色くなってしまいます。
こうした出荷後のストレスを少しでも減らすため土の表面から水をやっていきます。
水やりの時期の目安は「手で持って軽くなった頃」で表面の土が乾いたくらいです。
より乾いた環境に強くなるために水のやり過ぎを避けています。
この管理力が品質がよくてボリュームのあるカーネーションにする決め手でしょう。
消費者のことを思ってくれているのは嬉しいですね。
色を選ぶ
現在は20品種ほどのカーネーションを育ててらっしゃいますが、やはり色で欠かせないのが王道の赤とピンクのカーネーションです。
赤とピンクで全体のおおよそ3分の1を占めます。
さらに赤、ピンク以外に黄、オレンジ、紫などさなざまな色の品種を栽培しています。花の専門店さんは1ケース6色入ったMIX6種を好んで仕入れることから、平園芸では赤、ピンク以外の色の品種の栽培にも力を入れています。
その他市場などの注文に応じての栽培もしています。
王道の色を重視しつつ、複色のもの、香りの強いもの、珍しい色合いのカーネーションも作られています。




品種選び、大切なポイントは
●株張りするもの(ボリュームがあるもの)
●成育性の良いもの
●花の形が整っていること
●色合い
●輪数が多いこと
●花保ちが良いこと
●花ふけの遅いもの(退色のおそいもの)
●花の弁が多いもの
●葉の色 など
毎年こういったたくさんの点に注意が払われ、同じ赤色でも優れたものが選ばれます!
また、“ベロが目立たないもの”というのも、意外と気になる人が多いのでポイントです。
ベロとは、、、

↑この花の中から白く出た糸のようなものです。雌しべの一部、花柱(かちゅう)と呼びます。
どんなカーネーションにもこの花柱はあるのですが、品種によってこの花柱が花の中に隠れて見えません。真っ赤な「グランルージュ」はまさにそうです。↓


また、今年の母の日が終わり次第来年向けの品種選びが始まります。
大田市場の中央通路で毎年鉢物カーネーションの展示がありますが、いろんな品種紹介や、最近の売れ行きを踏まえた来年に向けての提案がされているので、それも参考にされるそうです。
カーネーション 出荷までの道のり
母の日から遡ること半年。
9月終わり~10月初め頃に種苗会社から「挿し穂」という茎から根が出た状態のものを仕入れ育てていきます。
3~4週間後には1本の茎が伸びて茎の節数が3~4節ある状態になっています。
この時期に“ピンチ”という芽を摘む作業を行います。
このピンチという作業をすることで茎の脇から新しい芽が3~4本出てきて、茎数が増えるわけですね。
このピンチ作業は12月後半にも行われます。
茎に節の数が13個ほど見られるようになった頃、花芽ができます。つぼみの兆しです!

そして1ケ月後 つぼみが小豆の大きさです。

さらに1カ月後 色が見え始めます。

さらに1週間後 開花です。
この道のりを経ていよいよ市場へ出荷です。
薄葉さんの今まで
薄葉大介さんは平園芸の長男として生まれ、幼い頃から家業を継ぐものだという意識の中、育ってこられました。しかし、ずっと今までこのいわき市にいたわけではありません。大学時代は東京で過ごし、経営学部だったそうです。意外な過去がありそうですね!
大学受験の時に農学部と経営学部を受けて両方受かったのですが、
「もともと理科が好きではなかったんですよ。」と振り返ります。
また、「新聞を配達することで奨学金をもらえる新聞奨学生という制度があって、その募集が文系の学生に限られていたんですよ。」
というわけで、2つの学部を天秤にかけた際に経営学部へ進まれました。

その新聞奨学生ですが、お話を聞いていますと結構タフです。毎日の朝刊、夕刊を配り、加えて月末には集金をする仕事もあります。「普通に社員みたいに働いている感じでしたよ。」と語ります。
しかし、「大学よりそっちの方が楽しくて、、、」ともおっしゃるので決して辛い毎日というのではなく、楽しみながら大学生活を過ごされていたのが分かりました。
矢祭鉢物研究会で学ぶ
そんな薄葉さんも大学生活を終えて実家に戻られると、お父さんの勧めで福島県矢祭町に研修へ行くことになります。
福島県は縦に3つの地域に分けられ、東を浜通り、西を会津、真ん中を中通りと呼ばれます。矢祭町は中通りの最南端に位置します。

この矢祭町に矢祭鉢物研究会というカーネーション、シクラメン、ポインセチア、ルクリア(ニオイザクラ)、プリムラなどの鉢物生産において名人級の人たちの集まりがあります。
略して、矢祭鉢研です!
その1人、金澤さんは(有)矢祭園芸として生産されていて、花の栽培や育種で高い技術を持つのはもちろん、研修生への生産技術の指導など、人の育成にも力を入れていらっしゃいます。
薄葉さんは矢祭園芸の研修生として、またその研修生たちや研修を終えた元研修生たちで創った現在20名ほどから成る「金澤塾」という勉強会の塾生として生産の技術を学びました。
金澤さんの考えでは、“実際に自分で失敗しながら必要な知識を学ぶ”というもので、薄葉さんも実際に研修する中で、植物の温度などの管理、病害虫対策の技術を磨きました。
そして、研修後実家で生産を始めます。平園芸ではそれまでお父さんの丈夫さんがシクラメンに力を入れて生産されていましたが、大介さんが生産を始めることになって、カーネーションの生産も加わることになりました。
薄葉さんは今も矢祭鉢研の月1回行われている生産についての検討会に参加し、ひたむきに日々技術向上に努めています。
個人で自分流に作ると花芽の具合が鉢によってバラバラになりがちですが、
矢祭鉢研には、「この時期はこれぐらいの育ち具合が良い」といった目安がしっかりあります。
薄葉さんは、出荷予定の鉢物のサンプルを、種類ごとに各6~10鉢を検討会の時に、厳しく名人たちの目でチェックしてもらっています。
自分はこの矢祭鉢研の名人たちと共に厳しい基準に沿って作っているのが強みと言います。
現在平園芸ではシクラメン、カーネーション、アッツ桜を3本柱に生産し、昨年からチェッカーベリーも始めました。各花の出荷時期が集中していないので年間を通じ、良いリレーができているそうです。

広い土地を生かして量も多く生産されていますが、4本柱のように種類を絞ることでその花の性質を細かく把握し、品質を第一とした生産が行われています。
アッツ桜の珍しい品種も見せてもらいました。


東日本大震災では
先の大震災では原発事故でもいわき市は避難指示が出ませんでしたが、薄葉さんは幼いお子さんの雄大君(当時まだ1歳)もいるので自主避難をすることにしました。
「いわきに帰ってくるのがいつになるかわからない」という辛い思いの中、薄葉さんがパートさんたちに平園芸の休業を知らせた時は、皆さん涙、涙だったそうです。それだけパートさんたちもこの平園芸を大切に思われていたのですね。
薄葉さんはその後お姉さんのお家や、ご親戚の勤めていらっしゃる会社の社宅がある千葉へご家族で避難されました。
これまで愛情を込めて育ててきた花たちを残して、またこれから先の見通しがつかない不安定な状態で生活するのはとてもしんどかったと思います。
1ケ月経って、4月半ばには原子力発電所から半径20~30km圏内の屋内退避指示が解除され、いわき市の放射線量も低いことが確認されました。いわき市から避難していた人たちも戻り始めました。
薄葉さんは避難してから、ありがたい縁で学生時代に新聞奨学生でお世話になったお店で働かせてもらったりした後、いわき市に戻りました。

震災後、平園芸で再び花を作れるようになり「またパートさんたちと一緒に仕事できるのが嬉しい」とおっしゃいます。
「パートさんたちを“雇っている”というのではなく、仕事をパートさんにして頂いている、みんなに助けられて成り立っていると感じます。」
こうした謙虚さ、どんな人も大切にする姿勢はパートさんに話をする雰囲気からもうかがえました。
平園芸のモットー
こうした姿勢は、薄葉さんのお父さんの丈夫さんが考えられたキャッチフレーズ
「人と共に 花と友に」にまさにつながっています。

これには一緒に働いてくれている人がいて、市場で売ってくれる人がいて、いろんな人が関わってくれるおかげで花を生産できることができ、また、花が友達のように身近な存在になってほしいという思いが込められています。
花は好きになるのに年齢、性別は関係ないので、たくさんの人に花好きになっていってほしいと薄葉さんはおっしゃいます。
ちなみにこのキャッチフレーズを考えたお父さんの丈夫さんは、今は家庭菜園とお孫さん雄大君のお世話を楽しんでいらっしゃるということでした。

平園芸の格言
○たくさん作っても愛情は一鉢ずつしっかりかける!
○母の日に向けて花芽をしっかり合わせる!
○人との結びつきを大切にする!
平園芸からメッセージ
●カーネーションは多肥料を好む植物なので、開花している時期には多くの肥料を必要とします。長く楽しんでもらうために肥料を随時あげてください。
●置き場は日当たりの良いところに飾ってください。
●水をやった後に受け皿に溜まった水は、しっかり取り除いて下さい。
最後に
もうすぐ端午の節句です。雄大君がいるので、立派なのぼりが立っていました。

↑雄大君。穏やかで安心した表情が印象的でした。素敵な人たちと、素敵な環境の中で大きくなってね。
今回平園芸さんに訪問させて頂いて非常に人への思いやりを大切にされているのを感じました。この思いやりが花へも向けられています。


今年も母の日の出荷が楽しみです!![]()
(文責:kadono hiromi)
それはご存知の通り、星の巡りあわせといいますか、人との出会いにはタイミングというものが重要だからということです。
なにせトルコギキョウ界の重鎮ですから、もちろんだーいぶ昔から佐瀬農園にお伺いせねば!と思ってはおりましたが、ウンタン8年目にして今回佐瀬農園さんの星とウンタンの星が出合いましたので、満を持して取材に臨みたいと思います。
いざ!
ウンタン史上“初の東京ゲートブリッジ”。

本日晴天につき、歩行者がたくさん!

今や世界一高いタワーとしてギネスにも認定されたスカイツリーも良く見えて、散策日和じゃ。

大田市場から葛西方面まで短時間で、且つ無料で行けてしまう喜びを初めて享受しました!
我ら湾岸族には大変有難いインフラが完成したというわけです。
なんて考えているうちに、あっという間に千葉県入り。

両側を満開の桜に迎えられ、やってきたのは東金(とうがね)市。
その名の通り、関東圏の東に位置し、その太平洋を臨む海岸は金色に輝く・・・カナ?
そう。ここはあの「九十九里浜」。

「想ひー出ぇの~、くゥ・じゅ・ウ・く・り・はまぁあ~♪♬」と歌が聞こえてきそうですが(昭和生まれだから?)、ゲートブリッジのおかげで予定より30分早く着いたので、「想い出の九十九里浜」の鼻歌を歌いながら九十九里浜を歩き、・・・ちなみに時間帯的に“夕陽は泣いて”いませんでしたが・・・春のまだひんやりとした太平洋の風を感じたところで、気を引き締めて佐瀬農園へGO!
九十九里浜からたった4km内陸のところでトルコギキョウの育種と生産をされているのが、佐瀬農園の佐瀬昇さんと奥様のとし子さん。

この辺りも大昔は海だったようで、佐瀬さんの敷地内は砂地&白い貝殻の破片がまだ残っています。

佐瀬さんの栽培施設は佐瀬家の広い敷地の中にあります。
この東金地域は温暖な気候に恵まれ、古くから農業・商業等の産業を中心に発展してきました。また大消費地東京まで60kmという立地条件にも恵まれ、青果物の生産のみならず、園芸産業も切り花、鉢物問わず盛んです。
農業中心の世帯が多い中、佐瀬さんにおいても例外ではなく、ご両親は野菜を作っていらっしゃいました。佐瀬さんご自身もその後を継ぐこと以外の選択肢は全く頭の中になかったといいます。
☆★☆佐瀬さんとトルコギキョウとの出会い~育種にハマルまで
就農当初に作っていたものは“ナス”
ところが1970年代、当時20代前半だった佐瀬さんは野菜を作り続けながらも・・・
「もう日本人は腹いっぱいだべな。もはや野菜ムリだよなー」
と思っていたといいます。
当時、特に野菜は「量の力」が強く、時代の流れからも共選や組合など組織の威力には敵うまいと感じていました。そこで地域の人たちを集めて共選で出荷していましたが、それでも全国で圧倒的な力を持つ大きな出荷団体には到底太刀打ちできない。このままではキツイ。。。(+_+)

「何かねっぺなー・・・」
(↑訳:「(野菜のほかに)なにか作るものないかなー」)
・・・と頬杖をついて考えていたかどうかは分かりませんが、そう思っているところに県の試験場の先生に花の生産を勧められました。
それが花と佐瀬さんとの出会い。最初に手掛けたのはなんとカスミソウ。1980年代、カスミソウは花を使うときにマストアイテムとして重宝され、空前絶後の人気を誇りました。
しかーし、1年でカスミは撤収!(←潔いですね~)
というのも、ちょうどその時にトルコギキョウの覆輪(ふくりん)タイプ(※)が世の中に一斉デビューし、注目を浴びたという、トルコギキョウ市場史の中では劇的な出来事が起きたのです。
そのときに試験場の先生が「トルコ、いいかも!」( ^―゜)b
と言ったので、「じゃ、やってみっか」と軽~い気持ちで始めてみたのが佐瀬さんがトルコギキョウを手がけたきっかけでした。
用語解説その① 「覆輪タイプ」
その字の如く「輪を覆っている」タイプのことで、このように花弁の先が縁取られたタイプのことをいいます。

トルコを知る上では必須単語です!

「カスミは、もはやどこでも作っているから、トルコが面白いかもと徒に作ってみたんだ。
ホンモノなんて見たことなかったのにね」
え??∑(゜◇゜;) ナヌッ!?
ホンモノを見たことがなかったって??
「トルコギキョウは世間に出たばかりのときでね、一般の人の認知度は極めて低かったし、私も写真では見たことがあったけど、実物を見たことなかったんだ」
ホンモノを見たことがなくても、素早く生産に取り組む佐瀬さんの高い行動力(高動力と書くのか?)を示しています。
「最初の1回だけ種苗会社からプラグ苗(※)を買ってね。その後はずっと現在に至るまで、全量できた花からタネを採って栽培しているんだ」
えーーーーっ!∑(゜◇゜;) と驚かれたみなさま、そうです。それが佐瀬さんの生業なのです。
通常の生産者さんは、種苗会社からプラグ苗を買って育てます。
しかし、佐瀬さんの場合は、育種のために咲いた花からタネを採り、出荷用も合わせ全量タネから育てているのです。
用語解説その② 「プラグ苗」
プラスチックなどでできた多穴トレーにタネをまいて移植できるまでに育てた苗のこと。電気のコンセントに差すプラグのように簡単に差せる(定植できる)ことからその名が付いた。
タネから育てることを実生(みしょう)といいますが、どのような特徴があるのでしょうか・・・?
だいぶざっくりと申し上げますと、出来上がりに個体差が出やすくなります、ハイ。
プラグ苗から育て場合は、既にその子の性質が決まっていますので、比較的個体ごとの差が小さい。あの子もこの子も同じ性質と見た目の子ができるわけですね。差が小さいから同じ環境で育てると、全てが同じように収穫でき、安定生産に繋がるわけです。
同じものを大量に生産できる、つまり市場流通に向いているわけです。
一方、実生で育てると、あの子とこの子の差が出やすい。つまり、変異が出やすいということなのです。そして生産も不安定になる。
「トルコギキョウの苗で有名なサカタのタネさんやタキイ種苗さんなどからF1(エフワン※)の良い品種の苗を買えば、個体差もなく生産も安定するんだ。
だけど試験場の先生に“タネ採ってみれば?”と言われてね」
用語解説その③ 「F1」(エフワン)
花き業界でF1といえば、“フィリアル・ワン(Filial 1=First Filial Generation)”を指し、「第1世代」を意味する。
異なる性質を持つ植物を掛け合わせてできた雑種第1世代のことで、一般には両親よりも優れた形質になることが多いのが特徴。しかし、その優れたF1からタネを採っても同じ姿にはならない。
フォーミュラ・ワンではありませんX X X、くれぐれも。

「6割くらいしか出荷できないときもあったよ」
と佐瀬さん。
つまり、タネを採ってもあの子とこの子の差が大きく、同じ姿になりにくいので、ひとつの箱に入れて市場に出荷できないわけです。6割を出荷して、残りの4割の中に気に入った変異があれば、そのタネをとってまた撒いて殖やして、またその中から良いものを選んでタネを撒いて殖やして・・・の繰り返し。
作業に膨大な時間と労力がかかっても、これを一言で「選抜を重ねる」と言います。
佐瀬さんのトルコはまさに“選抜×選抜選手権”に生き残ったスーパー選手たち。これを通称“サセ・トルコ”といいます。(佐瀬さんに断りもせずに、市場では勝手にそう呼ばせていただいております)

育種とはこのように品種を固定していくという、とても時間がかり地道で根気のいる作業なのです。
出荷率も低くなるし、時間もかかる。どうして、佐瀬さんはこのような地道な育種をしているのでしょうか。
「私は子供のころからハトが好きで、昔はハトの交配をしていたんだよ」

は、ハ、ハ・トッ??(´゚д゚`)ポカーン
ハトってあの「鳩」ですか?パタパタと飛ぶ??パタパタパタッ
「そう、そう。あのハト。
ハトが好きで教科書じゃなくてハトの本をカバンに入れていたんだ」
ナヌッ??佐瀬さん、ただ者ではなさそうな臭いがしてきました・・・(・ω・)クンクン
「小学校3年生のときからハトを飼い始めてね、大人になって自由に使えるお金が増えたら、ハトの交配で人生勝負しようと思っていたんだよ。それが大人になると勝手が違ってきて、農業に従事したわけなんだけどね。
だから先生にタネを採ってみたらと言われた時には、“待ってました(≧∇≦)!!”とばかりに始めたよ。何の抵抗もなく、今に至るまで楽しくね!」
つまり、“タネを採ってみたら?”という先生からの提案は“トルコを交配して、オリジナル品種を作ってみたら?”という「育種のススメ」だったわけです。

まあそれにしてもハトからトルコギキョウって同じ交配でもずいぶん“飛ぶ”ような気がしますが・・・
「全く同じだよ(笑)。
ハトもいろんな種類がいて、自分が好きなあっちとこっちのハトを掛け合わせてみるわけだから。
私のトルコの交配の原点は子供の頃に夢中になったハトの交配にあるといっても過言ではないよ」
佐瀬さんがトルコのプラグ苗を購入したのは、後にも先にも導入当初の1回だけ。以降全てタネを採って実生で育てています。
他の人とは違う方法で栽培を始めた佐瀬さんでしたが、この実生栽培も順風満帆ではありません。
「バブルが崩壊して、少し遅れて花の業界全体が落ち込んでいったでしょ。
その時には花の生産者も減ったよね」
そうです、日本における花の消費の大きな流れとして、日本のGDPの成長とともに花の消費も徐々に伸び、1990年大阪で開催された花の万博(国際花と緑の博覧会)をきかっけに、花き産業は爆発的に進化。花の生産、消費の先進国として歩み始めます。
花の場合はバブル崩壊後、他業界よりレスポンスが遅れ、およそ10年後にピークを迎え、1998年に3,000億円(市場取り扱い金額、一般社団法人日本花き卸売市場協会所属市場の総計)ほどになります。
(データ元:一般社団法人日本花き卸売市場協会)
ところが、上のグラフが示すように1999年から2000年にかけては取り扱い金額は急落。その後も業界の取り扱い金額は緩やかではありますが減少の一途を辿っています。
「’99年と2000年にはトルコギキョウは生産だけじゃなくて、個人育種家も随分撤退したよ。
いわゆる“冬の時代の到来”ってやつね。花生産を生業にしていても、トルコだけやめたりした人もいたからね」
そのような時代の流れの中、佐瀬さんはやめようとは思わなかったのですか?

「なにせタネ採っちゃったからね~。
そのタネから今度はどんな花が咲くのか“また見てみたい”という気持ちが強くて、やめられなかったんだよ」
なるほど、すごい好奇心!育種家さんならではのやめられないサイクルですね!
「もうここまでくると病気だよね(笑)。
儲かるかどうかより、タネを採っては花を見たい、そのタネを採っては次の花を見たいの繰り返し。
やめることなんて一切考えたことなかった」

奥様「本当に好きなんでしょうに、夜中に“ちょっと見てくる!”とふら~っと出て行って、2-3時間戻ってこないのよぉ~」
何をしに行かれるのですか?
佐瀬さん「夜に花が閉じないトルコを探しに行くんだ」
夜に閉じないトルコ・・・?「(゚ペ)ハニャ?

そうなんです、皆さんご存じでしたか?トルコギキョウは本来夜になると花を閉じる昼咲き植物なのです。多くの植物が昼咲きですが、ご存知の通りサボテンの月下美人や一部スイレンの品種などは夜咲きになります。
(ウンタンスクリーンの前のみなさま、ご自身は昼咲き?夜咲き?どちらのタイプでしょうか?)
「消費者からの声で、閉じないトルコが欲しいって言われてね・・・」
なるほど、それで閉じない性質のものが咲いていたら、そのタネを採って殖やしていこうというわけで、あえて夜になってから圃場を見に行っていたわけですね!

そのような品種は見つかりましたか?
「閉じない性質のものが見つかったわけじゃないんだけど、1株だけ八重のフリンジタイプのものを見つけてね。

世の中はまだ一重が主流で覆輪が人気の絶頂だった。だけど八重を見て“これだ!”って思ったんだよ」
スタンダードは一重だった時期に、八重のフリンジタイプに可能性を見い出して拾い上げたのはなぜですか?
「自分が好きな形だったんだ。やっぱり自分が好きじゃないと気合が入らない。特にバブルがはじけて右肩下がりの状況下で、経済性第一で考えていたら捨てていたかもしれないよね。
お金になる・ならないは関係ナシで、ただ純粋に自分が好きな形だった。
しかも、八重だから一度開くとそのままロックされて、閉じなくなる」
OH!なるほど!!
ふわふわのスカートを何重にもしてはいたらスカートはボワッと膨らんで閉じなくなりますね。それと同じことで、八重のフリル付きトルコが一度開花すると、夜になっても閉じなくなったわけですね。
佐瀬さんの感性にヒットし、なおかつフリンジが厚いから結果閉じないことがわかった。一まさに石二鳥的な品種を見つけたわけですね。
「自分の感性で選んだものを、いつか世間が共感してくれればラッキーくらいにしか思っていないけどね」

そのように育種を進め、現在は何品種くらいあるのですか?
「12-13品種かな。

昔は70-80品種くらいあったけどね。
でも今は各種苗会社さんがなんでも揃えているから、隙間がないんだ」
なるほど、色・形・サイズどれにおいても品種が豊富で、ニッチがないわけですね。
でも育種を繰り返していたら、増えていくばかりで10数品種ではすまないと思いますが、市場出荷しない品種はどうされるのですか?
「捨てる」
ギョッ∑(゜◇゜;)
でました、断捨離宣言!!
「種苗会社のカタログを見て、たくさん出てきたら捨てる。
だいたい新品種も3年経つと量がまとまって出てくる。私が生んだ品種もそうだけど、生産者さんが市場で買って交配して別の名前で出荷されたりするんだよね。茶系は特にそういうことが起こっている」
そうそう、佐瀬さんといえば、茶系のアンティークカラーの生みの親!

今では一般的になり多品種を揃える茶系トルコも、そのオリジンは佐瀬さんの育種にあったのです。
最初に茶色が出た時に、捨てずに残そうと思ったのはなぜですか?
「“佐瀬さん、きたねェ色のトルコねーがぁ?”とある仲卸さんに言われてね。
それから中間色とか変異の中にあったアンティークカラーに目を付けるようになったんだ。普通なら捨てるんだけどね。
一方で日本でも外国からの人が増えたでしょ。だから原色もぜってー必要だっていう確信があったんだ。
その両方のバランスを取りながら残していくんだよ」
なるほど、販売や消費のアドバイスに耳を傾けながらも、常に社会全体の動向にアンテナを張り自分で判断していく。ここに育種に比重を置く経営者としてのポリシーを見て取ることができます。
☆★☆トルコのタネ、見たことありますか?
ところでみなさん、トルコのタネを見たことありますか?
ケシの実のように小さいんですよ!
佐瀬さんがウンタン取材班に特別に(!)見せてくださいました。

「このひと山で何万粒とある。
1ミリリットルで15,000-16,000粒くらいあるんだよ。
それをこういうマス目の入ったトレーに撒くんだ」

え?∑(゜◇゜;)
もしかして、それを1粒ずつプラグ苗のトレーに撒くのですか?
しかも、この1マス、えんらいちっこいなーーーッ!

「貴重なタネはそうだね。
ドの強いメガネをかけて、1-3粒ずつを取ってまくんだ」
1-3粒ずつってどうやって取るのですか?
「楊枝の先に水を付けて少し湿らせてから、タネを先端にくっつけるんだよ」
わおーーー・・・気が遠くなるような作業です。

「でもそのほかの普通の品種は味の素のコショウを入れるビンに入れて、ゴマ塩をまくみたいにパラパラとまく」
芽が出たら余分な芽は間引いて、2ヶ月後に定植します。
その芽が育って、ツボミができたら、交配はめしべが開く前につぼみをこうやってこじ開けて、早い段階でピンセットで授粉します。

「ピンセットでつまむのがボクの楽しみ♪」
わー、だいぶマニア入ってます。
佐瀬さんの出荷品種はすべてこのようにして生まれた変異なのです。
「でもやりすぎるとご飯が食べられなくなっちゃう。生産は出荷のためのものだけど、育種は出荷に直結するものではないからね」
育種のコツはありますか?
「“じっと我慢の子であった”。
慌てるとロクなことないよね。何かしらアクシデントに見舞われる。慌てずじっくりやっていれば、最後はお天道様に助けられる。
変異は神様からのプレゼント![]()
神様に“お前、やってみろ”って試されているんじゃないかと思うんだ。変異を見逃さずに、それを拾って可能性を追求する」

なんだか“変異=夢の扉”という感じですね。
佐瀬さんはトルコの新品種に対して飽くなき追求を続けています。
☆★☆ネーミングの秘密
サセ・トルコファンの方でしたらご存知かもしれませんが、佐瀬さんが育種された品種の名前を見てみると・・・
貴公子・貴婦人・森の雫・雅(みやび)・楊貴妃・曙・・・と和名ばかりが採用されています。
大変センスがあって、トルコに詳しくない人でも一度聞けばすぐ覚えられるような良い名前ですね。
どなたがつけていらっしゃるのでしょうか。
「名前はぜんぶカーチャン」
なるほど、納得です。
どうやったらそのようなセンスの良い名前を思いつくのですか?
「商品になるまで毎日その花を見ているから、いざネーミングのときになるとポン!と思い浮かぶのよ。」
ととし子さん。

「でも決定は私ね」と佐瀬さん。

はいはい、わかりました。みなさん、“決定”は佐瀬さんでーす( ^―゜)b
でもどうして和名にこだわるのですか?
「日本人だから。
オレ、ヤなの、カタカナで書くの。カタカナ、イミワカンナイ。
英語嫌いだし^_^;
それから、色名を使わずに色を想像できる名前にするのが最も良いと思っているんだ。やむを得ず使うこともあるけど」
なるほど、ここにも育種家としての佐瀬さんのポリシーを見ることができます。
☆★☆ちょっとだけ生産について
理想的な花の付き方は、1苗から3つの花枝に分かれ、大輪の開花がほぼ同じ高さで3輪&ツボミが1-2輪付いている状態。これがサセ・トルコの黄金率です。

トルコの花芽はこのように↓ジャンジャカ上がってくるので、

1箇所から2本花芽が上がってきたら、1本は情け容赦なくピンチ!(これを「芽かき」といいます)

残った花芽に力を集中させていきます↓

そうすると残った花は切られた花の分まで生きようと大輪に開くのです。

水は決して適量を超えることなく、少しずつ遣りながらゆっくりゆっくり育てます。
ここでも「じっと我慢」がキーワードなんですね。
「そうだね、例えば天候不順って言っても、ウチの上空だけが天候不順なわけじゃないでしょ。本州の天候はほぼ似たように変化しているのだから、自分だけが大変なわけじゃないと他産地に思いを馳せながら我慢して作るんだ」
「それから、ついつい水をやりたくなっちゃうんだけど、やりすぎないように我慢するの。
花弁の固い丈夫なトルコを作るには、水をぎりぎりまで切るといいのよ。
もうそれこそ、水が足りなくて首が少し垂れるくらいまで水を切るんです」と奥様。

どうやら生産に詳しいのは、奥様のようです。
トルコギキョウは、北アメリカはテキサス州原産のリンドウ科。高温でたくさん水をやりながら過保護に育てると、どんどんどんどん伸びてしまい、節間も伸びて葉や花に“しまり”がなく、だらりとしたものができてしまいます。

「節間はその花の人生を物語っているからね。
長かったり短かったりすると、それだけストレスがあったということだよね」
なるほど、みなさまトルコを買ったときは花にばかり見とれず、是非節間もチェックしてみてください。
☆★☆まさかの手抜き!?
え?もしかして抜いてる???
わおッ!切り花を根っこから抜いて収穫するなんて、初めて見ました!!コレ常識??

そうなんです、トルコギキョウの場合はハサミで切って収穫する場合と、佐瀬さんのように引き抜く場合とがあります。(それぞれの生産者さんの選択です)
で、でもどうして抜いてしまうのですか?
「この方が楽だから」
トルコは1苗1採花が基本。1度切ったら、その苗は終了。
トルコギキョウの改植は毎年のこと。タネ、あるいは苗を植えて、芽が伸びて花が咲いて、一度収穫したら終わり。前回のエピデンドラムやバラなどのように株を充実させて、そこから上がった新芽を育てるということではありません。
トルコの採花は一度きり。花を切ったら、その苗ごと終了なのです。
遅かれ早かれ 結局は抜くのですから、後で抜く手間を考えたら、収穫しながら抜いてしまった方が効率的なのです。

そんなわけで佐瀬さんのうちでは「手抜き」・・・いやいや、さぼる方の手抜きではありませんよ、「手で引っこ抜く」手抜きなのです。
☆★☆究極のサセ・トルコがあったら教えてください
佐瀬さん「受精しないトルコ」
ん?(゚ー゚*?)
「これを見てごらん。
通常は開花するとこうしてめしべも開いていつでも受粉できる状態になるでしょ。

でもこれはめしべが開いていない。

つまりこれは受精しないトルコなんだ」
受精しないトルコ・・・“子孫を残せない”ってことですよね?そのようなトルコに何かメリットはあるのですか?
「花保ちが良い」
そうなのです。受精しないトルコは花保ちが良くなります。なぜなら「植物は総じて受精すると命尽きるから」です。
植物は何でもそうですが、子孫を残すことを人生最大の使命としているので、受精が終わると“任務全う!”と死に向かっていくのです。
従って、受精しないトルコというのは、任務全うの瞬間がないので死に向かっていくのが遅い。
そりゃ枯れますよ、いつかは。でも、受精するトルコよりは寿命を延ばすことができるのです。

「いつまでたっても開かないめしべのことを
変形雌ずい(しずい)っていうんだ。
自然界ではあり得ないことだよね。受粉できないということは子孫を残せないということだから、普通は絶滅する。
でもそのタイプの変異が出たときに、それを拾って選抜を重ねて固定したんだ」
子孫を残せないのにどうやって殖やすのですか?
「こうやってめしべをピンセットで開いて人工授粉をするんだ。

風媒花でも虫媒花でもなく、人媒花ね!それでもタネの採取量は極めて少ない。
雌しべの開かないトルコを見たときには、そのWONDERも感じてほしいな」
佐瀬さんはこの「受精しないトルコ」について国内と米国にて特許を取得しました(平成20年)。植物の形質で特許を取得したのはなんと国内初だそうです。

☆佐瀬さんにとってトルコギキョウとは?
佐瀬さん 「・・・」
と考えている間にすかさず奥様が、
「あなたの人生そのままじゃない。これらのトルコは主人そのものです」
と温かい口調で話されました。
数十年にわたり、毎日最も近いところでご主人とトルコギキョウを見つめていらっしゃる奥様だからこそ見えるものがあるのでしょう。その言葉には文字にする以上に深みがあります。

佐瀬さん「そうだね、良い遊び道具に巡り合えたと思うよ。いわゆるシゴトのような大変さは感じない」
奥様「あなたにはぴったりだったわね。いまや家族の一員という感じ」

そういうお二人の掛け合いに、永い間理解し合い、助け合いながらトルコに携わり、二人三脚というよりもトルコを含めた3人で育んできた愛情を感じました。
もしかしたら、佐瀬農園の運営は佐瀬・昇さん、とし子さん、トル子さんで成り立っているのかもしれません。
☆次の10年で目指すものはありますか?
「やっぱり珍しいものを作りたい。
トルコはいっぱい名前があるけど、ふたを開けたらみんな同じ品種だったりするでしょ。でも、ふたを開けた瞬間に“あ、これは佐瀬農園のトルコだ”と分かるものを目指したい、そして消費者に喜んでもらえるもの。
諦めたらTHE ENDだよね。諦めずにコツコツと続けていくこと。
消費者のところまで旅をするのだから、花保ちが良いことや輸送に耐えるものであることは当たり前。切り花として最低限の条件を満たした上で、とても変わったものを市場にデビューさせたい」
う~ん、今のトルコから更に進化して、変わったものってどんなものでしょうか・・・この先のトルコの進化形ってどこにあるのでしょうか?
もしかして、隠し玉があったりしますか?
「実はあるんだ(*^^)vニン!」
と写真を見せてくださいました。
なるほどぉ、これですか!素晴らしい!こんな花見たことありません。
一般の方ならこれがトルコだとは思わないでしょう。
どんな花かって?
現時点では門外不出なので、代わりにあたくしの気まぐれドローイングを披露いたしましょう。こちらでみなさまの豊かな想像を巡らせてくださいませ。

う、うまい!うますぎる!実によく描けている!∑(゜◇゜;)
あー、バラシテしまった。まずい、佐瀬さん、絵がうますぎてごめんなさいm(_ _)m ホント??
ひとまずこちらは来年デビューの予定です。くれぐれもお見逃しなく!
☆佐瀬農園の格言
・ 日本人はほぼ3年で飽きる。5年経ったら絶対飽きる!
生産はタネを採るところから始めて、面白いものが生まれたら、消費者に提案すべし!
・ サセ・トルコは選抜に選抜を重ねたスーパープレイヤーたち。全て佐瀬農園のオリジナルスターなのです。
・ 育種も生産も“じっと我慢の子であった”!
・ 育種は楽しくてたまらない!でも生産とのバランスを取って、きっちりがっちり経営すべし。
私はとにかくカーチャンに感謝です!
☆消費者のみなさまへひとこと
もっともっと花を楽しんでほしいな。
また、できるだけ楽しんでもらえるものを作りたいと思う。飾って喜んでもらえるのが一番嬉しいね。

ご参考までに佐瀬さんの出荷期(2011年4月-2012年3月)
※出荷量の波は年によって異なります。
☆本日の最重要キーワード
「サセ・トルコ」
佐瀬昇さんが育種したトルコギキョウのこと。選抜に選抜を重ねた無二のオリジナル品種。トルコの領域を打破した画期的な品種ばかりで、デザイナーさんに愛されるのが特徴。
是非この機会に覚えてくださいませ~♪
室戸岬をV字に北上しようとしたときに目の前に現れたのは・・・

くッ、空海さまっ!∑(゜◇゜;)

南の海を見つめる空海さま。彼には何が見えているのか。
そうか、ここは四国88箇所巡礼のルートだった。

この日も多くのお遍路さんを目撃!空海さまは年間数十万人と言われるお遍路さんたちを見守ってくださっているんですね。

このV字をかたどる国道55号上にもレポートしたいポイントはたくさん!しかし、今回はタイトスケジュールなのでいちいち車を降りていると、飛行機に間に合わなくなってしまう危険あり。あしからず今回は早回し!
![]()
ここ海陽市でエピデン生産で全国に名をとどろかせるのが尾崎洋蘭園の尾崎進一郎さん、75歳!

お若い!!しかも男前!
「昔は俳優の石浜朗(あきら)に似ているってよく言われたものだよ。
ほら、石浜朗ってテレビに出とったやろ。知っとるやろ?」
ウウゥッ(・o+)!わからぬぁい。。。
徳島到着早々に今回の“四国探検”一番の窮地を迎えました。
ウン探がわかるのは世代的に小林旭(あきら)までなので(すみません)、不本意にも反応が遅れましたが、スマホで調べて・・・
写真を見てみると、なるほど似ています!ガッテン!
さて、その尾崎さんは、ぬぁんとフラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2011にて、エピデンのチドリで特別賞を受賞された敏腕生産者さんです。
生産にはどのような秘密が隠されているのでしょうか。いざ潜入です。
これまたなんときれいに黄色く染まったチドリ畑!!


「10,000から13,000鉢くらいあるかな」
花のサイズも大きいですね!

cmにして・・・どれどれ

全長11センチ!
花だけでなく、その葉もなんときれいなこと!!WOW!!

生花でありながら、全て計算されて作られた幾何学模様を見ているかのようです。葉に“締まり”があり、肉厚でしっかりしている点もトップフローリストに愛用されるポイントですね。
過日の世界ラン展(於:東京ドーム)に出展されていたエピデンも、葉をよく見るとこの通り。

ちょっとだらけ気味??「(゚ペ)ありゃ?
鉢物といえども、今年のラン展はいつにない長期戦で疲れたか?
「そう、チドリそういう品種なんだよ。互生(ごせい)の葉がしっかりとしていてキレイでしょ」
葉の開き方には主に、
① 互生(ごせい)

互生はこのエピデンのように先に向かって右と左の葉が交互に付いているもの。(写真はツバキ)
② 対生(たいせい)

対生は、左右対称に葉が開くもの。(写真はナギ)
③ 輪生(りんせい)
輪生は茎の節1か所から3枚以上の葉が付いているもの。
があります。エピデンは右と左の葉が交互に出てくる①互生のタイプなのです。
植物を観察するとき、つい花にばかりに目がいきがちですが、「葉がどのようについているのか」を観察すると、面白い発見があるかもしれません。

エピデンは花もさることながら、その葉も観賞価値が高いのですね。特にこのチドリは優秀君。
いかにチドリが優れた品種で尾崎さんの手塩にかけられカッコ良く育っているかよくわかります。
犬が飼い主に似ると言われるように、花も作り手さんに似てくるのかな~?
1鉢から何本くらい花芽が上がってくるものなのですか?
「まあ4本から6本くらいだけど、立ち本数が多くなると1本が細くなるんだ。
1鉢の中で栄養を取り合うからね。たくさん花芽が立つのはいいけど、結局は栄養不足でひょろひょろしちゃうから、立ち数が多ければいいというものじゃない。

それにたくさん本数が採れれば、その分次の年には株が休むからね。結局芽が出るのが遅くなるでしょ。そういうときは温度も上げなくちゃいけないし、肥料管理も変わってくる。だから全体のバランスを考えて、今年切る本数を決めるんだ」
例えばこの鉢を見てみると、断面の白い茎が今年切ったもの、茶色くなっているのが昨年切ったものです。

そして同じ鉢の中に、早くも新芽がお目見えしているものもあります。

それにしてもこれで1株ですから、立派な株です。

通常の温度管理はどのくらいですか。
「16-17度くらいが適温なのかな。そのくらいが最も花保ちが良くなるんだ。最低は8度」

前編の中澤さんはシンビジウムを山上げして、春先から出荷するエピデンは山上げしないとおっしゃっていましたが、尾崎さんは山上げをされるのですか?
「するよ」
中澤さんの場合は、生産品目の中でもシンビ8割、エピデン2割でした。シンビをメインで生産し、シンビの出荷が終わる春先からエピデンを出荷するという全体構成の中で、開花コントロールのためにあえてエピデンを山上げしていませんでした。
しかし、エピデンが主力品目の尾崎さんは、1年の中でもできるだけ長い期間エピデンを出荷する必要があります。
そのためには山上げをするものとしないものに分けているのが石浜朗さん、いえいえ、尾崎進一郎さんの計画です。
山上げをすれば早いものは11月から出荷できます。もし山上げを行わなければ、このように年内に咲かせることは難しくなってくるでしょう。
「エピデンにとっては地上では暑すぎるんだ」
暑い中にいるとエピデンはどうなるのですか?(゚ー゚*?)?
「そりゃもう死にかけやな。生きとるだけ。
シンビもそうやけどエピデンも葉だけダラダラと栄養生長するんだ。そりゃだらしなくね。花芽は付けん」
ご説明いたしましょう。
植物の生長には栄養生長と生殖生長があります。
栄養生長(vegetative growth)とは葉や茎などの栄養をつくる器官が生長することです。
一方、生殖生長(reproductive growth)とは花を咲かせ、結実し、種子を残すための生長のことを指します。
尾崎さんのおっしゃる「葉だけダラダラとだらしなく伸びて、花芽を付けない」というのは、暑いと栄養生長だけが促進されて、花を咲かせるための生殖生長をしないというわけです、ハイ。

「でも山上げすれば生殖生長して開花するから出荷に繋げられる。うちのものでも山上げするものとしないものとに分ければ、11月から7月くらいまで出荷することができるんだ」
山上げはお一人では大変な作業なのでは?
「その時は臨時で雇うけどね。
でも“山上げ”はまだいいよ。“山下げ”の方が大変なんだ」
富士山に登頂に挑んだときも、下山の方が思った以上に大変だったのですが、つまりそういうことですか?膝がガクガク・・・(;´Д`A ```
「下げるときは花が付いているから大変なんだよ。葉も傷つくしね」
なるほど、それは100倍気も遣いますし、作業も丁寧に行わなければなりませんね。
山上げと山下げのときは、何千鉢というエピデンを一つ一つこのトレーに載せて、さらにトラックに載せて1トレーずつ載せたり降ろしたりするわけですから、それはそれは気の遠くなるような作業です。

例えば、施設にある中の半分を山上げするとして、6,000鉢。
このトレーは5鉢入りだから、6,000鉢÷5入り=1,200トレー
この1,200トレー分をトラックに載せて、山に上がって、降ろしての繰り返し!
きょえーーーッ!!(+_+) フニクリフニクラ、アタマクラクラ、貧血オコシソo(@.@)o
それにしてもこのチドリは背が高いですね。
「このチドリっていう品種はとても丈が伸びるんだ。大きくなりたい品種なんだよ」
向上心があるんですね!
「そう、向上心があるの。片親の原種がそうだったから。
でも例えばこういうのは切り花としてあまり良くない。伸び過ぎ」
どれどれ・・・ウン探の短すぎる指を使って図ってみると・・・

なるほど、2.5節分くらいですね。
しかし、節間の詰まった良いものは、指を開ききらなくても3節分リーチできます。


良く見ると葉と葉の間隔も違いますし、比べてみると左の方が良く締まっていてカッコいいですね。

皆さんがエピデンを選ぶときは、この節間の詰まり方が一つの基準になりますので、よく観察してみてくださいね!
この大輪で発色が良く、切り花に十分な丈も採れて、花保ちも良く、丈夫な優秀君チドリは、尾崎さんのオリジナル品種です。

病気とかにも強いのですか?
「そうね、割と強いね」
万が一病気が出たらどうするのですか?
「早く見つけてほうる!これしかない!」
尾崎さんの生産は明快ですね。
エピデンのどのようなところが好きですか?
「まっすぐに立つところね。支柱がなくてもまっすぐに立つ。

それからもう一つは、新芽が出たら100%花が咲くところかな。
“花芽が出たら”じゃなくて、“新芽が出たら”だよ。芽=花なんだ。分かりやすいでしょ」

確かに、そのような植物はちょっとほかに浮かびません。
「エピデンは正直なんだよ。手を抜いたら抜いただけの結果だよ」
ではエピデンは尾崎さんにとって何ですか?
「ナニって言われても、なんでもええよぉ。
そんなこと考えながら作ってないしな。自由に書いといてぇ~
」
えーーーー∑(゜◇゜;) !!ナンテ率直!
そんなお答え、初めてです・・・・ドキッ
本当になんでも自由に書いちゃっていいんですかぁ?
“一生離れられねぇ恋人だぁは~ん❤”とか勝手に書いちゃいますよφ( ̄ー ̄*)ムフフ!!
「まあ、一生懸命愛情を注ぐ対象かな。私も凝るほうやから。
人生の中で凝ったものの一つやな。
以前は犬に凝ったことがあってセントバーナードを連れて大井競馬場の品評会に行ったこともあるよ」
大井競馬場って大田市場からすぐそこじゃないですか!
そんなに遠路はるばる大きなセントバーナードを連れて・・・すごくハマっていらしたのですね。
尾崎さなんが凝った犬やエピデンに共通することってなんですか?
「素直で正直や」
そうですね、チドリなんて加えて向上心もありますしね( ^―゜)b
「植物は正直で手をかけただけ応えてくれる。手を抜いたら抜いただけの結果や」
エピデンは「鏡」のような存在でもあるのかもしれません。
尾崎さんがいかに手をかけたかを正直に映し出してくれるわけですから。
取材中、太陽が高くなり尾崎さんが遮光をしようと施設の巻き上げ機をグルグルと回していきます。

「うぅッ。あれ?なんかおかしい。引っかかっているかな・・・」
うまく遮光シートが広がらないご様子。
困りました。どうやってお手伝いしましょう!?
マズイッ!!花の命がかかっている!このままでは強すぎる日差しで花が焼けてしまう!
消防車を呼んだらまずいだろうし、救急車か??レスキュー隊の誰か若い人が手伝ってくるかも!?
こういうときはどうすればいいんだっけ。
・・・と一人悩むウン探。

そんなウン探の心配をよそに、気付いたら尾崎さんはひょいッと屋根に上って、引っかかっているポイントを見に行ッてしまいました。アレッ!?サスガ!!

この身軽さ!とても75歳とは思えない!∑(゜◇゜;)

梯子、途中で終わっているのに、ひょいっと上ってしまいました。→
「上から見ると一面のエピデン畑がキレイだよ~!」
なぬッ??
アンテナピーンッ!![]()
ウズウズ・・・ウズウズ・・・
なんだか上りたくなってしまった。
“探検隊”の名において、生産地の美しい花の光景を読者の皆様にお伝えする責務があります!
「あのぉ~尾崎さん、アタクシも上らせていただいてもよろしいでしょうか・・・」
ドキドキ、ドキドキ((o(б_б;)o))ドキドキ
「いいよ」
あ、意外とアッサリC=(^◇^ ;
「ありがとうございます!」
喜々として梯子を登り始め、施設の上に立つウン探。
コント55号を辛うじて知る世代とはいえ、このくらいまでならなんとかOK。
上から見ると、写真では少しく施設内が曇って見えますが、施設の三連棟一面にチドリが広がり本当にキレイです。


写真ではお伝えしきれないのがなんとも心苦しい限りです。
ふと顔を上げれば、心配そうにこちらを見る尾崎さん。

ダイジョブ、ダイジョブ!パチッ☆-(^ー'*)bオッケー
転ばないように気を付けて歩きますからぁ~!
って、違うか。尾崎さんが心配しているのはアタシじゃなく施設の方か。
アタシの体重で施設が壊れるじゃないかって?。。。ナルホド!←やっと正しく理解できました。
どうもすみません。速やかに降りましたm(_ _)m
そもそもは尾崎さんもシンビジウムの鉢物を生産していたました。

それが10年くらい前から鉢を減らして、徐々に切り花に転換していったといいます。
現在尾崎さんが切り花として作っていらっしゃるのは、チドリとオオデマリの2品種。
「オオデマリは晩生(おくて)、チドリは早生(わせ)品種なんだよ」
↓オオデマリ。輪はこれからまだまだ大きくなります!

ご説明いたしましょう。
“早生・中生(なかて)・晩生”という言葉を聞いたことがあると思います。
生育期間が短く、定植から早く収穫期を迎えられるものが「早生」
遅いものが「晩生」
その間が「中生」となります。
中でもとりわけ早いものを極早生、遅いものを極晩生といいます。
これは品種特性といっていいでしょう。
これらの成熟の早晩性は主に遺伝によって決められています。
これらの特徴を品種別に把握した上で一部山上げしたり、地上に残しておいたりと調整しながら、本来1年に1度しか開花しない花を1年の中で少しでも長い間、途切れずに市場出荷できるようコントロールしているのです。
これは知恵と腕ですな!
チドリは尾崎さんのオリジナル品種で、名前を付けようと思ったときにアルバイトの女性が“チドリがいい!”とおっしゃったので、そのままチドリになったということでした。
「チドリは白い鳥なのに、なんで黄色いエピデンにチドリなのかわからない」
と尾崎さんはおっしゃっていますが、それでも“チドリ”という名を受け入れるところが心の広さを物語っていますね。
尾崎さんを支えるアルバイトの皆さんと(取材当日は1人お休み)


バイトさん「写真、いやー」
尾崎さん「ええやん、すぐ終わるで」
という和気あいあいとした会話が聞こえてきそうですね!
★尾崎洋蘭園の格言
・ 植物は正直者。難しいこと考えずに、無心でエピデンに愛情を注ぐべし!
彼らは必ず応えてくれる![]()
・ エピデンの品種ごとに早生、晩生、中生の性質を把握し、
山上げシステムと組み合わせ、できるだけ長い間市場出荷するべし!
<尾崎さんのエピデン流通期>
※①出荷期はその年の気象条件にも大きく影響されますので、変更になることがあります。
②通常11月は下旬より出荷スタート。
6月、7月くらいまで切れないことはないのですが、クオリティ優先のため、OTAへの出荷は5月終了を目途としています。
それでも尾崎洋蘭園さんのエピデンはこんなに長い間出荷されていますので、是非ご利用くださいませ!
・チドリの丸い黄色は海陽町の太陽なのだー!
エピデンのチドリを見かけたら、尾崎さんの愛情と海陽町の海&太陽をイメージすべし!
(写真はイメージ)
「海の男」的な潔さと懐の深さを感じるさせる尾崎洋一郎さんでした。

↑こういうの、“春蘭満”ていうのかな。。。
ウン探では前回コチョウランを取材したところではありますが、このラン展ブームに乗り、引き続きランの産地を探検したいと思います!
やってきたのは南国市!

いかにも暖かそうな響きのところですが、日照がある分、放射冷却により南国市でも朝の気温は結構低い・・・取材当日空港でマイナス2度∑(゜◇゜;)
ヒエ~ッ
“南国”市なのにっっ??
南国市って一体ドコッ?
南国市とは高知県で、高知市の東隣にあります。
ラン展は東京ドームですが、ここ南国市でドーム型のエピデンドラムとシンビジウム(こちらはドーム型ではありませんが)ご出荷下さっているのは
中澤蘭園の中澤速夫さん。

(奥はご子息の佑介さん)
早速、圃場拝見です!いざ、お邪魔しま~す!

よくみるとフラワーネットを使っているんですね。

「エピデンも鉢物の場合はワイヤーでタガをはめるでしょ。2段くらい。
切り花の場合はこのフラワーネットがタガ代わりになるんだ」

なるほど、これがあれば花が倒れずまっすぐに立つのですね!
「そうそう、フラワーネットを使わずに水をたくさんやったら全部ベターーーーッと倒れてしまったことがあったけどね!」
フラワーネットが果たす役割は大きいのですね。
「エピデンは水が足りなくなると早く咲いた花からダメになるから、球状に仕上がらないんだよ」
そうなのです、みなさま!中澤さんのエピデンは大きな球状で出荷されることで、市場から高い評価を得ているのです。
普通のエピデンはこんな感じ↓

合わせてあるゴッドセアナムの大きさと比べていただければ、およそどれほどの大きさかはイメージがつくかと思います。
花は上向きで、球状にはなっていません。
それに対し、切りのエピデンのカテゴリーを超えて、新しく中澤さんから提案されたのはまるで球を描くようなエピデン!

「潅水が多すぎるとシミになっちゃうでしょ。この水やり加減が重要なんだ」
なるほど、大きなドーム型のエピデンを作るには水やりのさじ加減が一つポイントのようです。
「最初の1輪が咲いてから球状になるまではとても時間がかかるんだ。何週間も何か月も・・・!
その間には病気が出るかもしれないし、花保ちが悪くて先に咲いた花は枯れてしまうかもしれない。さまざまなリスクを抱えながら球状になるまで管理する。
だから、生産者として“悪くなる前に早く出荷したい”と思うのは必然の心理なんだよ。その方がロス率も下がるわけだし。
そのリスクを考えながら回転率良く小輪や中輪で大量出荷するか、球状になるまで管理して大輪を出荷するかはそれぞれの生産者の考えや経営方針によるんだ」
なるほど、技術もさることながら、大輪の球状に作るかどうかは産地さんとしてのポリシーがあるのですね。

エピデンは葉も幾何学模様のようでこれまた美しいという特徴がありますが、切るときに注意することはなにかありますか?
「出荷のために切るときは、少なくとも下葉2-3枚を残すんだ」

どうしてですか??丸坊主にしちゃうとどうなるのですか?←愚問?
「植物は花を切っても葉で仕事しているからね。光合成するために葉を残しておかなくちゃいけないんだ。
そして栄養がバルブ(※)に蓄えられていく。
そうすると次に出てくる芽はとても元気で良質なんだ。

球状にしたときに輪の大小は品種特性とバルブの力によるところが大きいからね」
※バルブとはエピデンの株を作る根元の部分です。
なるほど、丸坊主にしちゃうと光合成できなくなって、植物体の力がなくなるわけですね。
エピデンの足元をよく見ると、なにやら土でもロックウールでもなく木のチップのようなものを使っています。

これをバーク(樹皮)と言い、松や杉、ヒノキなどが原料となっています。中澤さんがバークを使ってエピデンを栽培する理由は何でしょうか。
「作りやすいから。
なによりエピデンは着生ランだからね!」
出ました。ウン探、出る単、“着生ラン”!!!ニューワードです。ジャン!
ご説明いたしましょう![]()
ランには地生ランと着生ランとがあります。
地生ランとは、その字の如く他の植物と同様に地面に生えるランを指します。野生の場合は多くは直射日光を避けた薄暗い樹木の足元などで生活しています。
シンビジウム(半地生のものもある)、パフィオ、ディサ、エビネ、シュンラン、シランなどがこれに当たります。

これに対し、着生ランとは主に木の幹や枝、あるいは岩などに根を巡らせて体を固定して生活するランのことです。
←これは鎌倉のお寺さんで撮影。なんとまあタイミング良く満開。
←これは和歌山の神社で撮影
植物はすべからく土に生えると思いがちですが、木や岩に“着生”して生活するものもあるのです。普段の散歩道でも“ちょっと観察”してみると面白いでしょう。チャンスは神社仏閣やナンチャラ自然公園などにあり。これらの場所で大木を見つけたときはその枝をよく見てみると、ランが着生している可能性大です!
着生ランにはコチョウランやカトレア、バンダ、デンドロビウム、オンシジウム、デンファレなどがあります。
そしてエピデンはどちらかというと・・・・
drrrrrrrrrrrr←ドラムロール
着生ランになります。
それが証拠になんと・・・↓↓↓この通り!
エピデンのエピ(Epi)はギリシャ語で「上に」
デンドラム(dendrum)は「木」の意味
に由来しているのです!!
つまり、「エピ+デンドラム」で「木の上に」の意味なのです!!ソノママ!!
自ら“アタクシは着生ランです”で言っているようなもの!
まさに日本人男性にとっての「日本太郎」のような名前なのです。
これぞトリビア!トレビア~ンでございます。♬♩♫♪☻(´∀`*) (独り感動!)
ここで伊藤蘭ちゃんはどちらに属するのかと思われた50代のお父様たち!ランちゃんはキャンディーズですよ~!“永遠に不滅です!”、ハイ。
ところでバークと一緒に入っているこの白っぽい粒々は??

「肥料だよ」

“肥料”って何を指すのですか?
「窒素・リン酸・カリ(カリウム)」
はい、ここポイントです!![]()
これはあらゆる植物にとって最も重要な三大栄養素。
農業を学び始めた人が最初に習うABCです。
★ 窒素は植物を大きく生長させる役割
★ リン酸は開花結実させる役割
★ カリウムは根(ランの場合はバルブ)を発育させる役割
をそれぞれ担います。
これらを植物が必要としている適量をバランスよく与えることが生産者さんの腕の見せ所です。

「このツブツブ肥料にはその栄養素がバランスよく含まれているんだ。
ポリオレフィン系(ざっくり言うとポリマーのこと)の樹脂で回りが加工されていて、気温が25度になると自然に栄養が溶出する仕組みになっているんだ」
スゴイ!小さな粒の中に緻密に計算された世界が凝縮されているんですね!
「そう、25度設定だからそれ以上気温が高くなったら早く溶出するし、それ以下だったら少しペースが遅くなる。
じわじわ出てくるから安心なんだ。シンビは地生ランだけど、エピデンは着生ランだから、肥料もシンビより少なくて済むからね、こういう肥料もじっくり溶出するものが好ましいんだよ」
中澤さんはこのあたりのこともなんだか熟知しています。
なぜそんなに詳しいか、その秘密はこのコーナーを最後まで読んで下さった方だけに教えちゃいます!
以前、ウン探でシンビジウムの切り花生産者さんを訪問したときに、「山上げ」をしていると伺ったのですが、エピデンも「山上げ」(※)するのですか?
※山上げとは?
御説明いたしましょう![]()
シンビジウムなどで夏の高温期を避けるために、標高の高い高冷地に移動することです。このことにより開花を促進することができるのです。

「エピデンの山上げも一時期はしていたんだけど、今はやっていない。シンビジウムの出荷が終わった春にエピデンを出荷したいから山上げしないんだ。山上げをするとシンビジウムと出荷期が重なってしまうからね。
でもシンビは山上げしているよ。
高知の夏は都会に比べたら過ごしやすいけど、夜温が下がらないんだ」
確かに、夜温が下がりにくいのは近年の傾向でもありますよね。田舎育ちのウン探隊員は、幼い頃は窓を開ければ寝られるくらい十分涼しかったと記憶していますが、現在は同じ場所でももう窓を開けただけでは、もう寝苦しくて、寝苦しくて・・・
夜温が下がらないということは、日中との温度差が少ないということですね。
でも、どうして夜温が下がらないと植物に良くないのでしょうか?
「消耗が大きくなっちゃうんだ」
消耗!!そう、そうですよね~!!
・・・って、はて?つまりどういうことですか??←ナカナカ物分かりが悪クテェ(-.-;)

「ラン類はバルブに栄養が貯まるでしょう。でも暑いと体力を消耗するから栄養が貯まらなくなるんだ。そして株自体の力がなくなる。
でも冷涼な山間地に持って行くと消耗が減るから株に力が出るんだよ」

どのタイミングで山上げするのですか?
“暑い”って感じるのって、個人差があると思うのですが・・・欧米人と日本人とでは確実に体感温度がちゃうしなぁ・・・その上、ランと人なんてもっと違うのでは?ランの気持ちを推察するなんてどうするのでしょうか。
何を基準に??ムムム・・・
「花芽が出たら山上げするんだよ」
そうですか!意外と明快!
「だいたい6月下旬から7月なんだけどね、このときに花芽が出ているかを確認して、出ていたら山上げを始めるんだよ。
山上げをすると、花芽の伸長が良くなるので早く出荷できるんだ。例えば山上げせずに今まで1月に出荷していたものが、山上げをすれば12月に出荷できる」
なるほど、12月の切り花マーケットの大きな需要期に出荷できたら、これはいいですね。

「そうでしょ。従来12月後半の年末ぎりぎりに開花していた花も、山上げをするようになってから11月から出荷できるようになったんだ」
それは実需者にとってもいいことですね。
それにしてもその山上げ作業を中澤さんとご子息の佑介さんとで行うのですか?
「そうだよ。でも2人では手が足りないから、臨時で人を雇うんだ。4トンロングの大きなトラックを借りて一つ一つ手作業で圃場から出して、トラックに積んで、1-2時間かけて山まで行って荷を下ろすんだよ」

本当に、これらの大変な作業を「山上げ」という小学1年生で習う初級漢字を含む3文字で片付けてしまうには、あまりにも簡単すぎるではないか!!
それをどのくらい往復するのですか?
「山上げに12往復くらい、山下げにまた12往復くらいかな。
12車(しゃ)って言うんだけどね」
トゥ・・・トゥウェルヴ!!∑(゜◇゜;) ←って全然英語で言う必要ないのですが・・・この驚きをどう表現しようかなと思いまして。
手間も大変ですが、人を雇ったりトラックを借りたりではなかなかコストもかかりそうですね。
「そうなんだよ。そのほかに山の地権者に場所と施設代を払うでしょ。それも全て生産コストのうちだから、山上げするってことはとても労力とお金と時間のかかることなんだ。
それでも安定して出荷できるというメリットを得られるからね。
“消費者”、“市場”、“生産者としての信頼”と全ての人にとっていいことだと思うから、私たちのポリシーでやっているんだよ。5年前くらいから始めたんだ。
シンビは鉢の生産の方が先だったでしょ。
山上げの技術は鉢の生産者さんが長年積み上げた技術なんだ。それを現在では切り花に応用している。

だから切りシンビの生産は歴史が浅いといえども、園芸業界では確立された技術なんだ。
つまり開花コントロールを可能にしたということだから、歴史的に見たらとても画期的なことなんだよ。花の気分に任せていつ咲くか分からない開花を確実に調整できるようにしたわけだから」
なるほど、山上げによって安定して出荷できる“確実性”を確保できるわけですね。
高知県、とりわけこの太平洋に面した南国市はその名の通り日照量も多く、冬も温暖。山も近いので山上げも比較的効率的に行えるという優位性があるのです!
実は中澤さんは今でも切り花生産の8割はシンビジウムです。

鉢物の品種の中から切り花に向く品種を選ぶということですが、どのような基準で“切り花に向いている”とご判断されるのですか?
「ひとつはもちろん水揚げと花保ちね。これが良くないといけない。これはエピデンも同じ。
それから傷が付きやすいものはNG。気付かないうちに傷が付いて、輸送中に表面化して、お客様の元に届いたときには大変なことになる。花弁が肉厚で傷が付きにくいものがいいね。

それから、“根が強い”もの。これは品種にもよるんだけどね」
根が強いかどうかはどこで見るのですか?
「株分けができるかどうかってことなんだけどね。株分けができないってことは、根が弱いということ。丈も伸びないから切り花には向かないんだ。
あとは花粉が落ちないものね。
落ちるとリップの色が赤くなっちゃうんだよね」
コチラが実際に花粉が落ちて赤くなったもの。こちらは本来はリップの赤い品種ではないので、こうなると花の価値が落ちてしまいます。

“リップ”といっも「なんのこっちゃ「(゚ペ)??」という方もいらっしゃると思いますので、ついでにシンビジウムの花を構成している部分の名前をおさらいしちゃいましょう!
シンビの花の構成要素は以下のようになっています。

① ドーサルセパル(dorsal sepal)
dorsal=“背面の”という意味 sepal=“ガク片”のことです。
アッパーセパル(upper sepal)と言うこともあります。
② ラテラルセパル(lateral sepal)
latelar=“側面の”という意味
ローワーセパル(lower sepal)と言うこともあります。
③ ペタル petal=“花弁”、つまり花びらのこと♪
④ リップ lip=“唇”に由来します
あ、なるほど、つまり①と②はガクなんですね。③が花びらなんだ。
見た目には全然区別つきませんが、触ると実は違いが分かります!
③だけ少し柔らかい。今度シンビを見る機会があったら、是非皆様の審美(シンビ)眼で見てみてください!
そういえば、シンビってバラなどにあるようなガクらしいガクがない・・・アレ??
←ホラ、ない・・・(-.-)
例えばバラでいうところのこのガクに当たる部分が見当たらない・・・ドコドコ(@◇@;)?

と思っていたら、①と②がガクだったんだ~(T_T)(感激!!)
数十年の謎が解けたぁー・・・?
そうなのです。実は、この「後ろに3枚のガクがあり、前に2枚の花弁がある」というのがランの花の定義なのです。
ランの中でもマスデバリアのようにそれが変化を遂げて別の形をしているものもありますが、本来はこの「ガク片3枚+花弁2枚」がランがランたる故なのです!
「花粉が落ちることを“花が泣く”っていうんだよ」
もうここまで来ると、なんだか“シンビツウ”になった気分です。
なかなかシンビの切り花用を見つけるのはハードルが高いんですね。
「でも、美しさに魅せられてついつい苗を買っちゃうんだけど^_^;」
ここがまた中澤さんらしいところですね。本当のお好きなのです。
「神秘的だからね」
シンビがシンピ的だなんて、中澤さんもなかなかダジャレ好きですかぁ?
んもう、隅に置けませんね!ゞ( ̄∇ ̄;)
そのような中澤さんのシンビ中心の生産に、どのような経緯でエピデンが導入されたのでしょうか。
「シンビとは違う、何か変わったものを作りたいと思いがあったんだ」
例えばどのようなものをイメージされていたのですか?
「1月、2月はシンビの卸値が比較的下がる時期なんだ。だからこの時期に出荷できるもの、そしてシンビの出荷が終わる春先から出荷できる何か“春のイメージ”を作れるものを考えて、エピデンを導入したんだよ」
“春のイメージ”・・・ですか。

「そう、今までのエピデンは濃い色とか暗い色が多かったでしょ。そのエピデンにパステル調の“春のイメージ”を託したいと思ったんだ」

なるほど、さすが中澤さん、コンセプトが明確です。
圃場もその“春のイメージ”が十分に表現されています。
淡い色のエピデンは県内外のご友人からの情報により、育種と生産を始めたといいます。
「転機は農水省にあったんだよ。
6、7年くらい前だったかな、農水省の本庁で花を展示する機会があって、そこで球体に極めて近い状態に仕上げたエピデンを展示したんだ」
春のイメージを託した球形のエピデンだったわけですね!

「ソフトボールくらい大きくて真丸のものを展示したんだよ。これが思った以上に反響が良くてね、市場関係者からの関心を集めたんだよ。これが自分たちの自信にもなって“もっとやってみよう!”と思うようになったんだ」

折しも花きマーケットでは切り花品種の大輪旋風が吹き荒れていました。中澤さんの立体的で存在感のある大輪球状エピデンは市場関係者にとって大変新鮮に映り、大きな可能性を感じさせるものだったことと想像します。
大輪ブームの中にあって、面で見せる花ではなく、ドーム型の立体を表現できる数少ない大輪品目、しかも高級イメージを携えたランであることを考えると、農水での展示ではまさに“新進気鋭の逸材”として威光を放っていたに違いありません。
それにしても、限りなく球体に近い形に仕上げるというのは、なんという技術でしょう。
「球体に作るというのは、先に咲いた花を長く残して新しく咲く花と合わせて球状にするわけだから、花保ちが良い品種じゃないとできないし、その分生産のリスクも高くなるんだよ」

球状に作るためには、先に咲いた花を奇麗な状態で咲かせ続けながら、新しく咲く花を待たなければならないのです。
ちなみに花が終わるとこういう感じ。

花を長く圃場で咲かせて球状に仕上げるまでには、どのようなリスクがあるのですか?
「ボト(※)によるシミが発生したりするんだ。特に3,4月ね。この時期は“菜種梅雨”があるから湿度が上がるから、ボトになりやすいんだ」
※ボトとは?
ご説明いたしましょう!「ボト」とは「ボトリチス菌」の略で、加湿の状態で発生しやすくなる悪役の菌のことです。この菌が付いてしまうと灰色かび病となり、花弁に黒っぽい斑点が現れたり、茎葉が解けるように腐ったりしてしまいます。時間の経過とともに拡散してしまう場合が多いので、ボトを見つけた場合は速やかに処分する必要があります。エピデンもそうですが、バラやトルコギキョウなどにも発生しやすく、十分注意しなければいけません。ボトを出してしまうと生産者さんの信頼にも関わりますから、生産者さんにとっては天敵とも言えるかもしれません。
菜種梅雨とは3-4月に連続して降る雨のことで、菜の花が咲くころの雨だから菜種梅雨といいます。主に関東以西の太平洋側で見られる現象です。
なるほど、春の象徴でもある菜種のイメージにしたいのに、“菜種梅雨”に悩まされるわけですね。何と皮肉な・・・。
「そもそもこの時期には、エピデンの鉢物出荷で終盤を迎えた生産者さんたちが、切り花にして出荷していたんだ。
だから、以前は今ほどエピデンの評価も高くなかったんだよ。でも私たちはそのエピデンのイメージを払拭したかった。
結構な挑戦だったんだよ。しかもエピデンで切り花専門の生産者が周りにいなかったから更にハードルが高いよね」

「でもこれを乗り越えて、“新しい高級感”を提案していきたいと思ったんだ」
というのはご子息の佑介さん。頼もしいですね。
「そう、エピデン自体の認知度もあまり高くなかったし、従来のエピデンとは違う価値観を提案していきたいと思ったんだよ。
だからこそ“魅力溢れる色が必要!”と考え様々な品種を選抜したんだ」
とお父様。
「たとえばこのエピデンの色を見てみて。
元々はこの真中の色だったんだけど、枝変わりで上の色とか下の色とか出て来てね、“春っぽい”でしょ。だからこの色を固定して出荷しているんだよ」
なるほど、枝変わりが出たら、中澤さんのセンスとインスピレーションでエピデンの本当の価値を見つけて増やしていくわけですね。
「こんなのもあるんだ」
な、なんと絞り?

そのお隣はボカシ??

“春っぽい”上に、なんとも和にも洋にも合わせやすい色の入り方ですね。
このような花まで作り出して消費者やフローリストの皆さまの心をくすぐっていらっしゃるのはさすが!!
「昔はコチョウランやオンシジウムの切り花などを作っていたこともあったんだよ!」
なんと!∑(゜◇゜;)
実はランのマルチプレーヤー!!
「特にオンシジウムは輸入花のない時代だったからね。でも輸入が増えてきて価格を取りづらい時代になったでしょ。だから辞めたんだ。もちろん今でも輸入勢と住み分けをして国内でコチョウランやオンシを作っている方はいるけどね」
いろいろなランを手掛けてきた中澤さんですが、エピデンをあるときお知り合いの方に鉢のエピデンを見せてもらった時は、一目で“切り花でいけそう”(♛‿♛)ノ*♡*♡゜*:.ღ .:*・゜キラキラ♡゜*:.ღ .:*・゜という直感を覚えたといいます。
そこから次のような段階を追って、生産が増えていったといいます。
→コレもしかしたら面白いかも?
→じゃ、ちょっとやってみよっか!
→なんだかいいみたいだから、もっとやってみよっか!
このエピデンに対する着眼点にしても、その品種の可能性にしても、どうしてこのような“いけるかも?”直感が働くのでしょうか。
「たくさん産地を見てきたから、“いけるかも?”のような感覚が身に付いたんだよ」

産地をたくさん見ていらしたとは・・・つまり?
「実は経済連に勤めていたんだ」
そう、そもそも中澤さんは高知県経済連(現在の全農高知)にお勤めだったとおっしゃいます。
当初は肥料関係の部署にいらして、その後技術部署へ異動。それからは結果の農家さんを巡回するのが重要なお仕事の一つでした。当時、野菜から果樹から花から全て「畑」で収穫するものを作る県下の有名な生産者さんは殆ど訪問したといいます。
「本当の生産を目の当たりにしたよ」
なるほど、これが肥料や生産技術のことを詳しくご存知だったワケだったのですね!
経済連にお勤めの一方で、花好きから趣味としてシンビジウムを作っていました。
河野メリクロンさんのオリエンタルクイーンとオリエンタルキングという最初のメリクロン苗を導入したのが第一歩だったといいます。
※メリクロンとは
御説明いたしましょう![]()
育てたい植物の生長点の組織を取り出し、寒天などの無菌状態で培養、繁殖させることです。特長は個体差がなく統一された苗を作りやすいことにあります。メリステム(meristem=分裂組織)とクローン(clone)を合わせてできた造語です。
そのうちのある品種が思った以上に良い結果が出たため、ご自身の気持ちの位置付けができたといいます。それ以降、どんどんシンビの生産を増やしていき生産者として独立したというわけです。
将来はどのようなエピデンを作っていきたいと思いますか。

「これからももっと面白い色を出して、エピデンの本当の価値を楽しんでもらいたいと思うね。
そのためには多くの品種を安定的に作り続けていく。その中でも更に“キラリ”と光るものを付けくわえていくことも忘れてはいけないなと思うよ。
また、エピデンは大輪でありながら、ダイナミックというより上品で柔らかいムードを携えているよね。その雰囲気を大切にしながら、且つ花保ちの良いものを安定出荷できるようにしていきたいと思うな」

エピデンの花言葉は「可憐な美」。
中澤さんはこれからも、この花言葉通りの雰囲気を大切にしながらも、立体的な気品を備えたものをご出荷してくださることでしょう。
・ エピデンドラムを通して体現するのは“春のイメージ”。
可憐で上品なエピデンを作り、新しいエピデンの価値観を提案すべし!
・ シンビジウムは消費者、市場、生産者、“三方幸せ”のために山上げで開花時期を調整すべし!
でも山上げはコストも手間もかかるだよー。
・ センスとインスピレーションで切り花に向く新しい品種を開発すべし!
・ エピデンは着生ラン。コンポストにはバークを使い、肥料はゆっくりあげましょう!
神社仏閣巡りは着生ラン探しがオモシロイ!( ^ー゜)b 上向いて歩けばイイコトあるかも☆
★消費者とお花屋さんの皆様に一言
ナイショですが、他品目も栽培研究中です!
おっと、これは意味深発言ですね!
ずっと多彩なランを広く手掛けていた中澤蘭園さんから、近い将来どのような品目が出荷されるのか楽しみです!
四国のエピデンドラム~後編~に続く
その名をハートファーム。
むむ・・・・?
その評判は如何に?

ハートファームさんのヘヴィーユーザーである大田花き買参人Aさんに伺ってみると・・・
「花の並びがいいんだよね。全部上を向いている。
形もとても使いやすいんだ」
とおっしゃいます。

またヘヴィーユーザーBさん(同じく大田花き買参人さん)は・・・
「非常に仕立てがしっかりしていて、他の産地さんに比べて固く仕上がっているよ。
支柱にもこだわりがあるようで輸送中にグラグラ揺れることがないから、お客様の元にも信頼の商品を届けることができる。
1輪1輪が大きく並びもきれいだし、背も高い。ボリュームがあるんだよ。
しかもツボミの数にもこだわっているみたいで、どこをとっても安心の商品なんだ。
私たちのお客様にもハートファームさんのリピーターがいらっしゃるくらいなんだよ。
エンドユーザーの声をハートファームさんにフィードバックすると、すぐに反映されたものを出荷してきてくれるんだよ」

はたまたヘヴィーユーザーCさん(大田市場内の仲卸さん)は・・・
「肉厚で大輪!花の並びも良いし保ちも良い!
見た目もボリュームがあって品質が揃っているから売りやすいんだよね~。それから、木札を立てるための輪があってね。これが便利でお客様にも評判がいいんだ!
しかもグッドデザイン賞とったでしょ。すごいよね。うちはハートファームさんをメインで売っているよ。
大ファン❤❤❤」
ぬぁんと並々ならぬ高評価!!
新規参入されたハートファームさんがこんなにも高評価と信頼を得るなんて、どういうことでしょうか。
え?しかもなんて??Cさん、今グッドデザイン賞とおっしゃいましたか??(゚ロ゚;)エェッ!?
そうなんです。なんと2011年にこの花き業界で誰もが狙うグッドデザイン賞を受賞されたのです!

※グッドデザイン賞とは?
1957年に通商産業省によって設立された「グッドデザイン選定制度」を継承し、1998年より公益財団法人日本デザイン振興会が主催する日本で唯一の総合的なデザイン評価制度。
なんと花でグッドデザイン賞??
花の姿をカッコ良く仕立てて受賞されたってことか?
う~ん、わからない(+_+)
新規参入でありながら高評価・・・だいたいコチョウラン生産て難しいんじゃない??高級品だし・・・おまけにグッドデザイン賞ってどういうこと??と頭が混乱しかけているかもしれないみ・な・さ・ま!
お待たせいたしました。ウン探の出撃です!
ε=ε=ε=(^∇^)ノ イザ!
じゃじゃーん。やってきたのは群馬県邑楽(おうら)郡大泉町。
出ました“鶴舞う形の群馬県!”ウン探読者の皆様にはもうおなじみ(?)のこのフレーズ。
←上毛カルタの「つ」

周りを人口40万人級の市に囲まれながらも、いずれの市にも合併せず、人口27,000人ながら孤郡奮闘する邑楽郡。
ここ位置するハートファームこと三洋ハートエコロジーさんはただのコチョウランの生産企業ではありません。
(「ハートファーム」が出荷名で「三洋ハートエコロジー」が企業名です)
三洋ハートエコロジーさんは三洋電機の特例子会社(※)。
※特例子会社
「従業員に占める障がい者比率が20%以上」など一定の条件を満たす子会社のこと。障がい者雇用促進法により特例子会社の従業員を、親会社の障がい者雇用率の計算に含めることができる。
従業員54名以上を雇用する会社は障がいを持っている従業員を全体の1.8%以上雇うことが義務付けられている。
グッドデザイン賞として評価されたのは、コチョウラン生産の腕前や仕立てデザインではなく、そのビジネスのしくみ構築なのです。
うーん、仕組み作りがグッドデザインてなんだかピンときません「(゚ペ)?
ご案内くださったのは、
三洋ハートエコロジー群馬事業所の所長の堀野友作(ほりの・ゆうさく)さん。

御社がグッドデザイン賞を受賞された理由はどのようなことでしょうか。
「簡単に言うとね、
“障がいを持つ社員が主役になれる事業をデザインした”ということなんだ。
その結果、
バラつきの少ない高品質な胡蝶蘭の通年出荷体制を構築したことと、
高品質の商品を通年で出荷できる体制を作ったという成果まで含め評価されて受賞したんだ」
そう、三洋ハートエコロジーさんは主に知的障がいを持つ人を雇い、ビジネスの戦力としている企業なのです。雇用人数およそ50人。
一般的に知的障がいを持つ社員の雇用に困難があると言われる点は以下のような理由によります。
① 成長に一定の時間がかかる
② 技術の習得に時間がかかる、変化の対応に課題がある
それを季節環境の変動で大きく左右されやすい農業の生産分野でどのようにクリアしたのでしょうか。
なにしろ今までウン探が伺った優良産地の皆様は口を揃えて、
「農業は毎年違う。昨年と同じことをしていたのでは絶対にうまくいかない。
一生勉強だよ・・・。植物をよく観察してチョットした変化に気づき、柔軟に対応することが必要」
とおっしゃいます。
そのような特性のある農業において、一般的に変化の対応に課題があるとされる状況でどのようにビジネスをデザインしたのでしょうか。
ではこれらの秘密を探りにいざ圃場へ!
(う~ん、今回のウン探はなんだかいつもと違うぞ!)
こちらがハートファームさんの圃場です。
どこに秘密が隠されているのでしょうか。



「このビジネスが成功した背景には、業務を細分化したことにあるんだ。
例えば、コチョウランの苗から出荷までの工程が3段階あるとするよね。
1. 栽培管理
2. 仕立て
3. 出荷作業
普通の生産者さんは、1を1-2人、2を1人、3を1人、あるいは1から3をぜ~んぶを1人でやるとする。
でも、当社は1の栽培管理の中の業務をさらに細分化して、その一つ一つの業務に一人の担当者を付けるんだ」
ココでコチョウランの苗導入から出荷までの業務フローの紹介です( ^―゜)b
【業務フロー】
1. 栽培管理

2. 仕立て

3. 出荷作業

例えば「水遣り」では「蛇口に目印を付け、1箇所に何秒間水やりを行う」など細かく決めています。
ピンクの一連の流れの中で、色の濃い部分はパートさん、それ以外はすべて障がいを持つ社員の方が受け持っています。
こちらは②仕立て作業のうち、底板入れをしているところです。

このように発泡スチロールを細かく刻み・・・

鉢の底にギュッギュッと敷き詰めます。
敷き詰めた発泡スチロールを鉢に押しつけるように潰しながら鉢底に固定していきます。

そして最後に鉢穴をふさがないようにドリルで穴を開ける。


コチョウランを解体したことのある方はご存知かもしれませんが、コチョウランの鉢底には多くの場合3-4cm角のキューブ状にカットされた発泡スチロールが入っています。
しかーしッ!
ウン探はここでハートファームさんのチョット差が付くココが違う!ところを見つけてしまいました!( ^ー゜)b
よろしいですか、もう一度申し上げます。「通常はコチョウランの鉢底には3-4cmの角状発泡スチロールがゴロゴロと入っています」
・・・ところが、ハートファームさんの鉢底は発砲スチロールの空気を抜くように底面に押し付け固定し、逆さにしても落ちないくらいまでギュウギュウに敷き詰めるのです。もうこうなると発泡スチロール自身は陶器鉢の一部と勘違いするでしょう。
どうしてここまでしっかりと貼り付けるように潰すのでしょうか。
「支柱とか木札とか立てたりするのに、この方がしっかり固定されるでしょ」

なっるほどぉ~。
発泡スチロールの上にコチョウランの株を入れ、その上に支柱など色々挿すので、輸送中にグラグラと倒れることのないよう、しっかりと土台を作っているわけです。品質優先。決して妥協はしません。
このように、出荷までの作業を細分化し、1人の人が同じ作業を何度も何度も繰り返すことにより、誰でもそうであるように作業を覚えるのも早くなるし、失敗からの学習能力も高くなるのです。三洋ハートエコロジーさんの場合は知的障がいを持つ方が多いのですが、そのような方たちの力をうまく引き出せる方法といえます。
「“職人芸から分業へ”作業を単純化することで、仕事を覚えるのも早くなる。熟練度が早い分、作業も早くできるようになるんだ。いわゆるセル型の逆ね」
セル生産方式とは、1人、もしくは少人数で製品の完成までを行う生産方式。ライン生産方式と比べると、1人が受け持つ仕事の範囲が広いのが特徴です。
つまり、ハートファームは難しい農業生産の分野で、その作業を細かく分業化したライン生産方式にデザインしたことが大きな功績に繋がったのです。
それではチョット社員さんにインタビューしてみましょう!
こちらは馬場悟(ばば・さとる)さん。

コチラで働いて何年になりますか?
「5-6年くらいです」
今はどのような作業をされているのですか?
「出てきた芽を誘導するための支柱を1鉢ずつ挿しています」
「挿す」と言ってもただ挿せばいいというものではありません、もちろん。
大きな葉の中にこっそりと出てきた新芽を見つけて、その隣に沿わせるように、但しミズゴケに挿すだけでは支柱が倒れてしまうので倒れないようにギュッと深いところまで、その時に根を傷つけてはいけないので、根に当たらないよう十分注意しなければなりません。
長い芽については支柱を挿して、赤い洗濯バサミ(といっても専用のもの)で固定していきます。

良く拝見していると・・・どれどれc(゚.゚*)
1つ7秒くらいで済ませてしまう素早さ!

1日でなんと1,300-1,400鉢くらいは作業をやってしまうそうです!スッ、スバヤイΣ(゜◇゜;)
この手つきは熟練の技!
このお仕事をしていて何が大変ですか?
「芽をうっかり折ってしまったりするので、折らないように気を付けて、慎重に丁寧に作業を進めていく必要があります。
ほかにもやることも多いので結構忙しいですね」
うっかり芽を折ってしまったらどうするのですか?・・・アタシなら知らんぷりダナ(-.-)
「報告します。」

うわっ!素晴らしい。会社員の鏡です!!
アクシデントのときの対処方法もきちんと周知徹底されて、何かあったときは農場長(後ほど登場)に報告するようになっているのです。
このお仕事をやっていて楽しいと感じることはありますか。
「楽しいというか、地道な作業なのでコツコツとやっています」
確かに分業化した業務を何度も繰り返し行うわけですから、とても地道な作業ですよね。
では仕事以外では楽しいと感じることは何でしょうか?好きな芸能人とかいらっしゃるんですか?
「AKB48です!」
キャハ(≧∇≦) 実はアタシもケッコウ・・・!!
何の歌が好きですか?
「ヘビーローテーション!」
あ、ところでこの作業にもローテーションはあるのですか?c(゚.゚*)
「あるよ!ヘビーじゃないけど」
とすかさず堀野さん。
「ローテーションをしてできるところを増やしていくんだ。それが一人一人のスキルアップに繋がる」
なるほど、地道な繰り返しの作業の中でも個人のスキルアップと成長を促しているわけですね。
ところで、さきほどから圃場を拝見していると目を引くこれらの木工製品は何でしょうか。

「治具(じぐ)っていうんだ」
じ、治具???(・◇・ )ナンダロ?
治具とは加工や組み立ての際に方法を指示、誘導するための器具の総称です。
もともとは英単語のjig(ジグ=装置)からきたものでこれに漢字を当てられました。
この治具がまたハートファームさんで大活躍のスーパーツールなのです。
例えば・・・
コチョウランのカーブを決めるこの角度。このためには角度を作る支柱が必要です。

支柱がなければ、コチョウランはまっすぐ上に伸びてしまいます。
これを「誘引」といって、花芽が伸びる前にこの支柱を挿しておきます。これに合わせて伸びていく花芽をうまくカーブさせていくと、ゴージャスなコチョウランができあがるので、コチョウランの相棒とも言うべき必須アイテム。
出来上がったコチョウランがかっこいいかどうかもこの誘引する支柱のでき具合にかかっているといっても過言ではありません。

ここハートファームさんにおいてはカーブが出来上がった支柱を仕入れて挿すのではなく、大量カーブ製造マシンのような特別な機械にやってもらうわけでもなく、自分たちでカーブさせて支柱を作るのです。
ところが、誰がやっても100本曲げて100本同じ角度にするなんて神業、できるものではありません。。。よね?フツウ。
しかしこの治具が可能にしてしまうのです!しかも複数の人が何百本やっても丸っきり同じ角度に!


だから、難しいとされるコチョウランの仕立てもこの通り!

きれいに揃った角度で見事なほどに並んでいます。

スポンジは花が正面に向くよう揃えているものです。
これがヘヴィーユーザーさんたちが絶賛していた「花の向きが揃っている」ワケだったのですね。

スーパー治具は、複雑な作業のため人によって差が出てしまうような作業を、誰でも均一にできるようにする秘具だったのです。
なんと!∑(゜◇゜;)
「まだまだあるよ!」と堀野さん。
例えば その2・・・
むむム?何を作っていらっしゃるのでしょうか。
何の迷いもなく1本のまっすぐなワイヤーを、スイスイと巧みに且つ華麗に治具を動かして折り曲げています。

コチラが完成品。

何のツールが想像できますか?このようなワイヤー、コチョウランの製品に使っていましたっけ??
(アタクシは答えを教えていただくまで分かりませんでした^_^;ナハ)
正解はこちら↓

そうです!なんとこちらはコチョウランの鉢に挿す木札を立てるためのサポートツールなのです!
もちろんこちらはハートファームさんならではのオリジナル商品。
これもお客様からのご要望にお応えしようという一心で作られたアイディア商品なのです。
なんてハートフル!(≧∇≦)
これにより、利用者は簡単に木札を立てることができ、なおかつ配達中、車の中でグラグラ揺られた挙げ句に倒れて花を傷つけることもなく、最後まで直立不動で最終のお客様の元に届けることができるのです。
お祝いに使われることがほとんどですから、木札が倒れたら縁起悪いし!
ヘヴィーユーザーCさんがおっしゃっていた「木札を立てるための輪」とはこのことだったのですね!
これまたなんとユーザー目線なアイディアなのでしょう。
あーほんと、ハートを感じる・・・
まだまだあります。
例えば その3・・・
こちらはただの机ではありません。

ではなんでしょう??(゜.゜)??
ここでデモンストレーション!
すぐ後ろの棚に置かれていた段ボールを華麗に取り出し、速やかに広げ机の上に被せる。

あっちを折って、こっちを折って、テープで留めて、机をクルッと回して、あっちとこっちを折り曲げて・・・


鉢を固定する内箱をセットして・・・

ハイッ、完成!

コチラの治具は出荷用段ボールの組み立てツールだったのです!
こうして箱を組み立てるのも本来は一定のスペースが必要。以前は厳寒期でも外の広いスペースを使って組み立てていたそうですが、この治具の開発以来、清潔な施設の中で仕事に集中して行えるようになりました。
作業をする方ご自身が大きく移動するのではなく、箱をくるくる回すことによって、スペース使用も作業もグン↑と効率アップしたのです。しかも、この治具一台で大きい箱も小さい箱も両方簡単に組み立てられるんですよ!

この天板を差し替えるだけで「大」仕様、「小」仕様といとも簡単に作り上げてしまうのです。
瞬きをしている間に、パパッと手早に!
その上、・・・ご覧ください・・・テープを納めるところやカッターを挿しておくところも作られており、現場が散らからないように、物がなくならないように、ひいてはそのことによって事故に繋がらないように、細部に至るまで心配りがされているのです。

作業者の一挙手一投足が見えているかのようなこの配慮。
徹底的に作業をする人目線で作られています。これはもう作った方の優しい気持ちを感じずにはいられません。
一体どなたが作っていらっしゃるのでしょうか?
「三洋電機のOBさんたちが自発的に作ってくれたものなんだ。
コチラから頼んでいるわけではないんだけど、作業現場を考えて“これがあったら便利なんじゃないかな”という一心で作ってきてくれるんだよ」
な、なんとOBさんたちによる愛情のこもった手作り治具だったとは!
なんと温かい(T_T)!!!(涙涙)
作られているのは治具のみならず、圃場内の整理整頓箱、梱包資材の収納ボックス、更に使いやすくなったエアーカッターなどなど。


←こちらは出荷時にコチョウランの花に被せる京半紙をかけておくものです。
良く見れば角はきちんと丸く面取りされています。

使う人のことを考えて行き届いた配慮はOBの方々の心(ハート)を感じます。
あ、だから“ハートファーム”っていうのか?
ハートファームさんの圃場はこれらの温かい心を感じる治具などの木工製品によって支えられているといっても過言ではないでしょう。
これらの1つ1つに至るまで、お客様と作業をする人のために考え抜かれたアイディアグッズなのです。
圃場内の整理整頓も完璧!
「後で片付ければいいや!」ではなく、また気付けばすぐに掃除ができるようゴミが散らからないような仕組み作りがしてあり、その成果は至るところに!

全く無駄がありません。

それにしてもこのコチョウランという選択はどのようにして生まれたのでしょうか。
私たちは「ハートファームといえばコチョウラン」という現在の結果を当たり前のように受け止めてしまっていますが、ココに辿り着くまでにいろいろと大変な思いをされたのではないかとお察ししますが??

「そこなんだよ。
1998年の設立当初は親会社が準備した“軽作業”中心で、元々とは観葉レンタルや除草、花壇苗の植栽などを行っていたんだ」
そのような業務からコチョウランの生産販売まで発展するとはすごいですね。
どのような経緯があってのことでしょうか。
堀野さんによると軽作業で始め、また当初はグループ企業や社員さんたちを主なお客様としていましたが、子会社の独立志向が強い企業文化の三洋電機グループにおいては、この三洋ハートエコロジーさんにおいても例外ではなく、「いや、ならぬ!外に売っていかねば!」と設立以来自社で業務を開拓してきました。
「特例子会社といえども赤字厳禁!」と強調する堀野さん。
満を持して2004年に600坪(150坪×4棟)の栽培施設を建設しました。
・・・600坪ってどのくらいでしょう??
「コチョウランでいえば年間50,000株。5本立ちの鉢でいけば10,000鉢の生産能力があるよ」
wow!!∑(゜◇゜;)
「最初はカトレアやファレノのミディなどを手掛けたりしていたんだ。大輪のコチョウランは敬遠していたんだよ。
最も高価な商品とされているし、それだけに品質を厳しく問われるし、新参者としての信頼獲得にも時間がかるでしょ。

だけど、カトレアやミディがなかなかうまくいかなくてね。だからといって大きな施設もあるから無駄にするわけにもいかないし、生産を放り出すわけにもいかないし、前向きになにか作らなくてはいけない。そこで2008年に辿り着いたのが大輪コチョウランだったんだ」
今まで敬遠していたコチョウランに背水の陣で臨んだら、それが正解だったわけですね。
成功した理由は何でしょうか。他のランと違う点は?
その理由は次の通り。
① 適切な品種との出会い
高度な生産スキルがなくても大丈夫とされるV3というコチョウランの品種に出会えた。
② 業務の確保
V3の苗を月2回定期的に、1年を通して入荷する。(→サイクルが早い。失敗しても軌道修正しやすい→熟練度も早い)
このことにより周年、安定して同じ業務を一定量を確保できる
③ 変化が相対的に緩やか
季節変動・需要変化などが少ない
④ 業務の平準化が可能
業務ステージを分解することで、平易な業務に転換できる
このことにより、知的障がい者雇用に困難があると言われることをクリアし、高い品質をキープしながら通年出荷することができるのです。

「信用が大事だよね。
“いつ買っても同じ品質”と安心を提供することが信用に繋がる。
だからいつも80点ものを出荷することを心がけているんだ。たまに120点、たまに40点ではダメなんだ。
最高級ではなくても安定的に80点。信用獲得には時間がかかるけど、ビジネスの仕組み作りは往々にしてそうでしょ。時間をかけてでもコツコツと80点を積み重ねてあてにされる生産者になるんだ。
いくら特例子会社といっても株式会社だから収支責任を負っている。そのためにはまず品質・コスト・納期をしっかりしていかなくてはいけない。QCDね」
Q=Quality
C=Cost
D=Delivery
そう!こうしたしっかりとしたディレクションがあるからこそ、三洋ハートエコロジーさんの事業はうまくいっているのです!
だからこそこのラベル!=信頼の証です(80点保証!)

「日本一デカいラベルです」
たしかに!
少なくともコチョウランにおいてはそうですし、ほかの鉢ものでもここまで大きいラベルは見たことがありません。
「広く多くの人の目につくことが信頼獲得の第一歩でしょ」
こちらのラベルもあります。最近作りました。

コチョウランの生産者さんは顔が見えないことが多く、野菜などでは「私が作りました!」的によく写真が載っているのですが、確かにコチョウランの商品ではそういったものを見たことがありません。
個人名が付いたわけでもない「ハートファーム」という産地名で出荷すると、なおさらどのような人が作っているのか分からないからと、弊社社長磯村のアドバイスにより作成されました。
このモデルになっているのは↓ナント・・・!
「わたしです」 ワオw(゚o゚*)w!!
農場長の丸山剛史(まるやま・たけし)さんです。
こちらの農場長兼モデルの丸山さんがこれまたキーパーソンとなっています。
「社員と休憩時間にはコミュニケーションをとったり、仕事では花に対する接し方を伝えるようにしています。
1株1株丁寧に扱うようにと。何度も繰り返し伝えて、できているかどうかをチェックするんです。気長に何度でも何度でも」
←報告があったので、それに対する指示をしています。注意しているわけではありません。
丸山さんのような気の長さはどこの職場においても重宝することでしょう。
「わたしも時折大田花きに行くんですよ」
え?本当ですか?

「セリの流れを見たり、他産地の商品品質をチェックしたり、何よりお客様とのコミュニケーションのためにね。
安定した品質で周年出荷する。個性的なものよりも、万人に受けるもの、お客様の使い勝手の良いものを供給するというのが私たちの商品コンセプトですから、そのために広くお客様の声を集めに行くんです」
丸山さんにとってコチョウランは商品というよりも、むしろ“コチョウランはお客様とコミュニケーションをとるための手段”といいます。そのくらいコミュニケーションを大切にしているということでしょう。
う~ん、でもまだどうしてもひとつわからないことが・・・(-"-;) ??
仕組みは作れても、栽培技術やノウハウはどのように伝授されているのでしょうか。
買参人の皆様に高評価をいただくだけの高品質はどのように生み出しているのでしょうか。
専門的な知識が必要なはずです。
どなたか技術指導している方がいらっしゃるのですか?
「アートグリーンさんにお願いしているんだよ」
アートグリーン㈱さん(本社:東京)といえばコチョウランの卸売販売の代名詞というくらい有名な会社です。コチョウランばかりでなく広くフラワービジネスを手掛ける業界の大企業です。
生産もマーケットを知り尽くしたコチョウランのプロともいえるアートグリーンさんに栽培指導をお願いしているのです。

取材当日になんとアートグリーンの伊藤さんが圃場にいらしていました!
“もしかして、ウン探のためにいらしてくださったのかしらン??” ウフッდ(☣‿☣♥)ノ キラキラ★
「たまたまです」
あ、これはどうも勘違いして失礼いたしましたm(_ _)mスミマセン!
分業化して生産の仕組み作りをしたとしても、コチョウランは農産物であることに変わりありません。日々表情を変える生産物に対しどのように対処して、お客様のニーズにあった品質に高めていくのか、毎月こちらの圃場に赴いては指導されているのです。
ハートファームさんの生産の特徴は何ですか?

伊藤さん「じっくり時間をかけて生産するということかな。
一般的には苗を入れてから5か月から5か月半かけて出荷する。人によっては4か月半くらいで開花させて出荷する人もいるんだけど、ハートファームさんは6か月半から7か月かけてじっくり栽培しているんだよ」
堀野さん「そのくらいじっくり時間をかけて、良いものを出荷するようこだわっているんだ。その方が大輪になる。
こだわりはシステムの構築だけでじゃないんだ」
なるほど、通常の生産よりさらにじっくり時間をかけることによって、ヘヴィーユーザーさんたちがおっしゃっていた肉厚・大輪・花保し良好の三拍子が揃ってくるのですね!
そう話されるお二人の横で、地道に作業を続けられる社員の仁木聖史さん。

何をされているのですか?
「鉢に挿すタグに印を付けています。
苗の種類によって印を付けているんです」
堀野さん「タグの色は入荷したタイミングによって色分けをし、3.5寸ロング(背が高い)の苗にはマジックで印をしているんだ。
こうやってロット管理をしているんだよ」

あ、ほんとだ。苗によって挿してあるタグの色が違う。
「出荷までのリードタイムを管理することができるんだ。これがじっくり時間をかけて栽培できる秘訣でもある。
3.5寸ロングの株には力があるからね。さらにその株をじっくり育てることよって花保ちが良くなるんだ」
業務終了後には、丸山農場長兼モデルを中心にマネージメントに携わる方々と伊藤さんとでミーティングを行います。

立って行うからといって5分で終わる形式ミーティングではありません!今日の反省と今後の生産に対する目線合わせなど、報告や意見、質問が出されに対する伊藤先生からの回答や丸山農場長兼モデルの方針決定など、運営に携わる皆さんが全てを把握し同じ認識で進めていくための大変重要なミーティングなのです。
このような日々の積み重ねがハートファームさんの品質を生み出していたのですね。
ヘヴィーユーザーのAさんに“ハートファームさんが障がいを持つ方の能力を生かす仕組みを作って出荷されているのをご存じでしたか?”と伺ってみました。すると・・・
「えッ!?∑(゜◇゜;)
全然知りませんでした・・・」
実はハートファームさんの商品を頻繁にご利用になっていても、そのことをご存じない方は結構いらっしゃるのです。品質に対するこだわりや完成度から、知る由もなかったといったところでしょうか。
ハートファームさんは決して障がい者雇用を前面に出して販売されているのではなく、あくまでもそのPRポイントは“ぶれない高品質”。社会品質・商品品質・市場品質においてお客様に支持されているのです( ^ー゜)b
2008年のリーマンショック以降、この花き業界でも法人需要が一気に落ち込み、とりわけ法人需要に支えられている要素の大きいコチョウランにはその売れ行きに大きな陰りを落としました。
そのような不安要素やリスクに対してはどのようにお考えでしょうか?
「コチョウランには贈答用として選ばれる理由があると思うんだ。ほかの花にはない豪華さや華々しさとか、丈夫とか、手入れが簡単とか代品が利かないとか。
コチョウランはギフトの王道だから、何らかの時代背景があって一時的な顧客離れがあったとしても、私は悲観していないんだ」

最終ゴールはどこにあると思いますか?
「お客さまと従業員を大切にしながら、生産と販売は愚直に地道にコツコツと続けていくのみ。
どの企業にも大きく依存することなく、福祉としての意味合いだけではなく株式会社として継続的に収益を上げ、本当の意味で自立する。赤字厳禁!農業のニューフロンティアになる。
走り続けるには環境の変化にも対応していかなくちゃならないし、多くのリスク要因に囲まれた中で株式会社としてきっちり収支を合わせていくというミッションを完遂するということかな。
そのためには、地道にコツコツやることくらいしかできないんだよね。
何か大きなことをドカーンとやろうとか、このビジネスで一発当てよう!とかそういうことはできない。マーケットを無視したフルラインナップ戦略とかプロダクトアウトとかでもなく、私たちは右往左往せずに1つのことを愚直に続けていく。むしろ愚直であることがアウトプット力に繋がると思っている」
大切にしていることは何ですか?
「そうだねぇ、最終的には・・・ウーン

笑顔だな。
お客様と仲間の笑顔。そして私たちは株式会社なのでステークホルダーの笑顔(*^-^*)ニンッ!
仕事は楽しいものだと思っているんだ。
私たちはふつう“職業選択の自由”があるでしょ。どういう職業を選択して、人生が楽しいかどうかっていうのも全て自分の責任だよね」
自由の中に生きているとそのことを忘れかけていましたが、そうでした。
私たちには職業選択の自由を持っていたのでした。今の自分は、自身でこれまでに選択を重ねてきたことの結果ですね。それはもちろん自分の責任おいてです。
「でも障がいという個性を持っているだけで職業選択の幅が一気に狭まって、楽しくあることすら制限がかかってしまうことがある。障がいを持っている人が選べる職域を広くして少しでも楽しく生活してほしいと思うんだ。
障がい者手帳を持っていても、自分の能力を最大限に生かせて、誰よりも楽しく仕事をしてほしい。
また、こちらとしてはそのような機会を提供して、仲間のみんなが自分を成長させてもらえればいいなと思う。
お客様の笑顔が必要条件だとしたら、仲間の笑顔は十分条件!」
なるほど堀野さんと三洋さんの思いはホンモノです。親会社と三洋ハートエコロジーさんの社会に対する貢献度は大きいですよ!
堀野さんご自身は?
「私は実はこの仕事をする前はIT業界にいたんだ。新しい商品を世の中に出す仕事をしていてね。
だけどある日ふと向いている方向が違うと思って今の仕事に就いたんだよ」
前職のIT業界でもかなりご活躍だったと伺いましたが、堀野さんは以前の実績に固執することはありません。全く所長ぶったところがなく、従業員の皆さんにもとてもフレンドリーに話しかけます。

「だってみんなの声を聞かせてほしいしさ。偉そうにしていたらみんなの声を吸い上げることはできないじゃない。
むしろチャラ男と呼んでほしいさ」
キョエーーーー∑(゜◇゜;) 堀野さんが目指していたものがチャラ男だったなんて!
いえいえ、あえてそのようなキャラクターづくりをされるからこそ、所長さんになられても尚、皆さんがきさくに堀野さんの周りに集まり、幅広くコミュニケーションを図っていらっしゃるのですね。
オープンマインドで誰とでもフレンドリーに接する堀野さんのご尽力あってこそのハートファームさん。
このような数々の地道な活動を積み重ねてきたからこそ、グッドデザイン賞受賞の際の主催者からのコメントはこの上ないものでした。
以下は主催者からの公式コメントです。

「頭でっかち、コンセプト倒れになりがちな障がい者支援プロジェクトの中で、地に足がついた仕組みを構築している。
また花市場の中でコチョウランは様々なお祝やギフトに頻度高く、四季に左右されずに出て行く商品であり、テーマにこのコチョウランを選んだところに基本となるマーケティング能力を感じさせ、ビジネスとして成功する大きな要因となっていると思える。障がい者にとって本当の意味での支援システムとして評価できるという活動である」
まさに三洋ハートエコロジーさんの活動主旨を深く理解して、高く評価されたと言っていいでしょう。

世界に冠たる電機メーカーならではの特長が随所に見られるビジネスモデルはさすがですね。
人生や企業の歴史はよく「道」に喩えられます。
しかし、「みち」には色々あります。
三洋ハートエコロジーさんのビジネスモデルを「みち」に喩えるなら、一つ一つの作業を分解して繋げ出荷までの径(みち)を作り、これを繋げてその径の最後に商品のコチョウランたちは出発の途(みち)に就きます。

このビジネスは、前人未到の未知(ミチ!)の世界を切り拓き、そこで働く人々がよりよく生きるための道(みち)を創造し、ひいては他業種においても進むべき路(みち)を指し示しているようにも思えます。
さまざまな「みち」を切り拓いたところに社会における大きな功績があると感じました。
グッドデザイン賞も納得の受賞。企業としての価値や存在意義に大きなものを感じます。
分業化された作業は線路の枕木のように径を作り、その上に敷かれたレールによって商品が旅立つ。
果てしなくどこまでも続くその先にあるものは・・・なんだか線路のイメージとも重なってしまいました。

★ハートファームさんの格言!
・ 顧客目線で品質重視!
大輪・肉厚・花保ち良好の花に、揃った花向き、揺られても倒れない株。お客様の木札も倒れません!ハートファームの信頼も倒れないよう、いつも同じクオリティを提供します。
・ 職人芸から分業へ、セル生産方式からライン生産方式へ生産の仕組みを構築せよ!
・ ハートファームは、まさに心(ハート)の行き届いたファームであった
圃場中どこに行っても、何を拝見しても、誰とお話をしていてもハートを感じます。
・ なんといっても治具と分業がハートファームをハートファームたらしめるキーワード!
・ 憲法第22条 「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転、および職業選択の自由を有する」!
日本国民よ、自由を享受し、自らが活躍できる場を模索すべし!Live your life!です。
三洋ハートエコロジーさんからのメッセージを感じます。
★堀野所長からお客様へひとこと
「本来のコチョウランの魅力を皆様にお伝えしていきたいと思っています。
経験不足なところもありますので、日々研鑽を積んでいきたいと思います」
★丸山農場長兼モデルからお客様へひとこと
「いつもありがとうございます。
1株1株愛情を込めて栽培していますので、末永く宜しくお願い致します」
★堀野所長から丸山農場長兼モデルへひとこと
「青春に過ちはつきもの!気合いを入れて過ちをしろ!」
ん??
あは~^_^; ここはあまり深入りしないようにしましょう。お二人のお話ということで。
チチチチチチチチチッ←秒針の音
日光東照宮、宇都宮餃子、那須高原、鬼怒川温泉・・・
では花でいえば?
チチチチチチチチチッ
栃木県といったらバラです。バラ!
栃木県のバラについてある仲卸さんからの評。
「サイコーだね。
とりわけローテローゼのクオリティは全国有数と言って間違いない。
仕立ても立派だし、バランス、花保ち、全てにおいて素晴らしい。
他産地と比べても、同じ品種でどうしてここまで花持ちが違うのかと思うくらい違う」
絶賛!!!
大消費地東京までちょうど100km圏内という好適地にそんなにいいバラを作っている産地があるとは!
ここまで高く評価される秘密を探りにいざ出陣!
紅葉の東北道を駆け抜け―――


向かう先は栃木県宇都宮市のヨコヤマ薔薇園さんと上三川町の斉藤武さん。

栃木のバラの二大巨頭にお邪魔しました。
こちらのお二人が栃木県のバラのクオリティを牽引しているといっても過言ではないでしょう。
こちらがヨコヤマ薔薇園の横山陽一さん。

前職「俳優」・・・ではありません。
なんだか岩城晃一と田村正和を合わせたようなスーパーダンディズムを感じます。
そんな横山さんに見とれていないで、ウンチク探検隊、いざ横山さんの圃場に潜入です!
シゴト、シゴト!
ジャジャーーーン!

ワオワオ,WOW,WOW!w(*゚o゚*)w
元気な葉が青々と茂っています!
このようなイバラの道から身を守るために、横山さんがこちらのエプロンをご用意してくださいました。

さすが横山さん!
用意周到!
ジャン!マグネットでカンタン装着ッ♪

これがあれば、トゲが衣服に引っかからずこの通りスイスイ歩けます。
あれれ~。ずいぶんと枝がなぎ倒されていますが、これは正常な状態ですか?
ワザト?(・_・?)
一糸乱れぬラインダンスを見ているかのような光景ですが、これはどうして倒れているのでしょうか。

「アーチング栽培(用語レベル★)といってね、バラを生産する技術のひとつなんだよ」
とダンディズム横山さん。
アーチング栽培?「(゚ペ)ハニャ??
そうなんです。これは、バラの枝が伸びてきたところで思い切ってグニャッと曲げて、

葉から多くの光を取り込めるようにする方法です。
こうすることにより光合成が促進され、株に効率良く栄養を送り込むことができるのです。
グニャッと折っても、また中心部から新しい枝がまっすぐに伸びてきます。
この枝をベーサルシュート(basal shoot:用語レベル★★★)といい、そのうちの太くてしっかりした枝(=採花母枝:用語レベル★★)を出荷用として育てるのです。
アーチのように茎を折り曲げて行くからアーチング栽培。
日本人が開発した画期的栽培方法のひとつ
(アッパレ!)で、現在のバラ栽培におけるスタンダードになっています。
倒された枝が日照量を確保して株に栄養を蓄える、残された採花母枝はその栄養を使って美しく生長する役割を持っているのです。

バレーボールでいうと倒された枝がレシーバー兼セッターで、アタッカーに栄養というトスを上げる、そして残された枝がエースとして市場に出荷される・・・ということなんですね( ^ー゜)b
「そうそう、私は働き蜂と女王様だと思っているんだ」
分かりやすい例えです。
倒す枝と残す枝の判断はどのようにされているのでしょうか。
「1株のうち倒すのは3本以上なんだ。だからまず最初に出てきた3本は倒す」
早く生まれた芽は倒される運命なのか~!! (+_+。) ガーン(悔)地道にガンバロ。
「3本倒してやっと株が充実してくるんだよ。
4本目からはその枝が製品に向いているかどうかで判断するんだ。もし曲がっていたら製品にはならないから倒す。

スプレーバラの場合は、長さが60cmになった時点でツボミが3つ付いていなかったら倒す。

あとは初蕾(はつらい=初めてツボミが付くこと)(用語レベル★)したときにツボミが曲がっていたり、葉に奇形があったりすると倒すんだ」
バラの場合、この小葉3枚か5枚か7枚で1枚の葉を形成します。
↓これで1枚の葉。

採花母枝の下に行くほど1枚を構成する小葉の数が多く7枚、上に行くにつれて5枚、3枚となっていきます。
バラたちが最も快適と感じる温度は24-25度、

最低でも18度、たとえ真冬の夜でもこの温度を下回ってしまうときれいに発色しなくなってしまいます。
(品種名:タージマハル)
あら?こちらの大きなボトルのようなものは何でしょう??

「酸素だよ」

酸素?(゚ペ)?
光合成のための二酸化炭素ならわかりますが、どうして酸素が必要なのですか?
「この酸素は潅水する水の中に入れるものなんだ。
植物の根も呼吸しているから、有機物を分解してエネルギーを得るときに酸素がいるんだけど、酸素飽和度が下がるとミトコンドリアで酸素を消費して、●∀й☆ΘΛ†Π・・・・」

ガラガラガラガラ(←シャッターの閉まる音)
ううぅぅ・・・・わがんねぇ(+_+;)チーン!
ココで一度、植物の根が持つ働きについておさらいとまとめをしてみましょう。
植物の根が持つ働きは一般的に3つあります。
① 植物を支える
② 栄養を吸収して上半身に送る
③ ②のために働くエネルギーを作り出す
③をするためには「空気」「水」「養分」の3大要素が不可欠です。
上半身の葉で光合成をして作られたでんぷんが根に送られ、根は自分で取り入れた酸素と送られたでんぷんとを結合してエネルギーを作り出すのです。
これが植物が持つパワーの源というわけです。このときにもちろん3大要素のいずれも欠けてはいけないわけですが、酸素が欠乏すると苦しい~~~~~!と窒息して元気がなくなったり、根腐れを起こしたりするのです。
なるほど!
つまり植物の元気の源を作り出すには光合成をするときの二酸化炭素だけではなく、根から吸収する酸素も必要だというわけですね!( ^―゜)b
「そうそう、ところが夏は酸素が不足しがちなんだ。
気温が高くなると酸素の飽和度が下がるから酸素が不足するんだ」
暑くなると次の2つの理由から酸素の吸収率が下がります。
① バラが活動しやすい適切な気温というのがあり、暑くなると
「うわ、あっちーのぉ(;´д`) あンまり動きたくねーだ」
と根の活動が弱まる
② 気温が上がると水中に溶ける酸素量(=溶存酸素量;用語レベル★★★)が下がる
「そういうときにいつもと同じように水をやっているだけでは、根が十分な酸素を吸収できずに植物の根の元気がなくなってきてしまうんだ。これも研究しながらなんだけど、そう思って水に酸素を送り込むようにしているんだよ」
そういうか! ('-'*)(,_,*)('-'*)(,_,*) ウンウン
「金魚を育てるときも水槽の中に酸素のブクブクを入れるでしょ。それと同じ原理だよ」
一方でもちろん光合成のための二酸化炭素は必要。
日の出直前の2時間程度、施設の中に二酸化炭素が充満するようこのように発生装置を使っています。

二酸化炭素発生装置の形っていろいろあるんですね。
話が少し前後しましすが、こちらは斉藤武さんの圃場にある装置です。

このように写真を撮っただけではわかりにくいのですが、実はボーボーに(!)二酸化炭素が出ています。

二酸化炭素濃度はどのくらいなのでしょうか?
「今は・・・312ppmですね」

これは高いのでしょうか、低いのでしょうか?
参考までに↓大田花きの会議室に置いてある二酸化炭素濃度測定器です。

12月某日の午前中の二酸化炭素濃度は540ppmを示しています。
自然界で二酸化炭素濃度はだいたい350-400ppmくらい、
人の少ないオフィスや会議室などで500-600ppmくらい。
そこに人が入ると800-900ppm。
このときに1,000ppmを超えると会議や授業をするにも集中力がなくなると言われます。
数人が密室にいるだけですぐに1,000ppmくらいには到達してしまうので、闊達なディスカッションをするためには、本当はこの二酸化炭素濃度が見える化されるといいですね。
また2,000ppmを超えると不快感を感じたり、眠気を感じたりする人が出てきます。
3,000ppmを超えると頭痛を訴える人も出てくるというレベルになってきます。
と、少し話が飛んでしまいましたが、植物の光合成が促される施設園芸などの環境においては、空気中の二酸化炭素は吸収され値が低くなりがちなので、このように炭酸ガスを発生させているのです。
この網はなんでしょうか?夏休みの昆虫採集用??

「チョウチョ採りだよ」
やはり!珍しく当たった??
「夏休み用ではないけどね^_^;
たくさんいるわけではないけど、チョウチョとかガはどうしても施設の中に入ってきちゃうでしょ。それを放置しておくと、卵を生みつけて大量発生しちゃうんだ。
薬でやっつける人もいるけど、うちは気づいたときに一匹ずつ人海戦術で対処する」
さすが横山さん!こうして使用する農薬を少しでも減らそうと努力をされているのです。
MPS※(用語レベル★★)も導入直後にいち早くご取得され、もちろん評価は文句なしのAです。
※Milieu Programma Sierlteelt オランダ語で「花き産業総合認証」の略。花きの生産流通において環境負荷低減に配慮したり、品質管理を行う企業・個人に対し認証するシステム。世界約30カ国が加盟、日本へは2007年に導入された。

「評価はBでもCでもよかったんだけどね。参加することに意義があると思っていたから」
圃場内の戸棚もこんなにきれい!

しっかり整理をされています。仕事は整理整頓から。
圃場心臓部へ
「ここは生産圃場の心臓部ね」


圃場の心臓?
どういうことでしょうか。ドキドキ❤
「今は生産管理は殆どが機械化されているからね、ここでバラにとっての最適な環境をコントロールしているんだよ。」

肥料と水を混ぜて潅水したり、気温や湿度を調整したり。
バラの管理は次の3つを適切に行うと収量がアップするといわれています。
① 温度
② 湿度
③ 炭酸ガス濃度
①が適切に調整できないと・・・
(温度が低すぎる場合は)ローテローゼなどの赤い品種は黒ずんでしまいますし、温度が高すぎると輪が小さく、また色褪せてしまいます。
②が適切に調整できないと・・・
灰色カビ病などの病気が蔓延してしまいます∑(゜◇゜;) ドキッ!
③が適切に調整できないと・・・
つまり二酸化炭素濃度が低すぎてしまった場合ですが、うまく光合成ができず、植物が栄養を蓄えることができません。

うわぁ!∑(゜◇゜;)
ほんとに心臓のようにガチンドクッ、ガチンドクッと脈を打ってポンプが溶液を送り出している!
鼓動のような音にポンプの動き、これはまさに圃場の心臓です。
「この音を聞いていれば、機械の調子が悪いかどうかが分かるんだ」
なるほど、この音は体調管理のバロメーターというわけですね。
あらら~ン、こちらのニャー様は横山さんの愛猫ちゃまですか?

「ネズミ捕りなんだ![]()
ヘビとかネズミって結構出没して、農作物に害を及ぼすんだよ。
特にネズミなんかはこのパイプをかじっていたずらすると、

養液が途中で漏れて苗のところまで辿り着かなくなったりする。
以前は薬やなんとかホイホイみたいのも仕掛けてみたけど、ダメだったんだよ。20年前から猫を飼い始めて以来、ネズミもヘビもいなくなったよ。
ネコがニャーと鳴くだけで全然違う。
これをニャオ効果(用語レベル???)っていうんだ」
にゃんと、ニャオ効果、絶大なり!
これも天敵を使った一種のIPM農法※(用語レベル★★)ですね。
※IPM農法=Integrated Pest Management(総合的有害生物管理)の略で、天敵を使って生産の邪魔ををする害虫たちをやっつける方法。農薬を使って退治するよりも環境や人体に優しい方法とされる。
大変ご活躍のニャー様のお名前は?見た目もゴージャスだし、よく働くし、ダンディーな横山さんちのニャー様だし、さぞかし高貴な響きの名前だったりするんやろにゃ~・・・ドラクロワとか?ダ・ヴィンチとか?はたまたシャルルとか?そんな感じ?
「ピーマン」
・・・(゜.゜)
こちらは出荷準備中!
跡継ぎのご子息貴一(きいち)さんは働き者!


わーいっ!(^o^)丿
やった、やった♪ OTA行きの荷物をご準備くださっています。ありがとうございます。
あらら?チョットチョット、出荷箱の中のこちらは何ですか?なにかの仕掛けでしょうか?

ワンダム??と書いてありますが、マンダムでもなく、アスワンハイダムの略でもなく??
・・・いったい何のことでしょうか??(゚_。)?(。_゚)?
「出荷するときにここの袋に水を入れるんだけど、このワンダムをセットすると箱を横にしても水がこぼれない」
なるほど~。そんな素晴らしい仕組みがあるんですね。どのような仕掛けになっているのでしょうか・・・?
このビニールの部分に水を入れて・・・フムフム

足元にペーパータオルを巻いたバラを入れる!と。

それから口をふさいでワンダムにセットすると・・・

ほらこの通り!
立てればこの通りバラの足元をしっかり保水、

横にしてもこのダムで水が流れ出るのをこのダムでしっかりとブロックしているのです。

また市場流通においても、横にしてローラーに流して自動分荷機に投入してもノープロブレム!
立てておいた箱をうっかり倒してしまっても、もちろん水が漏れて商品が傷むこともありません。
「水が漏れたっていう事故はほとんどないね」

なんと!すばらしい!ワンダホー!ヽ(‘ ∇‘ )ノ
「そうでしょ。ワンダフルなダムだから略してワンダムって付けたんだ。
水が止まる不思議なダムでもあるから不思議の“ワンダー”ともかけてあるんだよ」
これはなんと横山さんが開発したもので、特許をご取得されています。
この紫色の帯のようなものは何ですか?

「ひもで商品を固定するときに、商品が傷つかないように保護しているんだ」
でもどうして紫色?(゚ー゚?)(。_。?)
「色の効果だよ。緑色が映えるように反対色の紫を使うんだ」
なるほど~。補色効果ですね。反対色(=補色)を組み合わせることによってお互いの色を引き立てる相乗効果を狙った作戦ですね!
そういえば、スーパーに売られているチンゲンサイやホウレンソウなどの葉物野菜はよく紫色のテープで巻いてあったりしますね。
ウン探行きつけのスーパー(そんなのあるのか?)を覗いてみると、ホラこんなに。



↑写真だと少し青く写ってしまうのですが、本当は紫色。
あっちもこっちもグリーン系の野菜はことごとく紫色のテープで巻いてあるか、パッケージの印刷の字が紫だったりします!
あのテープの色にはそういう意味があったのかぁ(゚∇゚)ナットク!
補色効果、偉大なり!
足元もこのとおり通りきれいに脱葉(だっぱ=余分な葉を取り除くこと)(用語レベル★)され、さすが横山さんの性格や商品ポリシーを反映しています。まさに神は細部に宿る・・・!という感じです。

常にお客様の目線に立つ横山さんのクオリティは1993年にドイツのシュツットガルトの園芸博覧会でも認められた世界品質です。

横山さんがバラ生産で最も大切にしていることは何ですか?
「OTAとか仲卸さんとか、買い手との交流や頂く情報を大切にしているよ。
作るのは黙々とやれば誰でもできるし、システム化することもできる。
だけどコミュニケーションによる情報提供は人だけが持つ力だから、これを意識してうまく情報収集できるようにしているんだ」
なるほど生産はシステム化して機械心臓に任せてあるわけですから、人にしかできないことをやるわけですね。
横山さんはそもそもどうしてバラ生産を始められたのですか?

「うちの親は米中心の農家だったんだけどね、昭和45年から減反調整が始まって47-48年ころに花に取り組んだんだ」
その時取り組んだのは“ポットマム”(=鉢植えのキク)だったといいます。
「でも1年でバラに変更したよ。鉢植えだからポットに土が入っているでしょ。重いし、輸送のときも場所を取るし、花というよりも土を運んでいる感覚で採算も合わなくなっていったんだ」
その時に選んだのがバラというのはまたなぜでしょう?
「昔から人がやっていないことをやってみたいと思っていた。
へそ曲がりなんだよね(笑)。
栃木県ではバラを作っている人もまだいなかったしね。普及所の人からオランダのバラが売れているということを聞いてね、日本のマーケットでもきっとそうだろうと思って取り組んだんだ」
それで今の成功に結びつくわけですね。
「いやいや、成功しなかったよ。最初の10年はね。下積みだよ。

病気も出たし、その時は土耕栽培で始めたんだけど、土の扱いが難しくてね。
堆肥の入れ替えも大変だし、大変だから量産できないし。
土が新しければバラもそれなりに良くできるけど、改植をしないとだんだん品質が悪くなってくる。

新規参入してきた新人さんは私より良いものを作るし、自分の品質は思うようにならないし作業は大変だし・・・」トホホ
昨日今日始めた若手が、土が新しいというだけでご自身よりもちょっくらうまく作ってしまうわけですからね。
それはありゃりゃ(+_+)って思いますよね。
そこをどのようにクリアされたのですか?
「これを解決したのロックウール栽培(※後述)だったんだ。
ロックウールの生産が軌道に乗ってから」
「改植も管理も簡易化されたしね。
改植してリセットされたら必要なものだけを与えればいいわけだけだから、管理がマニュアル化できる。つまり特別な技術を持っている人じゃなくてもできるってことなんだ」
花きマーケットの難しさはなんですか?
「品種選びが難しいと思う。
例えば栃木であればイチゴが有名だよね。何の品種か分かる?」

と・ち・お・と・め( ^―゜)bですね?
「そう、栃木でイチゴを作るって言ったら、90%はとちおとめでOKなんだ。
トマトであれば桃太郎ね。

これを90%作ればOK。ところが、花は1品種90%生産はありえないでしょ。やっていけないよね。
この品種選びというのが難しいポイントでもあり、花生産の醍醐味でもあると思う。
同じ農業だけど胃袋を満たす産業と心を満たす産業との違いだよね。
花生産はとりわけデリケートなものだと思っているよ。ブライダルにも使われるしね。
生産というのはサービス業の延長なんだ。」
なるほど、「生産と販売」というのではなく「販売(のため)の生産」ということですね。
「生産して、市場や消費者が評価してくれて初めて価値が出るもの。
もてなすものであったりとか、喜んでもらえる花を生産することが販売に繋がると思うんだ。
色、形、花保ち、香り、荷姿、細部に足るまで評価ポイントになるからやり甲斐がある仕事だよ」
なるほど、このようなポリシーがあるからこそ細部にまで配慮されたパッケージ、品質へのこだわりというものが生まれてくるのですね。
バラ生産40年、振り返って思うことは?
「ここまでしかできなかったかと思うこともあるね。
もっと大きなこともできたのかな・・・とも。
でも、息子にも引き継げたし。こんなものかな」
コチラが横山さんと奥様、ご子息の貴一さん。

皆さんでポリシーを共有してこれからも高品質のバラをご出荷くださいます。
さて、こちらの菅原文太風ジェントルマンは斉藤武さん。(上三河町=宇都宮市のお隣)
ローテローゼのクオリティは日本一といっても異議を唱える人はいないでしょう。

「ローテの斎藤武さん」と枕言葉になってしまっているくらいです。
そのような斉藤さんのバラ生産の根底に流れる哲学を探りにいざ潜入です!

圃場を入るとするに目に入ったこの白いブロック。

これは何ですか?
「ロックウールだよ」
ロックンロールではなく、ロックウール(用語レベル★)です。くれぐれもお間違いのなきよう。
ロックウールとは玄武岩を砕いた上に焼いて作ったスポンジ状の人工培地です。
ロックウール栽培(用語レベル★)とはこれに苗木を植え、養分を含んだ水に浸けて栽培する方法です。
充分な養分を与えられると共に、根にも空気が行き渡りやすいので、生長が早いというメリットがあります。

このロックウールを使うことによって、それまで土耕栽培だったバラ生産に革命が起きました。
改植も養分コントロールもロックウールのお陰でスイスイ。
斉藤さん、バラとの出会いは何かきっかけがあったのでしょうか。

「大嫌いだったんだよぉ、農家がさぁ。サラリーマンに憧れてねぇ」
なッ∑(゜◇゜;) ナント!農家が嫌いだった・・・なんて。
ストレートッ!!
「うちの親はイチゴをやっていたんだ。
昔から“農家の長男は家を継ぐものだ”という共通認識があって、親に言われなくてもやるもんだという暗黙の了解のうちに農業高校に進んだんだよ」
でも農家は嫌いだし、イチゴは絶対やらないと思っていた斎藤さんが選んだ道はなんとコチョウラン。

え?コチョウラン?(._.)
バラじゃなかったんですか?
「そう。コチョウランを専攻したんだ。2年研修したのもコチョウランの生産だった。
でもいざやろうとしたときに初期投資が高くて少しためらいがあったんだよね。
そこで卒業する年に神奈川県の浜田バラ園さんに見学に行かせてもらったんだ」
浜田バラ園さんとは泣く子も黙る日本が誇る屈指のバラ生産者さんです。
小欄でもなんと第1回にお邪魔させていただいております。
「浜田さんのバラを見て“スゴイ!”と思ったことと鮮明に覚えているよ。
それまで切バラの圃場を見に行ったことがなくてね、壁のように両脇にドーンッ!と立つバラの株がすごく印象的だったんだ。
コチョウランと違って収穫までのサイクルも早いし、“すンげーなぁ、バラもよぉ”と思ってさ、ランからバラに切り替えることに決めたんだよ」

ご自身でそう決めたとき、お父上は何とおっしゃったのですか?
「そんりゃもう大反対だよ。栃木県に花で成功している人はいねがったからね。
栃木で農業するっつったら、なんといってもイチゴかトマトなんだよ。それを花作るってったら、もう変わり者扱いだよ」

その反対を押し切ってバラを作り始めたわけですね?
「あくまでも強引にね(笑)。
基本的には親と同じことをしたくない。
だから息子にも反対してほしかった。私と同じことをするのではなく、何か別のことをしてほしかったんだよ」
こちらがご子息の裕充(ひろみち)さん。斉藤さんの後継者です。

あ!間違えたッ!ヤバ!(p・Д・;)アワワ・・・
こちらはお孫さんの“いしづかようと君”でした。
すみません。ウン探としたことが!
改めましてこちらがご子息の裕充さんです。

↑もちろん左側の方ですよ♪
これは頼もしい!
「息子にはいつでも辞めていいよ。サラリーマンになれぇって言っているんさ」
斉藤さんご自身がやっていらしたことをご子息が継ぐということは、嬉しいことではないのでしょうか?
「自分で反対してやり始めた方が、途中で絶対ぶんなげねぇからいんだよ。
その方が諦めないで最後までやるんさ」
“信念”ということでしょうか。
「私もバラを始めて6年はダメだったね。切れないし値段はとれないし、感激を覚えた浜田さんのバラのイメージには程遠かった」
今と何が違ったのでしょう?
「やることやっていなかったんじゃないかな。やっている内容も甘かったんだよ。仕事をしていないっつうことだよね。

バラの生産は手間をかけないとダメ。昔は理屈だけで行動が伴っていなかったんだ。今は手間をかけるようになってバラを見る時間が長くなったよ」
最初の6年のうちに辞めようとは思わなかったのですか?
「挫折しそうになったことはいくらでもあったよ。技術も追い付かないし、稼げないし。
でも女房の協力と意地だけでやってきたんだ。
好きでやれれば一番いいんだけど難しいね。今の仕事が好きかっていったら、好きと言えない。まだプロになっていねんじゃねぇ」
日々バラと向き合いながら40年、まだプロになっていないのではないかとご自身を客観的に見る斉藤さんは、本当に仕事に厳しい方です。
ご自身で決めたからこそ、その選択に最後まで責任を持ち、日本一のローテという賞賛を得ても尚、ご自身のバラに満足することなく更に上を目指しているのです。
“入り(始めたきっかけ)が甘いと生産は続けていけない”と斉藤さんは断言します。
そのくらい生産は厳しく大変なものだということが斉藤さんの一言一言から伝わってきます。

生産に欠かせない資質とは何でしょうか。
「観察力だろうね。鋭くないといけない」
どこを見ているのですか?
「まず立ち姿全体を見て、バランス、花の大きさ、茎の1本1本や葉の1枚1枚に至るまで。
そして次に触ってみる」
何かおかしいと思ったらどうするのですか?
「ロックウールのpH値とEC値(※)(用語レベル★★★)をすぐ測るんだ。これでね」

※EC値=Electric Conductivity:電気伝導度
溶液の中に溶け込んでいるイオンの総量を示す値。単位はミリジーメンス(mS/cm)。
イオンの量が多いと電気が伝わるのに負荷がかかりEC値が高くなる。
ロックウールの養液栽培において、肥料分が多くなると電気が多く流れる性質があるので、肥料分のコントロールにEC値を目安にする。
この数値が高すぎると、養水分の吸収が悪くなり、延いては根の張りも悪くなり、植物が傷むことが懸念される。
なにやら体温計のようなものが出てきました。
これをロックウールに挿してpH値とECを計測します。
「それで肥料や水の量を調整して、正常値に戻す。
pH値は5.5-6.5、ECは2くらい。
それからまた立ち姿全体をよく見て、触っての繰り返し」
それでもきちんと直らないことはあるのですか?

「あるよ。その時は私の頭が三角になっちゃう。
バラは何年経ってもわかんねぇな」
斉藤さんが10年後に目指すものは何ですか?
「浜田さんに近いイメージのバラを作れるようになったらいいと思うね。
まだ全然追い付いていないけど」

増え続けるバラの輸入品について
2010年度のバラの輸入品率はおよそ20%。(数量ベース)

大田花きの取り扱いの中でも輸入品率高く、葉物、スプレーギク、カーネーションに次ぐ第4位。
このような現実を横山さんはどのように見ていらっしゃるのでしょう。
「“脅威”は感じないよ。
ケニアやインド、アフリカの生産者には日本のエンドユーザーのことまでは分からないでしょ。
例えば外国の人にソバとうどんの違いが日本人ほどよく分かると思う?」

うーん。。。c(゚.゚*)。。。わからないでしょう、恐らく。
よほどの日本フリークでない限りは、全て日本の麺類は全てジャパニーズ・ヌードル!で片付けられるだろうて。
「あるいは桃と梅、梅と桜の違いが分かると思う?」
まず無理ですね。そうか。
「でも日本人ならわかるよね。日本人には言葉を尽くさなくても分かり合える独特の感性とか世界観ていうのがあるでしょ。
日本のマーケットに出荷するには、この感性や価値観を分かっているということだけでも大きな強みだと思うんだ。
それにエンドユーザーの声を聞きたいときにはすぐに聞ける。エンドユーザーが近くにいるというのはこれも一つの大きな利点なんだよ」
輪(りん)が大きくてボリュームがあるだけが良い物ではありません。もちろんそれらも評価に値するのですが、日本人はそれ以外の多くの評価軸をたくさん持っているわけです。

横山さんはボリューム一本勝負ではなく、もっと精細なところで差別化しているのです。
「輸入品については、こっちでできないものを受け入れればいいと思っているんだ。
全体のパイの食い合いではなく、新しいものをどんどん提案してパイの大きさ広げてその中で棲み分けをしていくことが共存の道だと思っているんだよ」
斉藤さんも「バラは価値を決める構成要素が多く、許容範囲が広い」といいます。
花びらの形、色、輪のサイズ、香り、しなやかさ、展開するとともに変化していく表情。
バラはとても変化に富む花で価値基準が多様なので、輸入との差別化も有利なのです。
ヨコヤマ薔薇園、斉藤武さんの格言!
・ 初心貫徹。
何を作るかは自分の選択。その選択の責任を全うし、生産を究めるべし!
辞めたくなっても信念が支えてくれるでしょう。
・ 市場や生花店さんと絶えずコミュニケーションを取り、移りゆくマーケットのニーズをタイムリーにつかむべし!
マーケットに近いところでの生産は大きなアドバンテージ。
・ 消費が日本人なら生産も日本人であれ!
日本人の豊かで繊細な感性を理解できるのは日本人だからこそ。
守備範囲が異なる海外品とはうまく棲み分けよう。
消費者の皆様へひとこと
<菅原文太チックな斉藤さんより>

「私は皆様にリピートしてもらえるような花を作っていきたいと思っています。そのためには最後まで咲くバラをコンスタントに供給するようにしています。使ってもらえるかどうかは結果論。
皆様がご自宅で花を飾る場合には、その場所だけ配慮していただきたいと思います。エアコンの風が当たるところや直射日光が当たるところはせっかくの花の寿命を縮めてしまいますので、それだけは気を付けてください。
お花屋さんは延命剤を付けてあげてください」
<ダンディズム横山さんより>
「日本人男性は一般的にはシャイですが、奥様のお誕生日とか記念日とか是非バラを贈ってください。
バラの花保ちは限られていますが、バラ贈りの効果は長持ちします。費用対効果抜群です!」
横山さんのところは?
「毎日あげているから、効果は一生続くさ❤」
キャー(≧∇≦)!!!
なるほど、だからこそ(?)この風貌。

ダンディやわ~゚・:,。(✿ฺ❂ฺ◡ฺ❂ฺ)゚・:,。 (←しつこい)
この横山さんが毎日奥様にバラをあげて効果絶大というのは説得力があります。
※文中の用語レベルはウン探が勝手に判断した用語の難易度です。
★→基本中の基本!是非ここでマスターして♪
★★→花き業界常識の範囲内です。
★★★→ちょっとレベル高め? 頻出ではないが覚えておくといいかも。
■■■おまけ■■■
ところで・・・み・な・さ・ま♪
「バラ」の語源てご存知ですか?
なんと、バラはイバラの「イ」が抜け落ちてバラになったのだそうです。
イバラはトゲのある木の総称で「茨」「棘」「荊」などと書きます。
アバラではありませんよ。イバラです( ^ー゜)b イバラ
イバラのイが取れて花のバラ。
アバラのアが取れるとバラ肉のバラになります。
だいぶ微妙な違いではありますが、実際のモノは全く違いますのでくれぐれもご注意を!

ということで、小欄の読者のみなさま、本年も1年大変お世話になりました。
蛇足半分の回が多いにもかかわらずこのコーナーが続いているのも、みなさまが支えてくださっているお陰です。
深く深く感謝申し上げます。ありがとうございます。
2012年もこのコーナーを楽しんでご覧いただけるよう精いっぱい取材してまいりますので、どうぞ引き続き宜しくお願い申し上げます。
また来年お会いしましょう。
I wish you a merry merry christmas and a happy new year!
See you next year!!!

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ホントに大88回になってしまいました^_^;アハハ
今回は葉物をご出荷頂いている3軒の方からお伝えしてまいります!
その1:川崎グリーン
その2:日の出花壇
その3:沖山農園

まず1軒目。
川崎グリーン・川崎朋喜(かわさき・ともき)さん(58歳)。
知る人ぞ知る八丈島の名プレーヤーです。
都内でもトップフローリストさんたちが認めるスーパークオリティで葉物をご提供くださっています。その定評ぶりは同じ利休草の注文でも「川崎グリーンさんの利休草!」とご指名があるほど。
こちらは2011年11月某日の大田花きの利休草の注文画面。
↓赤字は「川崎さんの利休草じゃないとダメ!」というリクエストがあった印です。

花物でもなく、脇役としての出番がほとんどでもある利休草に対し、頑固なまでにカワサキ利休を譲らない。
なぜカワサキ利休でないといけないのか。それは他産地と明らかな差別化ができているからです。
その特徴は・・・
① スッとホッソリ 繊細仕立て
② でありながら、ラインは先端までピンとまっすぐ
③ でも曲げたりねじったり、しなやかな動きを出せる
④ しかも小葉で葉が詰まっている
⑤ おまけに先の方まで葉が展開している
など、まるで新体操の選手を形容したような言葉が並びます。



ピンッ!
その秘密に迫ってみましょう。
こちらが利休草の圃場です。

利休草は殆どがフラワーネット(一定の高さで碁盤の目に張った網)を使って栽培されますが、
←フラワーネット参考写真(産地ウンチク探検隊vol.83香花園さんで撮影したものです)
川崎さんは上から糸で吊って、利休草の伸長を誘導しています。
新体操選手のような細くてしなやかなラインを作れる理由の一つはここにあるようです。

「昔、スマイラックスを作っていてね。その応用で利休草も吊って作ることにしたんだよ」
ふむふむ___φ(゚ー゚*)メモメモ・・・その心は??
「“利休草は立つものだ”(手で持ったら支えがなくてもピンと立つということ)という概念があったんだよね。
だから一般的にはフラワーネットで作るんだけど、私はスマイラックスを作った経験からしなやかで柔らかい利休草を作りたいと思ったんだ。

自立するかしないかは問題ではない。
まっすぐでありながら自由が利く細くて柔らかい利休草。デザイナーさんも垂らして使ったり、巻き付けたり、もちろんアレンジにも使える。その方が利休草の活躍の場が広がるでしょ。
フラワーネットでは立つかもしれないけど、繊細さはなかなか出ないし、逆に先端が曲がっちゃうんだよね。でも上から吊れば頭の先までピンとするからね」
利休草に対する新しい概念の提案です。
スマイラックスの栽培からヒントを得られたのですね。
「それからうちは密植栽培なんだ。半坪(90cm×90cm)に8本くらい植える。

フラワーネットではここまで密植できない。小葉で繊細な利休草を作るためだよ。
8株のうち一度に同じタイミングで芽が上がってくるのは4株くらいね。その4本を切ったころに別の4株から芽が上がってくるから、交互に収穫するような形になる。フラワーネットに生産性は半分くらいに落ちるけどね。通常は1株から10本切れるとしたら、密植の方法では5-6本くらいかな」
それでも川崎さんは品質にこだわり、新しい利休草の開発に挑みます。
よく見るとなんだか川崎さんの利休草は少し違います。
ご覧の通り上の方の葉までしかり展開しているのです!

見てください、↑この葉先!
普通は上から2-3段はまだ葉が開いていないものですが、カワサキ利休はこの時点ですでに上の方まで展開していますし、出荷の際は一番上まで展開します!
しかも、先端がないわけでなく、先端が持つしなやかさはそのまま残しています。
利休草でこの表現力を出せるのはさすがの技術です。
あ!電照発見!

川崎さんも共選の隆さんと同様、夜業をされるのでしょうか。(+_+)ミナサン、大変ジャ・・・
「電照栽培するんだよ」
え?利休草で電照栽培??σ(・・?)..ヘ(~・・)ゝホェホェ????
電照栽培というとキクを思い出してしまいますが、よもや川崎さんのところでは電照菊ならぬ、“電照利休草”を栽培されていらっしゃるのでしょうか。
「そうそう、電照利休草。電照があるからこそ11月から良いものを出荷できるんだ。」
(゚ロ゚;)エェッ!? どういうことなのでしょうか。
川崎さんのところでは9月下旬から電照を始めます。
日暮れから夕方から8時くらいまで、12月から1月の日が最も短い時で最大4時間ほど電照します。
つまり日長(にっちょう)を長くするということです。
う~ん、日長を長くするって??(゚ー゚*?)オヨ?
「いろいろと研究してきたんだけど、利休草は日が短くなると休眠体制に入るんだよね。だいたい8月の盆明けくらいからなんだけど。
休眠体制に入られちゃうと、生長点が止まって出荷できなくなっちゃうんだ。
だから眠らせないように電照を使うというのが一つの理由」
生長点が止まった利休草はこのようなものを指します。

あ、ほんと。「先」がない。これが生長点が止まった状態なんですね。
カワサキ基準でいったら、これはもう出荷しません。

「もう一つの理由は、品質向上のためね。
夏場の暑い時には意図的に伸ばしっぱなしにして、1mくらいのひょろひょろにしておく。伸ばしっぱなしのボーボーにね。
そのために電照栽培をして生長が止まらないようにするんだ。
利休草の特性上、切らなければ次の芽は上がってこない。

市場には30-40cmくらいで出荷されているものもたくさんあると思うけど、実は短いうちに切ってしまうと、株が太ってくれないんだ。
だけど、ボーボーに伸ばしているうちは株がだんだん肥えてくる!
秋のブライダルに向けて良い利休草を作り込みたいから、ボーボーのままにして我慢して我慢して、電照を使ってでも生長を止めないようにして、9月に一気に刈り込んで丸坊主にする。
株が肥えたところに出た芽は本当に良い物だよ。それを育てるためにまた電照を使うんだ」
なるほど、これまた面白いやり方ですね~。

・ 利休草は短いうちに切ってしまうと株が肥えない
・ 今出ている芽を切らないうちは次の芽が出てこない
という特性を理解して、うまく活用した方法ですね。
「ためる・・・切らずに我慢、我慢!!(`^´;) 」→
「(株が)肥える」→「(良い芽が)出る」→「繊細に、しかしピンとまっすぐに育てる」→
「切る」というのがカワサキ流の独特な手法です。
川崎さんのお師匠さんに当たる人と一生懸命研究を重ねて、今の方法に辿り着いたといいます。

「夏場には伸ばしっぱなしにして、強制的に株を休ませる。休んで株が充実したところに良いものが出てきて、秋の需要期に向けて吊り糸で育て上げる。
手間はかかるけど、利休草の場合はこの(切るタイミングや品質を大きく)“コントロールができる”ってのが面白いね~」
利休草はビャクブ科という一般的にはなかなか耳慣れない植物のグループに属しています。
このグループの仲間を見つけるのは花き市場でも難しい個性派の逸品です。
中国原産でビャクブは「百部」と書いたようですが、こちらもまた園芸最盛期であった江戸の享保年間に中国から日本に渡来しました。
それを他の植物を生産した経験と日々の研究から、個性派の中の個性派(“the unique of the uniques”とでもいうのでしょうか)を生み出し、独特のカワサキワールドを作り出してしまったといえるでしょう。
肉厚であることと葉の節間が詰まっていることもカワサキ利休の特徴です。
「水を切ることがポイントなんだよ」

え?水を切るんですか?こんなにツヤツヤしていて、しかも水も一見下がりやすそうなくらい柔らかな感じなのに?
「そうそう、水やりは完全に土が乾いてから。やり過ぎると葉と葉の間が伸びすぎちゃうんだ」
ほんと!
よく見ると地面には干からびた虫チャンが・・・チーン(+_+)!!
そこまでカラカラにするなんて、ナンダカ意外。

「そのためには土壌もやせていて水はけがいいことが重要なんだ。
そのほうが小葉で締まった良い物ができる。
ココは火山灰の堆積層だからちょうどいいんだよ」
園芸に取り組もうと思ったら、何かと肥沃な大地であることが条件かと思っていましたが、“やせている土地の方が好都合!”なんてこともあるのですね~。
これぞ“生産マニュアル・オブ・ザ カワサキ利休”と言わんばかりに栽培の秘密を教えてくださいました。
がっっ!みなさん、これはココだけの秘密ですよ~d(‐x・≡)ナイショ×ナイショ
あら?みなさん、よく見るとこれら利休草の違い、わかります?


なんだか葉数が違っているような・・・3枚葉、4枚、5枚!
そう、1段から展開する葉の枚数が異なっているのです。
3枚葉も多い中、川崎さんのところにはは5枚葉のものまであるなんて!
続いてコチラは丸葉利休草。

通常の利休草と全くテイストが違いますね。
この丸葉利休草がまた小葉できゅっと締まっていて、かわいいッ!(≧∇≦)
「丸葉小葉利休草」って感じですね!
たまたま見つけたものを固定して、出荷しています。5枚葉のものも固定して将来出荷できるように準備しています。
なんだか川崎さんの圃場は、次から次へと新しいものが生まれてくる面白ポケットのようです。
いえいえ、生み出しているんですね、川崎さんが( ^ー゜)b
利休草のほかにキキョウランやジャスティシアなどを主に3種類を栽培しています。

以前はグリーンネックレスやスマイラックス、アイビーなどを作っていらっしゃいましたが、ご夫婦お二人でされているため、新しいものを始めようと思ったら栽培品目の整理も必要になってきます。
マーケットから「何か新しいものない?」という新商品に対するニーズがとりわけ高い葉物の特性に気付いていた川崎さんは、ひとつの品目に留まることなく、常に新しいものを求めて生産してきました。
「(“出荷のための生産”ではなく)“勉強のための生産”としていろいろなものを作ってみる」という意味もあるといいます。
利休草の栽培もフラワーネットを使わずに上から吊って栽培しているのもスマイラックスの栽培経験があったからこそ。
ロベ一筋、レザー一筋の共選の皆さまとは対照的な選択ですが、ご両者ともそれぞれの選択でマーケットから評価を得ています。
あ、チョット、チョット!!みなさん、これをご覧ください。

利休草の花です。
ハ・ナッ!

アタクシ、ウン探検88回目(しつこい?)にして初めて利休草の花にお目にかかりました。
(*^-^*)ラッキー!
よ~~~~くご覧ください。このような色形をしているのですね。
では香りは?クンクン( ̄●● ̄;)
うヴェぇ!くちゃい!
勢い余って表現してしまえば“くさや風フレグランス”です。
しかし、土壌に含まれる成分の匂いなどが影響している場合があるようなので、純粋に利休草の香りと早合点して濡れ衣を着せてはいけないようです!
良い香りかどうかかは別として、フルボディな濃厚な香りでございました^_^;(言い直し)
「ウン探さん、“ヒッピーとスクエア”って知ってるかな?」と川崎さん。
はてσ(゚・゚*)ンート・・・?
“トムとジェリー”ならかろうじてわかりますが。。。
「ヒッピーはあのヒッピーね。
放浪的で型に捉われない自由な感じのヒッピーと四角い堅物なものの象徴でスクエア。
アナログとデジタルにも置き換えられると思うんだけど、進み過ぎたデジタルの世界から自由な発想は生まれないという言を残した人がいるんだ。私もそう思うよ。

ヒッピーかスクエアかといったら、私はヒッピーでね、いつも新しいものを生み出していきたいと思うし、面白いことにわくわくするんだ。
仕事は面白いと思うこと!これがいつでも基本なんだ。
今の仕事も面白いと思ってどんどん新しいことにチャレンジしているよ。
この“面白い”がなければこんなしんどい仕事やってられないよ(笑)」
→>>>>-(゚ロ゚)→ズキューーーン!! 真実を衝かれた瞬間でした。
川崎さんの花の生産の仕事だけでなく、私たちが関わる仕事全てにおいてそういえるでしょう。
もちろん“面白い”だけでは成り立たないかもしれませんが、少なくとも“創造的”な仕事に携わる人であれば、仕事をしていて“面白い”という感覚なしではやっていけません。
また、仕事は多かれ少なかれ創造的な要素を持っているものでしょうから、仕事をする人はすべからくヒッピー的視点を忘れず、どこかに“面白い”を見出さなければ発展しないのではないでしょうか。
なんだかカワサキ利休の作り方を通して、仕事の奥義を教えられましたm(_ _)m(脱帽)。
ふと、どうしてこのような川崎朋喜さんという方がここに誕生したのか不思議になり・・・アレコレ詮索してみちゃいました(*゚ー゚*)
※川崎さんのことをご存知の方はたくさんいらっしゃるかもしれませんが、この情報は他では決して知りえないウン探ならではの極秘情報です!
デカシタ゚。(*^▽^*)ゞ!!
川崎さんのお生まれは実は徳島県なのです。

小学校4年生の時に園芸技術センターにお勤めだったお父上のお仕事の関係で八丈島に引っ越してきました。
同じ“島”つながりではありますが、言葉は通じず“まるで外国”だったと当時を振り返ります。
東京(本土)の高校に行ったときは、花をやろうとはつゆとも思っていませんでしたが、何をやろうか考えたときにお父上のお姿しか思い浮かばず、選んだ道は農業専門の大学。卒業後は造園会社へ。
造園会社の勤務であちこちの農家さんを訪問しているうちに、「あれ?作っている方が面白い?」という思から、自然に何かを作りたいと思うようになりました。
そこで鉢物の生産会社に転職し、次から次へと現れる面白い植物に興味を持ち10年勤務。
このときの10年の経験が川崎さんにとって仕事の原体験となっているといいます。
その後は八丈で5,000坪を借りてレザーファンからスタート!現在に至るというわけです。
「独立してからは、いーろんなものを作ってみて、面白いと思うものを出荷したら結果が良かった/ダメだったの繰り返しだよ。
面白いからこれからも色々やりたいよね」
花き業界の中での葉物の位置付けをどのように見ていますか。
「以前よりマーケット全体が葉物に興味を持つようになってきたから面白いよね。
葉物は“単なる添え物”から、全体の中のエッセンスとしての存在が上がってきたでしょ。花屋さんが楽しみにしてくれるようになったし、使ってもらえるようになったから嬉しいよ。
私も面白がってあれこれ出荷するしね。自分の商品がどのように使われているのか見るのが一番楽しみだよ。ブライダルフェアとか本当は見に行きたいんだけどね」
仏教的な表現ですが、人の心はコロコロ変わるから「ココロ」というといいます。
そのココロの集まりである生活者のマインド(気持ち)が流行を作る。だから流行はコロコロと変わっていくのが当たり前。
とりわけ嗜好性の高い花き商品は、流行に影響され変化するスピードが速く、特に昨今の葉物に関しては要求の変化のスピードが加速しているように感じます。
フローリストさんたちの新規商材の開発要求レベルも高く、次から次へと「もっとない?何か新しい葉物ない?」などと言われる毎日。だからこそ川崎さんはひとつの葉物生産に留まることなく、マーケットに合わせ作るものを試行錯誤し、作り方を試行錯誤し、日々研究を重ねているのです。

生まれ変わったら何をしてみたいですか?
「結局グリーンに戻るかな。違うやり方で同じものを作ってみるかもしれない。
一生勉強しながらも、試行錯誤が続くよね」
川崎さんにとってグリーンとはそれほどまでに奥の深いものであり、人の一生はやりたいことをやりきるには短すぎるということなのでしょうか。
「(グリーンに)戻る」とおっしゃっているところからも、葉物生産がご自身の天職であると認識されていることがよく分かります。
一生勉強、マーケットに支持されているにもかかわらず、まだ先を見ていらっしゃる。
これからも川崎グリーンさんは面白いですよ!これは注目に値します!!!
その2 日の出花壇
こちらは日の出花壇の菊池義郎(きくち・よしろう)さん。

熱帯植物をたくさん所有されていて、“日の出ミックス”という名前で変りダネの葉物をミックスで出荷されることでマーケットのファンから支持を集めています。
その日の出花壇は、ちょっとした山道をぐるぐると登って行ったところにあります。
“日の出花壇”といってもただの“花壇”じゃあないんです!
緑に囲まれた山道を登ってちょっとエキサイティング!

そんなエキサイティングなドライブ中に、ふと目の前に現れた白い巨大な風車。

八丈島は二つの火山で出きた島だけに、温泉地でもあります。風の強い日には硫黄の臭いがすることもあるのだとか・・・。
その特性を生かして、地熱発電を行っているのです。
この地熱発電を使って、義郎さんの圃場はまるで「熱帯植物園」!



東南アジアの山に分け入っているみたいです!


なにかあるかって、リストアップすればきりがないのですが、ご覧の通りドラセナにジャスティシア、キキョウラン、カラテア、シンゴニウムに斑入りシンゴニウム、ポリシャスに斑入りポリシャス、ポリポジウム、シペラス、モンステラ、セローム、・・・・あ、もういいですか?なんでも1,000種類くらいあるみたいなので、キリのいいところで切り上げましょう。












セロームだって、キチント大きくなっちゃって。
葉の真中に載せてある白い物が長さ13センチのボールペンです。

こちらは八丈名物アシタバです。

クラマゴケ 紅葉しています・・・

義郎さんはコレクター的な要素が強いのですね。
コチラはモンステラの花!

なんだか熱帯で巨大化した水芭蕉の花のような形をしています。
あーーーーッ!なにか昔のハンドマイクのようなものを発見!
コレ、何でしょうか?

「モンステラの実だよ」
きょえーーー!!w(゚o゚*)w
モンスの実ってこんな形をしているのですね!
モンステラの語源はラテン語の“モンストラム(monstrum)”(=驚異的な出来事、不可思議なこと、怪物)で、怪物の「モンスター」とその語源を同じくしています。
モンステラはまさに植物界のモンスターなのです!
このモンスター、なんと実(み)を食べることができるのです!

コチラがその可食部にあたります。

う~ん、なんだか名前に似合わずとても甘くて良い香り。
お味は?( ̄~ ̄ )モグモグモグモグモグ
・・・
おいしい!
そうですねぇ、パイナップルの味に近いでしょうか。
パイナップル6割、バナナ3割、ドリアン1割弱が混ざったようなお味でございます。

ドリアンが苦手な方もドリアン独特の強烈な臭いはないのでご心配なく。
そしてなんとこの甘い果実からは、お酒もできてしまうのです。
こちらがモンスのお酒。とても希少なものです。

杏露酒のような濃厚でアマ~イテイストです。クセもなくおいしいですよ。
知らずに飲んだらモンスの果実酒であることはまずわからないでしょう。
このように葉は市場に集荷され、その実は食べたりお酒にしたり、その七変化ぶりはまさにモンスターです!
義郎さん、八丈島でこんなに熱帯植物を集めて、なんだかライフワークのようになっているように見えますが、何かきっかけはあったのでしょうか。
「小学校のころね、自然が好きな先生がいてよく山に連れて行かれたんだよ。
そこに食虫植物のモウセンゴケを見つけてね。それをいじり始めたのが最初なんだ」

食虫植物が最初だったんですね!
八丈の山に入ったら面白い植物はたくさんありそうですが、義郎少年のアンテナがとりわけ食虫植物に反応した理由は何だったのでしょうか。
「学校で教えてもらう“食物連鎖”っていうのは植物が三角形の一番下にあって、その上に昆虫とか鳥とかがいるわけでしょ。
でも食虫植物を見たときは
“学校で教えているのと違うじゃないか!”∑(゜◇゜;)
っていう驚きがあったんだ。
“草が虫を食べるなんてどういうこと?食物連鎖の定理が間違っているじゃないか”って思って先生に聞いたら、
“あまり研究されていない分野だから、自分で研究しなさい(-.-)”って言われてね」
それから義郎少年は食虫植物にはまっていったというわけです。
食虫植物のためなら物々交換をしてでも新しいものを手に入れようとしたほど。
今は熱帯植物園を開くまでに。
こちらが義郎さんが管理する植物園。


食虫植物はもちろんのこと、
パパイヤからカカオ、バナナなどたくさんの実を付けた樹々がありました。


「八丈島は年間平均気温が18度で温暖でしょ。熱帯植物が枯れることもないんだ。
種苗会社がアメリカ大陸などから色々持ってくるからね。それを預かっては面白がっていろいろなものに取り組んできたんだ」
先ほど川崎さんに八丈は火山灰や固まった溶岩などでできているから・・・と教えていただいたのですが、アメリカ大陸や熱帯の植物がそのような土壌で育つのですか?(*'へ'*) ウーン
「八丈島でも南端に位置するこの中之郷地区というのは園芸発祥の地でね、ここだけは実は土があるんだよ!」
なんと、園芸にはもってこいの恵まれた場所だったのですね。
植物少年が生まれるわけです。
川崎さん曰く、“義郎さんの前世はなにか山ん中の動物だったかも・・・”というほど自然を愛してやまない方。まさに、八丈島に生きるべくして生まれてきた八丈に宿る自然の神の申し子とでもいうのでしょうか。
八丈島のフラワーピーポー見つけました。
その3 沖山農園
沖山農園の沖山常正(おきやま・つねまさ)さん。
ドラセナの育種家さんで、国内のドラセナの育種数は日本一と言われています。

以前は漁業に従事され、“機関長”や“無線長”などなんだかすごい任務を引き受けていらしたようですが、35歳で花の生産に飛び込み、30年ほど前からドラセナの育種を始めました。
理由は“ドラセナの美しい姿に魅せられて”。ウフ≧(´▽`)≦

世の中に排出したドラセナの数は15種類にも及びます。

「昔はドラセナもアトム(赤)ばかりだったんだよね。
このアトムを名古屋の市場から仕入れて、遮光のためにネットをかけたり、青(緑)が出ますようにとか願をかけたりしていたんだ(笑)」
ネットをかけたり願をかけたりしていたら生まれたのがアトムの変異の“ドリーミィ”で、ピンク色の縁取りが入ったものです。
このドリーミィを皮切りに沖山さんが次々と新しい品種を開発していくことになります。

「ドラセナはね変わったものがあったから植え替えてみると、育って行くうちに元の種類に戻ってしまったりするんだ。
そんなことを繰り返して、変わったものだけを残して徐々に株を増やしていくんだよ」
そうして生まれたのが、沖山品種のアトムホワイトやスーパーホワイト、スーパーメロディやミディタマコ、メロディタマコ、ホワイトタマコなど。
う~ん、それにしても品種名によく登場する「タマコ」ってなんですか?
「タマゴ」
でもなく、「タマコ」って??
「私の奥さん」![]()
え!あ!そうでしたか!奥様のお名前だったんですね!
これまた失礼いたしましたm(。_。;))m ペコペコ…
「苦労かけたからね」
そうでしたか~。
と言っているところに「ど~も~」!と背後からどなたかが。

あ、はじめまして!失礼ですが・・・(゚ー゚;A
「沖山玉子です」
オキヤマ・タマコさん?
た、たまこさんって、よもやあのタマコさんのご登場??
そうです!コチラがニュータマコの玉子さん。
ホンモノです。

本当に玉のように美しいその笑顔は、つややかなドラセナの姿を想起させるにふさわしい☆
(✿ฺ◕ฺ‿◕ฺ)ウンウン♥
沖山さんがドラセナを通して玉子さんに愛情と感謝の気持ちを注いでいるのが良く分かります。

ドラセナの美しい姿に魅せられて育種をはじめ、付けた名前は奥様の名前。
いやぁ~、なんだかのろけられちゃったかんじですねぇ~ヾ(^◇^;)ゝ エヘヘ
いや~、それにしてもご覧ください。この沖山さんの施設!
この柱、丸太でできているのでしょうか?

「電柱を使っているんだ。だから電柱づくりっていうんだよ」
デッ、電柱??グルグルグルグル(◎_◎) ?
「およそ40年前のものでね、町の電柱を再利用しているんだよ。
他の角材は八丈富士の杉の丸太。
台風に備えて頭に当たらない程度に低く作る必要があったんだ。この電柱づくりはこれは天然記念物にもなっているんだよ。
今の鉄骨の施設であれば天井が高くても大丈夫なんだけどね」
ほほぉ!
これは大変珍しいものを見せていただきました。ありがとうございます。
そしてココ沖山農園さんからもドラセナの新品種のみならず、次々と新しいものが出荷されています。
一部の例ですが、シルバーに輝くミリオや斑入りのルスカスなど市場ではまだ定番化されていない商品がたくさん!

八丈島の個選の生産者さんたちは、葉物の新商材開発という点で無限のポテンシャルを持った方たちなのです(。→‿◕。)☆!
これからも八丈の出荷品目から目を離せません!
訪れたその日は沖山さんのご自宅でちょうど月に1度の「切り葉・切り花勉強会」の日でした。ラッキー♪

↑立ってお話しされているのが日の出花壇の義郎さん。司会進行役です。

生産品目や販売チャネルこそそれぞれですが、花きの生産に携わる方や学校の園芸関係の先生たちが集まり、毎回ひとつテーマに沿って勉強します。先生役は普及所の方。

この勉強会はよくありがちな「勉強会という名の飲み会」ではございません!
皆さん真剣に勉強されているのですよ!
質問も活発に出ていました。

八丈島の個選の方たちは決して孤立することなく、このように情報交換していたのです。
【八丈島 「チーム個選」の格言】
コロコロ変わる葉物のニーズに対応すべく、その品目の領域を超えて開発に挑むべし。
葉物の存在感は年々アップ↑ならば供給レベルも上げていかなくちゃ♪
トップフローリストのみなさん、八丈からデビューする葉物に注目ですよ~( ^―゜)b
【おまけ】
八丈島の地面をよく見るとなんだか土が黒いな~と思っていると、やはりそれは火山でできた土地だからだそうです。

砂浜といっても浜に砂はなく、岩でゴツゴツしています。


「ビーチの砂は別のところから持ってきているんだよ」と川崎さんが教えてくださいました。
コチラをご覧ください。
黒い溶岩が渦巻いています。

まさに“八丈富士が噴火して溶岩が流れ出し、海水に冷やされてそのまま固まりました”みたいな様相を呈しています。
この溶岩の堆積は4000年ほど前に噴火したものと言われています。
4000年も前に噴火したそのマグマの上にこうして立ってみると、八丈のこの土地でに流れた悠久の時や展開された歴史に思いを馳せてしまいます。
何千年経っても変わらないものの上で、今回の葉物個選の生産者さんたちはコロコロと好みを変えるマーケットに対応して生産を変えていくという、全く真逆なことをしているように思います。
しかし、違うのはそのスピードだけで、大地はゆっくりと変わっているし、むしろ個選の生産者さんの信念や花の消費者に対する思いは変わらないのかもしれません。
この八丈富士、最近の火山では1605年に火山灰をまき散らし、住民のみなさまにご迷惑をおかけしたようですが、現在は休火山となっています。
いま暫し、そのまま深い眠りにつきたまへ~。

八丈のありのままの自然を観察すると、やはり土がない。

タニワタリなどの植物はこのように岩場に根を下ろし生活しています。着生植物だからこそできる技。

というか、適者生存、このような植物しかここでは生きていけないのでしょう。
タニワタリは大きく放射状に広げた葉で空からの雨水を受けとめ、根に流し込みエネルギーの源としているのです。

名付けて「木の下園芸」。
木下さんの園芸ではなく、木の下の園芸。
露地でもなく施設でもなく、樹の下でいい塩梅の日照と風通しで、環境を整えて栄えていく植物のありようを、川崎さんはそう名付けました。
これが八丈島の園芸の原型なのだと。

【八丈島名物ダイジェスト】
鮮魚

島トウガラシ
刺身用のおしょうゆに入れて、風味を付けます。そのまま口に入れるヴェリーデンジャラス!!

さといも

魚の塩辛(画像なくすみません。皆様のイメージにお任せします♪)
八丈太鼓
これがまたすごいんだ。

丸い石でできた石垣(=大黒玉石垣)
これが積める技術を持っている人もだんだん減っているのだとか。

あしたばとその関連商品


くさや(なんといっても!)

自然

人
皆さんとても明るくて屈託なく、いい方ばかりです。
八丈に出張した朝、澄んだシーブリーズを体内に取り入れようと散歩をしていたら、黄色い帽子をかぶった小さな小学生が律儀に立ち止まり、
「おはようございます!!」
と大きな声で挨拶してくれました。
“立ち止まって”ですよ。これは私も我が身を振り返り、見習わねばと反省した次第です。
八丈富士/八丈小島
(今は無人島ですが、以前は人が住んでいました。弊社にも小島出身の社員がいました)

そして何より、八丈島の葉物をお忘れなく!


このような素晴らしい自然に囲まれて育ったら、情操豊かでしっかりした人に育つんやろな~。
あ、いた・・・(-.-) 八丈出身の人@大田花き

なんと大田花きではこの二人が堂々の八丈出身です。
しかもなんだかちょっと偉い席に座っている・・・さすが八丈が生んだ人材は違う。
【蛇足的ですが】
ん?八丈島の車のナンバーって何になるのでしょう??

気になって見てみました。

この通り「品川」でした・・・。そうですかぁ。都内でも湾岸地域は品川ですから、その管轄内ということでしょうか。
ちなみに衆議院の小選挙区は大田区や品川区と同じ東京都第3区になるのだそうで・・・なんだか大田市場のある大田区で日常を過ごす者としては親近感が湧きます~。
そんな八丈島特集でした。
・・・the end・・・
これまでウン探を一度も見逃したことがないというツウなあなたに聞いちゃいます(≧∇≦)
東京都下にある花の産地をいくつ言えますか?
このウン探も88回といえども東京都の産地をレポートしたのは1回か2回か・・・?
2つ以上言えたら、相当ス・ゴ・イ!
今回の取材先は東京都でも有数の花の産地!もちろんウン探も初上陸の地域です。
さてどこでしょう!?


ヒント:羽田から南下することおよそ300km、伊豆諸島の一つで、夏は多くのダイバーや釣り人たちが訪れる南の島!
正解は・・・・・

八丈島!・・・ってここまで引っ張っても、タイトルでもうバレバレですが^_^;
ウン探第88回は「8」つながりで、ここ八丈島からお届けしまーーーす!(*^^)vイェイ!

さて、八丈をディープに知る前に、さらっと一般常識をおさらいしておきましょう。
真中がくびれたこの形は、よく「ひょうたん形」に例えられます。
1960年代にNHKで放送された「ひょっこりひょうたん島」は、諸説ありますがこの八丈島がモデルだったとも言われています。
♪ひょっこりひょーたんじィーま~ぁって若い方々、分かります??
緯度にして九州の長崎、熊本周辺、更にずずーーーーっと西へ行けばヨーロッパより南の北アフリカ、昨今まで政情穏やかでなかったリビアの首都トリポリ辺り、アメリカ大陸ならロサンゼルスより更に南のサンディエゴに相当します。結構“南”よね~。
八丈富士と三原山という2つの火山によってできた島は暖流の黒潮の影響を受け、年間平均気温は18度、冬場の平均気温も10度と比較的温暖、年間降水量は東京全体平均の倍以上に当たる約3,000mmにもなる海洋性気候。日本有数の雨地帯といっても過言ではないでしょう。

森に入れば1年中濃い緑に恵まれ多くの野鳥が現れる。海に入れば亜熱帯の珍魚の宝庫。豊かな自然に恵まれた八丈島の面積約70平方キロメートル。東京都区で最も大きい大田区(約60平方キロメートル)と最も小さい台東区(約10平方キロメートル)を合わせたくらい。
人口約8,000人。ここでは“島内みな知り合い”って感じで、道路で誰かとすれ違うたびにご挨拶。
お名前も皆さん似たような苗字が多いので、ファーストネームで呼ぶのが八丈流。
そんな八丈島は、実は東京都下における花きの大産地なのです。
何を生産しているか。
もちろん高温多湿の環境ですから、熱帯系のものなら何でもお手の物なのですが、花き市場に出荷されているのはロベやレザーファンなどの葉物です。
いまや「“ロベの島”八丈」と言われるほどロベの生産は盛ん。
今回のウンチク探検隊では、なぜそれほどまでに有名な葉物の大産地が八丈島に生まれたのか、秘密を見てまいりましょう。
お邪魔したのは共選産地と個選産地。
いつにも増して記事が長くなる気配ぷんぷんなので、今回は前編/後編とに分けてお送りしたいと思います。スペシャルバージョンです!
まず前編は共選であるJA東京島しょ(とうしょ)八丈島支店。
早速ですが「島しょ」ってなんでしょ?
「島嶼」と書き、「嶼」は「小島」を意味します。
つまり“東京島嶼”といったら東京の小さな島たち。そのうち八丈島にある農協の支店がJA東京島しょ八丈島支店いうわけです。
こちらは八丈支店のレザーファン組合のみなさま。レザー一筋!の専業で他の農産物は作っていらっしゃいません。
組合員の皆様併せて500坪以上で生産しています。

お邪魔したのはレザー一筋21年の佐々木忠彦さんの圃場。2種類のレザーファンを生産しています。

え?2種類?レザーって品種の違いがあるの?と思われた方はなかなか鋭いですね。
市場に出荷されるときはその別なく全て「レザーファン」として出荷されますが、実は八丈のレザーは厳密に言うと2品種あるのです。

いや、しかしどちらがどちらなのか全然見分けがつきません!?(゚_。)?(。_゚)?アレレ?
分からなくてもいいのです(*^-^*)ダイジョブ!
見た目は殆ど同じの2品種は、日本に最初にやってきた在来種と“マイルド”という改良種です。しかもココ八丈島で育種されました。在来種の中から良い品種だけを選抜に選抜を重ねてマイルドが生まれたのです。
“良い品種”とは何かというと・・・
① 大きくてしっかりしているもの
② なにより胞子がつきにくいこと
レザーはシダ植物ですから、小学か中学の理科で習った通り、花を咲かせて実が成って・・・という方法ではなく、葉の裏に付く胞子を飛ばして子孫を増やすのです。
ですから、普通のシダの裏はこの通り胞子でぎっしり!

WOW(@_@;)!!見る人が見たら気持ち悪いと思うことでしょう・・・。
もしくは逆に「素敵」と思うかも?
一般的にはこの胞子がない方が受け入れられやすいので、胞子がつきにくいものを改良してマイルドが生まれたというわけです。
ですから、在来種の中でも胞子が付いておらず、きれいなものは現在でも出荷されます。
“切るタイミング”はどのようにみるのですか?
「まず色を見て、緑が濃いこと。
その次に触ってみる、まだ湿っていて柔らかい場合はまだダメなんだ。そういうのは色が少し淡いでしょ。これではまだ若いから、切った後に水を吸い上げる力が弱いんだ。レザーはシダ類だから水が好きでしょ。水が上がらなかったら致命的だから、ここを見誤ったらいけないんだよ。

(↑こちらは形は既に整っているが、周りの葉に比べて色がまだ淡い。これは収穫にはまだ早いということ)
そして、葉が固くて乾いていること。
それを手で切り取るんだ」
え?手??
手で切り取るんですか。疲れませんか?
「その方が作業が早くて効率がいいんだ。こうやってね!」

なるほど。作業性の問題ですね。
「だから腰が痛くなっちゃうんだよ」

これはなかなか大変じゃ(>д<。)
だから、皆様のお悩みは腰痛なのだとか。こうやって腰にサポーターを巻いていらっしゃる方も。
腰は「月」(にくづき=つまり「体」)に「要」(かなめ)と書きます。農家の皆様、くれぐれもお大事に☆
さて、良いレザーを見分けるポイントは?
「必ず表と裏からチェックすること。
表から見て左右対称なもの。そして今度は裏を見てさっき言ったとおり胞子が付いていないもの」


生産管理で気を付けていらっしゃることはありますか?
「冬場は最低気温4-5度が限界なんだ。霜が降りると若い葉はダメになっちゃうからね。最近は温暖化で施設内に霜が降りるということも少なくなったけど、油断できないんだ。」
そう。レザーにとってベストの管理は温度23度、湿度80%
・・・って結構蒸し蒸し蒸していますね~(;´д`)フー
夜温は14-15度程度が理想的。この昼夜の温度差がないと葉が締まらないのです。
しかし、それ以下の温度になるとやはり気を付けなければなりません。
レザーにとって理想的なこの環境は、実は世界でもコーヒーベルト(コーヒー豆の産地が集中している一帯。赤道を挟んで南北回帰線25度の間)の環境とほぼ同じなのです。
【↓コーヒーベルト】

実はレザーファンの輸入品もこのコーヒーベルトの国々から出荷されているのがほとんど。しかも赤道直下でも標高1,000メートル以上の所だったり、植物の栽培には大変恵まれた環境でレザーがじゃんじゃか生産されているわけです。
八丈島はもちろんコーヒーベルトには入っていません!そのようなハンディキャップの中、八丈のレザーも世界のトップレベルの品質を保っているのです。バラやカーネーション、トルコギキョウや球根類などなど(ありすぎて以下省略)の生産品質と並び、レザーにおいても日本のトップクラスは世界のトップクラスというわけですね。
こちら佐々木さんの奥様。大切な戦力です。

奥様にとってレザーファンは何ですか?
「敵であり味方である」
スパッと答える奥様。さすが、反応がいい。
つまりどういうことでしょうか?
「仕事は決して楽ではないので“敵”とも言えるし、精神的に救ってくれるものでもあるので“味方”ともいえる」
「敵」というのはご苦労が多いということが容易に想像されますが、恐らくは味方が前提なのでは?“味方、ときどき敵”といったところでしょうか。
そうでなければ、このようなりっぱな↓鉄骨の施設でレザーを作りませんよね( ^―゜)b

そう、八丈の皆様は鉄骨の施設でレザーを栽培されている方も少なくありません。
って、えーーーーぇえ!!(゚ロ゚屮)屮??!!
鉄骨はちょっとやり過ぎじゃありませんか?鉄骨の施設では作るのにもお金がかかるし、葉物生産で回収するにもなかなか時間がかかるのでは?
いえいえ、それが違うのです!
ここ八丈島は日本屈指の台風銀座に加えて、台風のないときでも強い潮風がビュンビュン吹き荒れる海洋性気候なのです○o。困ヽ(*゚Д゚*)ノ困。o○
だから通常の八丈の一般家屋は2階建てが少ない・・・。強風が吹くから。いや、“吹き荒れる”から。

昔はよく木造家屋の屋根を吹き飛ばされたのだとかΣ(゚д゚;)!
そのくらい強風が吹き荒れるので、ヤワな施設では飛んで行ってしまうのです。
それに、強風が吹くたびに「大丈夫かな・・・大丈夫かな・・・」という心労やストレスを考えたら、やはりこれは丈夫な鉄骨の施設を作るということがいかに大切なことか、お分かりいただけると思います。はい☆-(^ー'*)
風も強いし雨もよく降る。
この鉄骨施設に守られて、気温と日照と湿度は理想的な形で確保できる。だから八丈の皆様の手によって丁寧に作られたレザーは肉厚で艶々☆
発色も違うし、良く持つのです。

ところで皆さん、日本でレザー栽培発祥の地はココ八丈島であることをご存じでしたか?
(さっきチョット言ってしまいましたが・・・)
昭和40年、当時の横浜植木会社(現:横浜植木株式会社様)から30株ほど購入したのがきっかけ。
昭和50年、次世代を担うスーパースターとして八丈島で本格的に増殖し始め、30株から始まったレザーは300株、3,000株、30,000株と爆発的に増えていき、量販体制に。気付けば洋花ブーケの葉物といえばレザーファンは欠かせないというほど一世風靡した品目です。
昭和50年代、レザーファンの時代が到来!

でもどうして、これまた「レザー」と呼ばれるようになったのでしょうか?
英名をレザーリーフ・ファーン(Leatherleaf Fern)といいます。直訳すると「革質の葉を持つシダ」。
想像ですがツヤツヤとした葉の表面が革素材のように見えたのでしょう。そのような高級素材にも例えられたレザーですから、日本でも大ブームを起こすのは至極当然のことにも思えます。ブームを起こすには確固たる生産体制がなくてはなりません。その生産を支えたのが、この八丈島の皆さんなのです。
これからも国産のレザー供給を力強く支えてくれることでしょう。
さて、こちらは独特な雰囲気をお持ちのお父さん。
こんにちは(✿◕ ‿◕ฺ)ノ))。₀: *゚✲コンニチハ✲゚ฺ*:₀!!

なんと知る人ぞ知る八丈島の生き字引きこと喜田孝(きだ・たかし)さん、66歳です。
八丈島農協のロベ生産組合の第2代組合長さんです。ロベの話を伺う前に、八丈島のオリジナル言語について教えていただきました。
なんでも八丈島の方言は日本に数ある離島の中でも最も古い方言なのだとか。そのような貴重な言葉にもかかわらず、全国でも4番目に話す人が少ない方言でもあるのだとか。年々話者が消えゆく幻の方言。せっかくですから喜田さんとちょっとお話してみましょう。

喜田さん、こんにちは!
(喜田さん)「ロベ∀йィ゚+o。△★*@Θ±。。。」
え? ☆!☆?☆ (☆_◎) ☆!☆?☆チンプンカンプン(衝撃的!!)
なんておっしゃいました?全然わかりませんでした。
今、八丈の言葉で何かおっしゃったのですか?それとも日本の共通言語だったのでしょうか・・・それすらワカラナイ!
すみません、昔から英語も聞き取りが苦手だったもので、もう少しゆっくりお話していただいてもよろしいでしょうか?
「ロ・ベ・オ・ヤ・マ・ナ・ベ・ト・カ・ラ」
はあ・・・。
八丈島の言葉のようです。
それにしてもこの音の羅列は一体何を意味しているのでしょう。(゚_。)?(。_゚)?

「“ロベヲ、ヤマナベトカラ”って言ったんだよ」
あぁ!なるほど、“ロベヲ、ヤマナベトカラ!”とおっしゃったのですね。そして普通の言葉もお話になるんですね・・・
それでなんとおっしゃったのですか?(←全然理解が進まない)
「“私はロベを山に植えました”って言ったんだ」
なるほど、やっと伝わりました。ありがとうございます。
八丈の方言をお話しされる方は今となっては大変貴重ですね。
で、その貴重な人物喜田さんも“ロベヲ”作っていらっしゃいます。

「昔はね、牛を飼っていてホルスタインのおっぱい絞りをしていたんだよ」
へ~!ホルスタインのおっぱい絞りからロベ生産に職業変更ですか。かなりの転身だと思いますが、何かきっかけはなったのですか?

「昔はココ八丈では畜産も有名だったんだよ。昔は八丈の牛乳は世界一と言われたものだったんだ。
でも飼料の価格高騰などで徐々に畜産は儲からなくなっていたんだ。だから私も畜産をやめて昭和35年にロベ生産に移ったんだよ。そのころはロベが成長株だったからね」
あ、ホントだ。
ふと振り返れば、農協の集荷場と同じ敷地内に牛乳の加工場がある・・・。

こちらが今でも有名な八丈牛乳。

早速いただいてみると・・・(* ̄O)◇ゞ ゴクゴク
わッ!“本当の牛乳”の味がする!
いつもスーパーで買う牛乳と明らかに違います。
本当はこのような味をしているということを教えてくれる“本物牛乳”という感じです。しかも低温殺菌(今回もお得意の四文字熟語か?いや、花とは関係ないからやめとこ)。
おいしいですよ。牛乳好きにはたまらない。
八丈名物、生き字引の喜田大先生にいろいろ教えていただいたところで、現役組合長にバトンタッチ!

こちらは八丈農協で250軒にも上るロベの大生産組合のリーダーを務めるのが第4代組合長の浅沼實(あさぬま・みのる)さん57歳。
實さん(八丈は同じ名字の方が多いので、現地の習慣に倣って下のお名前にて!)も25年前に民宿経営からロベ生産に華麗なる転身をした転身組です。
ちょうど集荷所で集荷作業をされていました。


ロベを階級分けして箱に詰めているようですが、ロベの良し悪しはどこでみるのでしょうか?
“良いロベ”の見分け方を教えていただけますか?
「本当に良いものは“葉切り”がされていないものだよ」
↓葉切りされているもの。葉先がバツン!と切ってある。

ではどうして葉切りして出荷するものがあるのですか?
「風に吹かれて周りの葉と当たったりすると葉の先が傷むでしょ。だからそこを切り取って出荷するんだよ。
切らないとその傷がだんだんにじんで広がってきてしまうからね。
だから葉先が切れていなくて先端まできれいに伸びているものが“秀品”、葉切りされているものが“優品”なんだよ」
(※品質の階級は上から秀品、優品の順です)
それにしても、見てくださいと言わんばかりの素晴らしい艶です。

ロベはヤシ科ですから、主な出荷期は春夏かと思いますが、冬場は何をされているのですか?皆様ロベ専業と伺ったのですが?
「枝うちとか圃場のメンテナンスだよ」
毎日?
「そう、毎日。
きちんと冬場にメンテナンスをしないと、葉が伸びたい放題では下の方の葉は日照不足にもなるし、高温多湿になって虫害や病気も出やすくなる。夏場に良いものを出荷するには冬場のメンテをいかにきちんとするかにかかっているんだよ」
ふと見れば實さんのお足下はなんと“地下足袋”!

いつもこのスタイルですか?
「そうだよ。集荷場と圃場ではいつもコレ。滑らないし踏ん張りがきくんだ」
それではお待たせしました!ロベの圃場にお邪魔してみましょう。
みなさん、ロベがどのように作られているか想像できますか?
こんな感じかしら?

それともこんな風に植えられているのかしら?

はたまたこんな感じの高いヤシにロープ一本で登って切ってきたりするのかな~、(だから實さんは地下足袋を履いていたんだ)なんて想像されているみなさん♪

真実をお伝えします(*`д´*) ←真剣な面持ち
コチラがその圃場です。

えええーーーーーぇ!なんだか想像と全然違うぅ!
お邪魔したのは共選でロベ組合を構成する250人のうちのおひとり、村上真理子さんです。
この真理子さんがまた只者ではありません。
何を隠そう2010年2月の関東東海花の展覧会にてロベで「農林水産大臣賞」を受賞したスゴ腕なのです。
「色ツヤがいいからって評されたかな。良く覚えていないわ。ハハハッ(笑)」

さすが、この明るさですよ。ロベにツヤをもたらせているのは!
いやいや、それもあるでしょうけどウン探の名にかけて、農水大臣賞受賞の秘訣を「真理子さんの明るさ」で片づけてはなりません!(自戒!)
圃場を拝見いたしましょう。

直射日光がビシバシ当たると、さすがのロベも葉が焼けてしまうので、遮光のためにネット施設で育てています。
「このネットは風除けの意味もあるのよ。強い風に当たると葉先が茶色くなっちゃうから。」
真理子さん、ロベ生産で何か独自に心がけていらっしゃることはありますか?
「そ~ね~、肥料は年に2回でしょ、あとは除草をしっかりすることかな。ロベにとっては台風と並んでムシが大敵なので、除草を徹底するというのは防虫対策でもあるのよ」
なるほど~。
ロベ畑って下から覗くとこのようになっているのですね~。

これはまたきれいに並んでいらっしゃること!∑(o'д'o)!!

「そうそう、それからロベの木を植える時に結構間隔を取るのよね。90-95cmくらい。
人によっては75cm以下の人もいいるくらいなんだけど、ウチは間隔が広い方かな。そうすると風が吹いて葉が揺れ動いても、葉同士が擦れ合わないし葉先が割れなくなるのよね」
あらまあホント。葉先がきれい!これなら葉切りする必要ありませんね。

水やりは?
「ここ八丈では水やりの必要ないのよ。1年を通して十分雨も降るし、湿度もあるしね」

どこから切っていくのですか?
「幹の下に生えている方から順に切っていくのよ。樹の天辺に生えている5枚位を残してね。8月には全て収穫してしまうの」

この施設内のロベの樹はだいたい1.4mくらいでしょうか。ここまで大きくなるのにどのくらいかかるのでしょう?
「10-12年。実生(種から育てること)から苗にするまでに4-5年かかるのよ。苗になったら定植して、この高さになるまで更に5-7年ね。どんなに早くても定植から5年目でやっと製品を採れるようになるの。
同じタイミングで植えても、苗ごとに生長の差があるから、結構高さはボコボコしているでしょ(笑)。高くなりすぎた樹は葉を採った後に幹から切ったりするのよ。そうでないと、低い樹たちの日照権を阻害しちゃうから」
1株から何枚くらい採れるものなのでしょう。
「1回で7-8枚。
切らずに置いておくと葉先が黒ずんできたり割れたりしちゃうので、きれいなうちにね。施設内を回って採花のタイミングをよく見てね。どこを残しておいて、どこを今日切るかの判断が駆け引きだったりするのよね。いまだに日々勉強中よ(笑)」
あれれ??(゚~゚o)???
ロベの葉元をよく見てみると、葉になりかけの子供みたいのがいます・・・これは?

「葉じゃなくて、トゲだよ」
トッ、トゲッ!?∑( ̄[] ̄;)!
ぬぁ、ぬぁんと!こんなに大きくて鋭いトゲが付いているのですか?ロ、ロベに??
あ、ホント触ると固くて・・・これ刺さったらイタイでぇ~=(´□`)⇒グサッ!!
ん?つまり、このトゲを処理して出荷してくださっているということですか?
「そーよー!」
だから真理子さんの手もこの通り・・・アタタタッ!

指を指しているところはとげが刺さって皮膚が変色してしまったところなのだとか。
「トゲはね、1度水に浸けるとふやけて取りやすくなるの。
数時間置いたものをこうやってカマで取る。1本1本両サイドね」

エ━━━(゚ロ゚;)━━ッ!!(驚)
ロベの出荷前に1本1本トゲをカマで取っていてくれていたとは、知りませんでしたm(_ _)mモウシワケゴザイマセン!
市場では大きい箱にたくさんロベが入ってくるものですから、てっきり簡単なものかと思ってしまいましたが、真理子さんの白魚のようだったはずの手をこのように傷つけてまでも、このような鋭いトゲを1本1本取ってからご出荷頂いていたとは・・・脱帽!
【トゲ取りシーン】

きれいにトゲが取れました。
出荷までは本当に手間のかかるものなのですね。
でも真理子さん、どうしてロベを生産品目として選んだのですか?

「私にはロベしかないのよ~。ロベなら難しい技術も要求されないし、連作障害もない。
自分のペースでできるでしょ。ご年配の方でもなんとかできるということは、自分が年をとってからも続けられるってことだしね。
八丈にロベがなかったら生活していけなかったという人も多いのよ、ウン探さん」
連作障害もなく年を取ってからも続けられるというサステイナブルなところがいいですね。
「そうそう、同じ八丈名物でもアシタバは3年で畑を替えなくちゃいけないの」
← 八丈名物「アシタバ」
農業を続ける人にとって、同じ土地でずっと同じものを作っていけるというのは大きなメリットですね。
ロベがあっての八丈島。ロベが八丈の経済を大きく支えていることがよく分かります。
こうしてトゲまできれいに処理されて、集荷場に集められ、出荷の準備ができた商品は八丈島の港に集められます。


こちらがその港、底土港(そこどこう)といいます。

底土港(そこどこう)ってそこドコ?(ア。スミマセン!)
いやいや、冗談抜きにしてそこはどこかというと、八丈島の形をひょうたん形に例えると、このくびれのところにあります。

八丈島のメインの港です。
底土港から出船して東京は竹芝桟橋に到着します。所要時間はおよそ10時間。飛行機であれば1時間足らずの距離なのですが、航空貨物事業が撤退してしまったので、切り葉のような大きな箱のものは船で送るしか手段がなくなってしまったのです。
東京都下でありながら大消費地が遠い。離島である分、生産資材や肥料のコストも本土より高い。加えて、船は欠航率が飛行機よりも高い。これが八丈で花きを生産出荷する人の悩みです。
それにもめげず、平坦地が少なく意外と山がちな八丈で、急斜面を開墾して“段々ロベ畑”にしてでもロベの量販体制に臨みます。
そりゃもうこんな感じ↓

車を走らせれば、流れる景色はロベ林。

↓谷間にも(写真上部の緑がロベ)

♪あれに見ーえるはロベではないか・・・ってホントに木々の向こうに見えるアレもロベです。

ちょっとスペースがあればすかさずロベを植える。どんなに狭い場所であっても、まさに生き字引きこと喜田さんのおっしゃる「ロベヲナベトカラ」状態。
八丈の方々をここまでロベ生産に駆り立てるものって・・・
それは後ほどレポートいたします( ^―゜)b
その前に季節外れですが、せっかくなので共選の「サンダーソニア」の生産現場をちょっとだけお見せしちゃいます。(ウン探を見てくださっている方だけに特別♪)
こちらは奥山隆(おくやま・たかし)さんです。

サンダーソニアを共選で出荷してくださっています。今は時節柄花もなく、球根の育成が主な仕事です。
「サンダーの球根はね、こうやってV字型になっているんだよ」

へ~、V字型の球根ですか。珍しい形をしていますね。
ほら、こんな感じ。なんだかカワイ♪

「養成するときはまずこのV字の先を見るんだ。
これは先が黒くなっているでしょ。
これは組織が死んでいるんだ。こうなっちゃうともうダメ。
これは切って、処分する。
もう一つを見てごらん。こっちは白くてぷっくりしている。

これは生きている証拠。
一つの球根の中でも、生きている方だけを切り取って養成するんだ」
この白い粉は何ですか?体操選手の手ように白粉にまぎれていますが・・・?

「殺菌剤だよ。割ったら傷口ができるでしょ。そこからバイ菌(ウィルス)などが入ったら大変だ。
ダメになっちゃったら、今の努力が水の泡でしょ。
もっのすごく繊細なんだ、サンダーの球根ってのは」
アレレ?どうしてその作業場にスケールがあるのでしょう???ヾ(゚ー゚ヾ)^?。。。ン?

「もちろん重さを測るためだよ。3-4グラムの球根と5グラム以上の球根とに分けているんだ」
な、なんと!∑o(*'o'*)o ウオオォォォォ!!
どうしてですか?4グラムと5グラムの境ってそんなに大きいものなのですか?

「芽が出てきた植物体の大きさとかエネルギーっていうのは、球根のサイズに大きく影響されるからね。
3-4グラムの球根は7-8輪の花が付いたMサイズの商品になるんだよ。5g以上の球根なら9輪以上、出荷時の長は80cm以上という大変立派なLサイズ商品。
採花してからMとLに仕分けするのではなく、最初から分けて商品のバラツキを最小限にするんだ」
なるほどぉ~。
そこまで緻密に良いものを作ろうとしている。
「こうして丁寧に処理していったものを、植え付けまでの間冷蔵庫に保管しておくんだ。
3-5℃で3か月間ね。
一度冷蔵庫に入れた球根を3月上旬まで時期をずらしながら定植するんだ。あえて開花時期をずらして、継続して採花できるようにね。
これを“休眠打破”っていうんだよ」
“休眠打破?”
眠眠打破ならよく知っていますが・・・ア、スミマセン、休眠打破ってなんですか?
「サンダーのような球根植物のうち、多くは季咲きは5月でしょ。
(※季咲き=人工的な処理を加えずに、季節がくると自然に開花すること。本来の旬)
球根の場合は冬の寒さに当たると、“寒いから寝る~”とお休みなるわけ。球根はむしろ“寒さ”に当てないといけないんだけど。
そのあと春が来て気温が上がると“わ~い!温かい~(≧∇≦)”と目を覚まして芽が動き始める。
そうすると開花のタイミングがちょうど5月なんだ。
この冬と春を人工的に作るのが休眠打破っていうんだよ」
球根を冷蔵庫に入れて寒さを当てて、冬だと思わせる。(本当の季節な夏なのですが、冷蔵庫に入れて冬を体感させちゃう!)
そして、冷蔵庫から出して圃場に定植、隆さんのところは施設栽培なので温度コントロールをして、本当の季節は冬なのですが今度は春だと思わせる。
畝によってタイミングをずらしながら球根を定植していくことによって、季咲きを待たずに冬でも継続的にサンダーソニアを採花することができるのです。

少しだけ芽を出したサンダーたち。良く見ると既にサンダーの葉の特徴を示しています。

残念ながら今はまだ花はありません。

今日のところはフリー素材で入手したサンダーソニアの写真で堪忍してください。スミマセン!

下を見ても花はないので、ふと上を見ると・・・

あ、電照がある・・・!
もしかしてサンダーソニアって電照栽培なんですか?
「電照栽培じゃないよ。夜業用だよ」
や、夜業・・・!!w(゚o゚*)w!!
夜遅くまでそんなにお仕事されるのですか、隆さん?
「一つ一つ球根を手で植えていくからね。1ベッドで4,000球植えるんだ。
日が短くなると明るいうちに作業が終わらないから、この夜業用ライトは必須なんだよ」
どうもすみませんでした。
隆さん、くれぐれもご無理をなさらないようお体を大切にしてください。
さてさて、ここまで色々皆様に教えていただいたのですが、う~ん、わからないな~。
八丈島の皆様をここまでロベ生産に駆り立て、ロベの島八丈が誕生した理由・・・

こちらは八丈島農協の持丸元一(もちまる・もといち)さん。57歳。
「八丈といえば葉物。昔から八丈は葉物で有名なんですよ」
はあ・・・。でもどうして葉物で有名な八丈が誕生したのでしょうか。
「八丈の気候とか諸条件に合っているんですよね。
例えば花物をやろうと思ったら、苗代や球根代はのコストがかかるし、市場までの運賃は東京都下でありながら本土とはレースにならないほど高いんですよ。
運搬コストが全般に高いから内地に送る商品だけではなく、八丈に送る商品も高い。だから八丈島の物価は少し高いと言われるんです」
加えて風が強い八丈からの船便は航空便よりはるかに欠航率が高い。
「これがまた結構欠航するんですよね」(あ~、ダジャレ得意なんですか?)
↑嵐の底土港。これでは船が出るはずもなく・・・。
「多い時では週3回出荷のうち2回も欠航するんです。
しかも、出荷したい時に限って。春先は春一番も吹きますから、3週間出ないということも決して珍しくないんですよ」
となると、せっかく採花したのに市場に送れず全部廃棄なんてこともよくあるわけです(+_+)ショック!
通常通り船便に載せられたとしても、海の上で揺られているだけで10時間。東京都下なのに長いぃ~!
そのようなリスクをトータルで考えたときに、なかなか「葉物」という選択の代案を考えるのは難しくなってくる。
そのような制約条件の多い中、せめて生産と販売は安定してできるものということでロベやレザーになったわけです。
では、八丈島とロベ・レザーとの出会いは何だったのでしょうか。
必ずその出会いがあったはずですよね?
なんと八丈島における園芸の発祥は享保年間にも遡るのだそう。
享保といったら江戸時代8代将軍吉宗の享保の改革の享保年間??
そうなんです。江戸時代、日本の花卉園芸文化は飛躍的に繁栄したと言われますが、離島であるここ八丈でさえもこの時代に園芸文化の発祥を見ることができるのです。
そのころ本土からもたらされたのはソテツ、ボタン、シャクヤク、キク、バラ、アサガオ、ツツジなど。これらに加えて八丈に自生していたのはソテツ、タニワタリ、フウラン、セッコク、エビネラン、ギボウシ、マンリョウなどがあり、人々は多種にわたる観葉植物に見飽きることはなかったと言われています。
しかし、この観葉のための植物から八丈の経済を支える園芸植物へと成長するのは大正時代になってからでした。
はい、ここがポイント!( ^ー゜)b 八丈島とロベとの出会い。
大正10(1921)年、当時の「横浜植木会社」(現:横浜植木株式会社)という園芸会社が八丈島の亜熱帯的な気候に目を付け、東南アジアからロベ2株を持ってきて植え付けたのが、まさに出会いとなります。←八丈に目を付けロベを植えたこの方、この企業がやはりセンスありますね~。
このロベの2株が雌木と雄木の対になっていたために、これが親木となって種子が採取され、ロベはどんどん殖えていきました。
このように八丈にもたらされた園芸品目は数知れず。八丈の気候条件と相まって、後の八丈を園芸王国にのしあげたのです。

「八丈にもたらされた最初のロベの親木がまだあるんですよ」と元一さん.
えッ∑(゜◇゜;) ギョギョッ!
化石でも標本でもなく、ホンモノの親木があるのですか?
イキテル??生きていらっしゃるんですかぁ????
「そう。見てみますか?」
と連れて行ってくださったのは「ロベの碑」。
コチラ↓

いつもロベをご利用の皆さま、このようなものがあることをご存知でしたか?
(あたくしは存じ上げませんでした・・・カ・ン・ゲ・キ(დ☣‿☣)!!)
八丈の経済を支えるロベに最敬礼の思いを込めて、昭和58年に自治会の皆様によって建てられました。

ロベの碑の両脇を護衛するかのように立っているのが八丈に最初にもたらされたロベの2本です。
そのお姿は斜陽を浴びて神々しいほどです。
お足元はこんなに苔むして・・・!

八丈の皆さんにとっては、戦後の物資欠乏や食糧不足の危機を乗り越えた今日の経済的繁栄もこのロベご夫妻の賜物なのです。
いわばロベの島八丈を生み出したお父さんとお母さんです。
このお二方あっての花き業界、そして大田花き。
ロベご夫妻、ありがとうございます(合掌)。
もうここまで「ロベ」を連発すると、「なぜ“ロベ”というんだろう・・・」と分からなくなってしまいましたが、ロベとはその学名であるフェックス・ロベレニー(Phoenix roebelenii)を略してロベと呼ばれるようになりました。最初から略しっぱなしですみません。。。
はい、それでは最後に共選を代表して實さん!
八丈では消費者の方々と直接お話しされる機会も少ないでしょうから、ここで消費者の皆様に一言お願いします!

「ロベを使ってくれてありがといと思っています。
生け花やスクールの先生、仏業務の方々、そのほかロベをいつも使ってくださる皆様、長い間ロベを使ってくれてどうもありがとうございます」
皆様への感謝の思い!お預かりいたしました!
ロベを使ってくださっている皆様に届きますように~!
・ 八丈のレザーもロベも品質は世界トップレベル。緑は濃く艶やかで肉厚、葉が締まっていて本当に美しい。
もう一度その美しさを見つめ直すべし!
・ レザーファンの栽培条件はコーヒーベルトの条件がベスト也。
コーヒーベルトより少し北緯の高い八丈では寒さから葉を守れ!
・ ロベは葉先が命!
風に揺れても葉がぶつかりすぎないような間隔で定植すると◎。
トゲは取っても刺されるな!生産に携わる皆様はご注意ください❤
・ 離島の制約条件、限られた選択肢の中で島の経済を支えるほどの
大きな産業を生み出した八丈ピーポーのスピリットを見習うべし!
・ 台風銀座八丈における施設栽培は鉄骨が基本!
・ ロベの島八丈を生み出したロベご夫妻に最敬礼の念を以って臨むべし!
八丈にお出かけの際はぜひ立ち寄ってみてください♪
後編につづく
前回に引き続き福島県を訪れました!
今回は福島県南会津です。
晴天に恵まれ、空気がきれいなおかげで空も植物も家々も道もくっきり色濃く見え、周囲は山々に囲まれたとても美しい場所でした。


お話を伺ったのはJA会津みなみに出荷している3軒の生産者さんです。
まず室井豊一さんのもとを訪れさせていただきました。
選花をしている現場は真っ白なカラーがたくさん。


ラッピングなしでもこのカラーを束ねて持っただけで、持った人を120%引き立てるような美しさです。
また、選花をする台の端に花びら2枚のカラーたちが。

白ウサギの耳みたいでこれもまたきれいだと思ったのですが実はこれは奇形で、株から最初に花が出てくる時に気温が高いことが原因です。また、高温により白のカラーに若干のピンクが入ってしまうこともあるようです。
次に室井さんの花作りはどのようなものなのでしょう。かつて南会津町を流れる水無川(みずなしがわ)周辺は石ころだらけの川原だったそうです。
そこに昭和44年からの開拓パイロット事業で川原の上に土を30cmの高さ分敷き詰められました。そこで植物を植えることができるようになり、桑やブドウなどを栽培し始めました。
しかし、養蚕の衰退で桑畑が荒廃したり、ブドウは取り入れた品種が南会津の地の環境条件と適さず、うまく実をつけなかったりとうまくいきませんでした。室井さんもこれまで葉タバコ、畜産、アスパラガス、グラジオラスといろんな生産に携わってきましたが、いつもどうしたらこの地で農業ができるかをずっと試行錯誤してきました。30cmの深さの土で生産できるもの。。。それもちゃんと利益が出て、地域の産業として根付く農業でなければならず、どんなに質の良いものを1本2本作ることができたとしても、経営として成り立たなくては意味がないと熱く語ります。また、それを考え続けるのがライフワークだというところに揺るぎない芯を感じ、心にしみるものがありました。

自分の農業だけではなく地域の農業を活性させるところまで見ていらっしゃるのが溢れるバイタリティーの秘訣でしょうか。現在は生産の8~9割がカラーで、連作障害を防ぐためにヒマワリ、ケイトウ、スターチスなども作られています。そもそものカラーとの出会いは、会津の西部地区でカラー作りをやめる方がいるとJAから知らせがあり、カラーの持つ気品や、株が増え続ける球根の性質などに魅力を感じ、それをならやってみようと球根を買い取ったところから始まりました。やめる方の畑に行って鍬(くわ)で球根を掘り起こしたそうです。
また、カラーは気温がマイナスになると土の中では球根が溶けてしまいます。土の中でも越冬できる品種もありますが多くは毎年冬前に掘り起こして予冷庫に入れます。
球根はこの農業用の黒いコンテナに入れてから予冷庫の中に収められます。このコンテナが500個分ほどできるそうです!入りきらなかった分は農協の予冷庫を使います。室井さん個人の予冷庫は設定温度を冬場5℃に設定しており、除湿機を予冷庫内に入れ湿度管理も行いますが、除湿機の運転により設定温度が多少高くなるので温度・湿度管理に気をつけ確実な越冬を行います。
そして、カラー作りで室井さんが大切にしているのが、できる限り球根と地力(ちりょく : 土地が作物を生育させることのできる能力)で育てることです。元々この土地の水はけが良いこと、気候が涼しいことによりカラーにとってはとても環境が良く、自然の力だけで美しいカラーが作れます。肥料は使っても植物にとって優しいミネラル系の肥料を使用しています。
チッソ系の強い肥料を使うと見かけが大きく丈の長い花を作れますが、茎が軟弱で日持ちも悪くなるので、それは本意ではないから使用されていません。

このような小さな粒のミネラル系の肥料が畝沿いに蒔かれていました。
また雑草も肥料として活かします。土から抜いた後も畝間に置いて緑肥(育った植物をそのまま畑にすきこんで肥料にすること)として用います。
生産から流通までの安全性などを第三者目線で総合的に評価するMPSという認証があります。生産者向けMPS認証の中に農薬や肥料などによる環境負荷をAからCまでランク付けする評価基準があり、室井さんは最も環境に対して負担をかけていないAの評価を得ています。
決してMPSを取るために頑張ったわけではなく、自然の力を大切にし、生産に取り組んできた結果として取れたと語るのはとてもかっこいい。
触らせて頂きましたがカラーの茎はとてもしゃんとして固い。細胞が密に詰まっているのが分かるというか。

形はウェーブがなく、花の口が少し反り返っているものが理想です。
写真で言うと左の方が理想的です。

冬場は骨の折れるハウスの除雪、また翌春に向けて栽培結果の分析を行います。その年の気象条件と採花の始まり、ピーク、終わりの状況を捉えておくと翌年以降の栽培から出荷計画に活かすことができます。このように毎年のデータを蓄積することによって生産や出荷作業の計画の目処が立ち、予定していたことと3日間以内のずれで抑えられると言います。春から秋まで長い期間作り続けているのに3日間だけの誤差で収まるのは驚きです。今までの栽培結果をこうして分析するのも楽しいとおっしゃいます。
とても元気な産地さんだという印象が残りました。
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続いて所変わって部会長の室井和之さんを訪れました。

ちょうどカラーを選花しているところでした。どんな基準で選花しているのか聞いたところ、「花屋さんが嫌がるものは出さない」ということでした。
例えば軟腐病(細菌により茎、またひどい場合には球根まで溶けてしまう病気)にかかっていないもの、また形が整っているものをしっかり選びます。
また選花をしている室井和之さんのお隣では奥さんも出荷作業をされており、お願いしてテープで茎を巻きつけるところをゆっくりやっていただきました。透き通るような美しいカラーが傷つかないよう、1本1本器用に束ねて専用の機械で上下2ヶ所束を巻きつけます。

そして室井さんの場合、カラーの球根はすべて冬前に掘り上げてしまい、冷蔵設備のない小屋の中でもみ殻の中に埋め込むことで越冬させます。
なぜもみ殻なのかというと、室井さんはカラーだけでなく出荷量の多いもの、少ないもの合わせて8種ほど(カスミソウ、ダリア、マリーゴールドなど)の品目を育てていらっしゃるのに加え、稲、豆、そばも栽培なさっており、秋の収穫時にはとても忙しい。その時期が終わってカラーの球根の越冬準備をするとなると、球根にとって良くない環境になってしまい、冬まであまり時間がありません。
水気があると腐りの元になるため掘り上げたものを乾かす必要があるのですが、予冷庫を使うとなると長く乾燥させてから入れることになりますが、もみ殻を使う方法なら数日干しただけで後はもみ殻の中に入れておけば越冬できます。
というわけでもみ殻を使われています。

もみ殻の中は冬でも7~8℃で安定して保たれていて、球根たちは根も茎も付いた状態で入れられます。茎は球根から3cmほど付いています。
多少の水分はもみ殻が吸い取ってくれるそうですが、以前、茎を今の3cmほど残した状態よりもっと長く付けたままもみ殻に入れた時もあったようです。その時はもみ殻が水分を吸収しきれなかったため球根が溶けてしまったそうです。そこで今の3cmくらいに落ち着きました。若干の長さの違いが大きく左右するのですね。
球根は上に重ならないように平らに並べ、その上にもみ殻を敷き、またその上に球根を並べまたその上にもみ殻を敷くといった繰り返しがなされます。つまりサンドイッチ状態です。
除雪機を使って球根にもみ殻のふとんを被せます。

なるほど除雪機にはこうした使い方も!
圃場ではカラーは施設栽培ものと露地ものがありました。施設の中は真っ白なカラー(クリスタルブラッシュ)が元気良く咲いています。また、露地のカラーはピンクやオレンジといった色ものが咲いていました。
驚いたのが発色の良さです!夏場出荷のカラーは露地でしっかり日光を当たった方がで施設で育てるより発色の良い花ができるのです。



非常に濃い。ピンクにしてもオレンジにしてもこんなに濃いカラーたちは初めて見ました。
また、こちらはダリアです。人の身長より高い!


こちらの黒蝶という品種は大人の手のひらを広げたくらい大きいです!

ダリアは頂芽優勢(ちょうがゆうせい)の植物です。芽が出て茎が伸びていく過程で、てっぺんの芽(頂芽)、及びその茎(主茎 : しゅけい)が最もすくすくと育ちます。
根元を見ると主茎が切られていました!
理由は丈の長い花を作るためでした。主茎は花芽をたくさんつけ、育ちも旺盛ですが短いところで枝分かれし長さが取れないそうです。一方茎の側方から出ている側枝(そくし)は枝分かれせず長く伸びるので丈の長いダリアを作ることができます。
というわけで主茎の根元で切って側枝に栄養が行くように工夫をなされているのですね。

また、ハウスの中は虫が少ない。
ハウスの上にUVカット加工の遮光幕を被せているので、遮光と紫外線のカットによりスリップスなどの虫が寄りつくのを少なく抑えられています。今年も秋の収穫時は忙しいと思いますが頑張ってください。
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お次は渡部善蔵さん。

カスミソウをメインで栽培されています。
もともとはリンドウの栽培をメインにしていましたが、花腐菌核病(はなぐされきんかくびょう : 菌により花に斑点が生じて花全体が茶色くなり茎を侵す病気)などの病害に悩まされていました。
そこで標高550mの南会津の涼しい地でカスミソウを作ったところ、うどんこ病(うどん粉をかけたように白くなる病気)などの病害もなくうまく栽培できたそうです。南会津の地は水はけがよいし、加えて気候が涼しくカスミソウに非常に適していたのです。

JA会津みなみは平成23年6月にエコファーマーという環境にやさしい農業に取り組んでいる認証を取得しています。(エコファーマーとは、堆肥などを使った土作りと化学肥料・化学農薬の使用の低減を行っている農業者の愛称で、各県の知事が認定します。)
昔はカスミソウの農家はチッソやリン酸系の化学肥料を、ボリュームが出るようにとたくさん使ってきました。しかし、徐々に土のバランスが壊れていってしまったそうです。そこで、会津みなみの部会全体で改良が行われました。土壌診断を行ったり、普及部での分析をもとに、有機肥料を用いて土壌改良に取り組みました。土壌を改良するには2~3年もの期間がかかりました。
渡部さんは染めカスミソウも作っています。
息子の亮平さんが主に行っていて、前回ウンチク探検隊で訪れた昭和花き研究会の菅家さんに教わった経験があるそうです。


季節にもよりますがピンク、ブルー、ラベンダーあたりが安定して人気があります。
染める時間は1時間~2時間ほどで天気、湿度によって大きく異なります。例えば夏場の乾燥した頃だと30分~1時間で早くも染まります。また、色はブルーだと80cmで1時間~1時間30分で染まるのがピンクだと2時間かかったりします。
染め時間を把握することは植物の呼吸を感じることでしょうから、とても繊細な花との向かい合いを日々されているのですね。

さて圃場も訪ねました。
細かな工夫が見られました。畑の畝に敷いているシート(マルチと言います)は一般的に多い黒ではなく銀色を使用しています。銀色のおかげで光を反射させ茎の下の方にも光を当てることができるのです。

それから、6月から11月までの出荷を安定して行いたいという考えから、苗から畑への植え付けの際には一週間ごとにずらしながら植えていくそうです。
これで苗の状態から7週間目です。
まだ高さは10~15cmといったところでしょうか。12~13週目には採花できます。この頃には60~70cmになっているのだから急成長ですね。
夏は2番花が咲くころが採花目安です。

どれが2番花か。

上の写真の番号順に1番花から3番花までです。
また、この秋採花した後は、植えられている中の半分ほどの株を越冬させることになります。また春先にも採花するためです。冬場はハウスのビニールシートも取ってしまうので直接カスミソウの株に容赦なく寒い風や雪が降り積もることになります。
越冬なんてできるのかと思われますがほとんど雪腐れなどはないそうです!
「冬越しの株」、、、恐れ入りました。
では大変なことはどんなことでしょう。
花がまだまだ咲く段階までいかないときはハウスをビニールシートで被っておらず、鉄の枠組みがむき出しの状態です。カスミソウは雨に当たり過ぎると花が咲きにくい性質があるので、ある段階まで育つとハウスにシートを被せます。しかし、時期的に台風が来るのでシートが飛ばされる危険もあり、いつ被せるかタイミングを決めるのが難しいそうです。
また、性質が強いといっても病気が発生しないわけではないし、ネズミやコオロギ、カラスがカスミソウをかじってしまう被害もあります。日々の雑草を取る作業も体力のいる仕事です。
それらを経てこの粒の大きな美しい花ができあがっているのですね。



カスミソウは地中海沿岸原産で、暑さに強いおかげで葉焼けもなく、一方雪の中で越冬もできてしまいます。おまけに染めることもできます。ふわふわとした優しい見ための花ですが、性質は非常にタフなんだということを強く感じました。
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今回3軒の生産者さんを訪ねましたが、どの生産者さんも
南会津の気候をよく把握していて、涼しくて水はけの良い土地に基いた花の栽培をしていました。
こんな手間暇がかかったきれいな花が大田花きに出荷されているのはありがたいことです。
大田花きでは先月8月8日~12日に中央通路のショーケースで展示が行われました。

最後に今回はJA会津みなみの星さんにご同行して頂きました。余談ではありますが上の写真のかわいい女の子たちが写ったJA会津みなみのポスターですが、その中の一人は星さんのお嬢様です。みんなほんとにいい笑顔です。自然の恵みと共に生き生き生活しているのが感じられます。
会津みなみの特徴は束共選といって、生産者の方で等級ごとにある程度分けられたものをJAでさらに束ごとに秀や優に選び抜き、市場へ出荷します。更に長さだけでなく重さの規定もあり品質が整っています。

星さんはそのような集荷と選花作業、生産者への市況報告など非常にマルチにお仕事をなさっているのでした。
また冬にスキーができる山や、松茸が採れる山、春アスパラの美味しいことなどいろいろ教えて頂き、暖地にはない、涼しさを元にした会津田島の自然の魅力を感じました。
(文責:Kadono Hiromi)

こちらが菅家さん。
菅家さんといえば、農業と花き業界について最も真剣に考えていらっしゃる方のおひとり。メディアでの登場頻度も高く、ご存知の方も多くいらっしゃることとは存じますがッ!
ウン探では、ダレモシナライ昭和花き研究会、及び菅家さんの秘密を探ってご紹介させていただくことに致しましょう。
さて、昭和花き研究会は菅家博昭さんを会長とし、福島県大沼郡昭和村でカスミソウを生産する28人の生産者さんから成る生産者組合です。昭和村は豊かな自然に恵まれた大変良いところなのですが、本日は先が長いので、そのあたりのことは割愛させていただきたいと思いますので、是非昭和村のHPをご覧いただければ幸いです。
さて、昭和花き研究会は夏場のカスミソウの大産地として、またカスミソウをカラフルに染色した染めカスミ商品の先駆者として日本を代表するカスミソウ産地のひとつです。
こちらは、昭和花き研究会のカスミを(大田市場では)大々的に販売されている中央花卉さん店頭。大田市場で買い出しされていらっしゃる方の中で、ご存知のない方は恐らくいらっしゃらないでしょう。


いざ初潜入です!
(福島地図)
昭和村に入り、途中まで出迎えて下さった菅家さんの穏やかな運転の後を追い、やってきたのは思わず深呼吸したくなるようなフレッシュエアー空気に包まれた山里。



木や土の匂い、水が流れる音、種々の花たちが咲き乱れ、虫たちが活動し、“自然が息づいている”という感じがします。草木の精霊に出くわしてもきっと私は驚かなかったことでしょう。






シャクヤクもここではまだツボミ。
ここも東京も同じ日本ですか。東京コンクリート砂漠から300km離れたこのようなところでカスミソウが作られているのですね。
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さて、体内酸素をフレッシュエアーに入れ替えたところで早速圃場へ。

こちらはカスミソウの苗。あたくし、カスミソウの苗って初めて拝見しました。
このような形をしているのですね。

「そうだよ。よく見ると、いろいろな葉の形があるでしょ。品種が違うからなんだけど、ここ昭和花きには3年後の日本に流通する新品種が必ず入ってくるんだ」
ほんと、よく見ると葉の形がトレーによって異なります。

新人のカスミはデビューの3年も前からこちらでトレーニングするのですか。

「3年かけて手入れ方法やテストマーケティングを行い、うまくいったものだけが市場に流通するんだ。うちにあるカスミの30品種のうち、10品種がトライアルだよ」
なるほど、昭和花きは日本で栽培がうまくいくかどうかのトライアル圃場としての機能も持っているのです。これはもう日本のカスミソウの将来は昭和花きが握っていると言っても過言ではありません!
デビューするかどうかの判断のポイントは、
① 出荷規格が80cmだからそれを満たせるような樹勢があり、すっと伸びるものであること
② 生育が良好であること
主にこの2つ。
では、3番目に“見た目”ですね?花だったら必ず大切なポイントになってくるかと思いますが??
「見た目とか色形は、ここに来る前に既に選ばれているんだよ。ここではどちらかというと、生育が良好であることや、花保ちなどがチェックされるんだ」
そうでしたか。生育チェックが主なんですね。
こちらは栽培圃場です。
うわ~、霞だわ、カスミ!本当に霞んでいる感じ♪
7月7日はカスミソウの日でもありますが、まさに七夕の夜空に流れる天の川のようです。中国ではカスミのことを満天星というそうですが、その表現もよく分かるような気がします。


「これを見てごらん。カスミソウはね、暑さに弱いんだよ。あとは急激な天気の変化に弱いね。それらに対応できなかったときに、まっすぐのびずにこのように曲がってしまうんだ。その場合はこのワイヤーで矯正するんだよ」
茎が曲がってしまったときは、この緑のワイヤーを使って矯正します。

「畑に植えて(=定植)から30日間のうち、暑くて夜の温度が23℃以上で1週間続くと、奇形になってしまうんだ。」
カスミの奇形って例えばどんな感じですか?
「花色が緑がかっていたり、花びらがなかったり、妙に大輪だったり・・・こういうのを高温障害っていうんだ」
今回も出ました四字熟語!「高温障害」
何度で高温障害が出るかは植物によりますが、その植物に不適切な高温下で栽培することにより、正常に生長しないことを言います。ま、植物の熱中症みたいなものでしょうかね。
「カスミソウは冷涼な産地で作るもの。暑いところではできないんだよ。
世界の大産地であるケニア、エクアドル、イスラエルも暑いイメージがあるけど、夜温は8-13度程度まで下がる。この条件が大原則なんだ」
この葉のピロピロフリルも同じ現象ですか?

「これは全く以って正常!」☆^∇゜)
あ、失礼しましたm(_ _)m
では何かの合図でしょうか。会津産の合図?ア、スミマセン!
「これは花芽分化をした合図なんだよ。このウェーブが出てから30日で開花するんだ」
↑チョット、皆さんココ読み流さないでくださいね!
このピロピロが出てから30日で開花するなんて、ご存知でしたか?(知らなかったの、アタシだけ?)
植物が栄養生長(純粋に葉や茎が伸びていくこと)しているときは、葉はまっすぐ。

ところがカスミちゃんが花芽(かが/はなめ)分化を決意したときは、葉の淵にピロピロが発生するのです・・・まるで揺れる乙女心がときめくかのようなフリフリ感![]()
この花芽分化を決意してからの生長を生殖生長といいます。
「カスミソウの品種にはは早生(わせ)・中生(なかて)・晩生(おくて)とあってね、それぞれ到花日数(とうかにっすう)が異なるんだよ」
うわっ!(□゚;) 出た!また四字熟語。でも慌てない、慌てない。
到花日数とは「花に到る日数」と書きますね。ですから、そのまま「畑に植えてから開花するまでの日数」のことをいいます。
「例えば中生のカスミは到花日数は60日。積算温度にして1,200℃で花が咲くんだよ」
積算温度の算出は↓
1日平均気温(最低気温15℃、最高気温25℃なら20℃) × 定植してからの日数(60日)
= 1,200℃
早生なら定植から40-50日、積算温度1,000℃、晩生は60日以上で1,500℃といったふうになっています。
これらの品種をよく組み合わせて出荷すると、長く安定して消費者の皆様のところに供給することができるのです。
「原油価格が上がってから、早生種にしないとなかなか出荷できなくてね・・・夏は(丈が伸びずに)40cmで花が咲いてしまうんだ。これでは商品にならない。品種のリクエストに応えることより、夏場に安定してきちんと供給することを大切にしているんだ」
と菅家さんはおっしゃいます。
「昭和花き研究会は28軒のカスミ専業農家から成り立っていますが、生産指導はしません」
と言う菅家さん。
では、その28人の技術レベルの差はどのように埋めているのでしょうか。皆さん同じ「昭和花き研究会」の看板の下にご出荷されているわけですよね。ブランド(信用)に関わる重要なことだと思いますが?

「生産勉強会や畔道講習会などはするよ。でも生産は私から強制したりするものではない。自分の責任で行うものだから、分からないことがあったら、県の先生などに聞くようにしているんだ。販売のことについては私からアドバイスすることもあるよ。でも生産には口出ししない」
なるほど“自分の責任において”ですか。昭和花き研究会は生産者さんお一人お一人がインディペンデントなのですね。
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生産のことを少し理解したところで、採花後の作業場を見せていただくことにしましょう。
こちらがその作業場です。

一歩入るとカスミソウ独特の香りがします。カスミソウは英語でbaby’s breath=赤ちゃんの息。
カスミの香りがやや気になる方も、“赤ちゃんの息”と思って、寛大な心で受け入れてくださいませ(*^-^*)
菅家さんが最も大切にしていることは、
一、 日持ち性
一、 鮮度
一、 切り前
これらに対しどのようにアプローチしているのか、見てみましょう。
さて、お邪魔した時はちょうどカスミの水揚げ&染色中。

水揚げについて
何といっても、昭和花き研究会では「圃場で水揚げ」していることが大きなポイントです。
トラックに前処理剤の入った水揚げ用のバケツを積んでいって、採花してすぐ浸ける!
「採花後、20分以内に前処理剤の入った水に浸けることが重要。
そのためには、作業場まで持って帰ってきてから浸けるのでは、間に合わないんだよ」

(↑黒いバケツが前処理剤の容器)
なるほどぉ・・・どうしてそこに辿り着いたのですか?
「1999年にイスラエルに視察に行ったときに学んできたんだ。当時イスラエルはケニア、エクアドルと並び、世界でもカスミソウの一大産地。イスラエルのカスミは日本の2倍日持ちしたんだよ。
そもそもは大阪府立大学の教授の文献を読んだり講演を聞いたりしてイスラエルにヒントがあると思って行ったんだ」
行ってみたら、まさに欲しかった答えがそこにあったわけですね。
しかしそれを日本で実践しようとしたときはまだまだ
“そんな面倒なことはでぎねぇなぁ~(-ε-)”
という論調が強かったそうです。
しかし、実際にやってみると、それまでロス率30%だったカスミソウは、圃場で水揚げするようになってからロス率ほぼゼロ%になったそうです。
つまり!( ^―゜)b
栽培面積を増やすことなく、またコストをかけることなく出荷量が1.5倍になったのです!
w(゚0゚*)wow!!キョウイテキ!
花萎れでロスが出てしまう原因は主に2つ!
① 内性エチレン
→いわゆる“老化現象”です。切られたとたんに自分の身から出るエチレンによって、老化を進め萎れていきます。
(ヤバイ!死ぬぅ~(≧Д≦)~と自らエチレンを出して老化を早め、慌てて子孫を残そうとするのです)
② 外性エチレン
→バナナやリンゴ、排気ガスなど、自分以外の外的要因に反応して、老化を進めていきます。
そう!カスミソウはエチレンによって急速に萎れていく代表選手の一つなのですが、圃場で素早く前処理剤に浸けることによって上記①の内性エチレンをストップすることができるのです。
②はその後の管理でコントロールできますので、やはり①のエチレンを大幅にカットできるということが品質保持に大きな意味を持っているのです。
はい、ここで菅家さんが大切にしている日持ち性をいかに改善しているかがよくわかりました。
では切り前はどのタイミングで計っているのでしょうか。
「頂部の花と下枝の花の開き具合を見るんだけど、最初に咲いた花が老化する前に採花するんだ。そしてすぐに前処理剤に浸ける」
これが切り前のポイントです!
菅家さん、カスミが暑さに弱い割には、作業場では冷蔵庫を使わないのですか?
もちろん使っているよ。コレね。

その作業場にあったのは、なんと1994年製の手作り冷蔵庫。外見も中身も一見冷蔵庫には見えません。

て、手作り??(゚ペ)?
冷蔵庫って手で作れるものなのでしょうか。大型電化製品販売店で買ってくるものか、業務用の冷蔵庫を作る業者さんにお願いするものだとばかり思っていましたが・・・^_^;
「冷却器と発砲スチロールを買ってきて、蛍光灯付けて、ドア付けておしまいだよ。総合計25万円。同じものを“買ったら”当時で80万円」
な、なんと!
手作りってホントです!断熱のために発泡スチロールでドアができている!

手作り冷蔵庫なんて存在するのですね!

3分の1以下のコストで作った冷蔵庫は、丸17年(!)経った今でも現役活躍中!なんという性能の良さ!さすが菅家さん。
冷涼な地域で生産されるカスミソウはひと昔前まで、お花屋さんでは“夏場にカスミは使うもんじゃない”という定説があり、そのように伝授された方も業界内に多々いらっしゃることと思います。
通常開花している花より周りにあるツボミの方が高いところにありますが、昔はこのツボミの高さが群を抜いていて、高いところにある分、水揚げがとても悪かった(+_+)
だから、お花屋さんはこれらの水揚げの悪いツボミを切って使ったりしていたのです。花屋さんの御苦労が忍ばれますが、現在は品種改良によりこのツボミと開花している花の高さが一定に揃うようになりましたので、ツボミを切り取る必要がなくなりました。
しかし、現在では品種改良と生産者のご努力により、夏場もカスミを使えるようになりました。これは一つの革命といえるでしょう。
昭和花き研究会のカスミは夏場に安心して使える信頼のカスミなのです。
染色について
染めカスミをご覧になったことのある方はお気づきとは思いますが、カスミの染色は(上から吹きかけるのではなく)染料を混ぜた水を吸い上げることによって行います。

このカップの下から3cm(=100cc)に摩訶不思議の染料(普通の染料)の入った水を入れ、カスミを10本束に束ねてこれに浸けて30分。10本で100ccですから1本あたり10ccですね。

ただーーーしッ!(゚□゚*)b
染色が30分で終了するのは、天気が晴れのときだけです。
湿度が75%ある日は2-3時間はかかりますし、雨の日は24時間浸けても染め終わりません。。。(゚゚;)ナヌッ!?

つまり、湿度が高いと植物の体内の水分が蒸散しないので、次の水、また次の水とホイホイ水を飲もうとしないわけですね。
だから水を吸い上げず染めに時間がかかる。ちょうど今の時期のような梅雨時期は大変!
その場合は、開花室(光と湿度をコントロール・・・詳細後述)に持っていき、そこで開花調整をしながら染め水を吸わせます。
カスミは本来とても蒸散活動の活発な植物です。
(=水が好き
ということ)ヽ(*´▽`)◆ゞゴクゴク
だからこそ染め商品に適しているということもあるのです。

「必ずお客様の販売計画に基づいて染めていくんだ。
これは受注に基づいてどれだけ染めるかを記したノート→
決して刹那的に染めることもないし、染めたものをストックすることもない。いつも注文を受けてから、受けた分だけ収穫、染色して、速やかに出荷する」

はい、ここです。ここに昭和花き研究会の鮮度への取り組みの答えがありました。
これは昭和花きファンが増えるわけです。
しかし染めカスミってどのように使われるのでしょうか?

大田市場花き部中央花卉さん店頭でへヴィーユーザーさんに伺ってみると、1本売りやスタンドや花束、仏花に使うようです。インタビュー当日も染めカスミを50本ご購入されたのだそう。
「真白のカスミよりも、ラベンダー色の方が寂しくないし、用途はたくさんあるんですよ」
昭和花きにとって、カスミを染める意義がもうひとつあります( ^ー゜)b
それは、染料は前処理剤を吸っているかどうかのマーカーである!ということです。
特に雨の日は蒸散しにくいだけに前処理剤を吸収しているかどうか判断する手段がありません。
しかし、染めカスミを作っている限りは、染まり具合で前処理剤を吸ったかどうかが分かるのです。
染まっていない=前処理剤を吸い上げていない
=内性エチレンをカットできない=老化一直線!=すぐ枯れる
白いカスミだけでは前処理剤をどれだけ吸ったのかがわかりません。目に見えませんから。
ですから作業する側とすれば、前処理剤に一定時間浸ければカスミは吸収したと思い込みがちです。

しかし、集荷場で同じように咲いていても、差が出てくるのはお客様の元に届いてからです。出荷する側にとっては、結果が見えません。
そこで色付きの溶液を吸わせることで、前処理が自己満足に終わることなく、お客様のところでどのような結果になるかを目視できるようになるのです。つまり出荷後の花保ちに対する責任を全うするということなのです。
染めたときの色づき方がカスミの行方を占うキーポイント。染める溶液にもまた鮮度保持剤が入っています。
カスミソウを染めるのは、白いカスミの品質チェックにもなるということなのです!
ひとつ誤解のないよう注意していただきたいのは、「小売店舗や消費者の皆さんのところで水を吸って開花したものは白である」とうことです。その割合が多くなると、全体的には白が増えるわけですから色が少しぼやけた感じになりますが、それはそれとして味わっていただきたいと思います。新しく咲いた花がピンクやブルーでないからといって不良品ではありません。
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はい、染料を吸わせて出荷の準備ができたカスミの行く先は出荷場です。
ご案内してくださったのは、昭和花き研究会取締役の本名敬(ほんな・たかし)さん。

最初に拝見したのは、出荷場の隣にあるこちらのシャッター・・・を開けて。。。

シャッターを開けてドドーンと現れたのは、なんと雪室(ゆきむろ)。

う~ん、カメラに入りきらぬぁ~~~~い!
どれほど大きいでしょうか。
う~ん、パノラマカメラがないとちょっとお伝えしきれません。

2月末から3月にかけて、およそ300トンの雪をここに運びます。
・・・って300トンてどのくらいかよくわかりませんが、とにかくカメラには収まりきらないほどの山のような雪をブルドーザーで運び入れるのです。

ここに入れるときは、私たちのような見学者の目を意識して、できるだけ表面がボコボコではなく、滑らかになるよう「美しく」雪室を作っているのです。
雪室の外観まで気にされるなんて、すヴぁらしいプロ意識ですね~!本名さんの仕事に対するポリシーを感じます。
この表面の美しさは本名さんの腕(!)があるが故にできた自慢の雪室なのです。
雪室の中はジンワリと寒い・・・って妙な表現ですが、入った瞬間は涼しくて気持ちよく、徐々に体が冷えてきて手先が冷たくなり、寒く感じるようになってきます。そして、まるで半袖やシャツ1枚では居られなくなるほど。
この雪室は集荷場での一時保管場所の冷気を作るためのものです。
雪室の向こうにはカスミソウの冷蔵庫兼開花室があります。雪室から送られる冷気が約7℃。雪室内は3℃ですが、配管などでロスがあるため、このくらいの温度になります。ここが冷気の通り道。この冷気と外気と合わせ冷蔵庫の空調(温度と湿度の管理)を行っているのです。

では本名さん、雪室を出たところで冷蔵庫を拝見したいのですが、よろしいでしょうか?
アレ??c(゚.゚*)。。。
本名さん?本名さァーーーん!
どこですか?キョロ(゚.゚*)(*゚.゚)キョロ
本名さんが消えた?
「ああ、ごめん、ごめん。メガネが曇って前が見えなくなっちゃった・・・」

雪室内ですっかり冷えて、出てきた途端に曇ったメガネで視界をふさがれた本名さんは、立ち往生されていました。

曇りガラスをふき取ったところで、冷蔵庫にご案内いただきましょう。
「冷蔵庫」といっても侮るなかれ、ただの冷蔵庫ではありません!「多機能冷蔵庫」です。

採花したカスミを出荷前に一時保管するばかりでなく、開花調整室にもなっているのです。
温度が下がってくる秋口や雨続きで水揚げが思わしくないときは、照度と湿度を調整し、ここで開花を促進するのです。
こちらは↓先ほどの雪室と外気をミックスして、カスミにとってちょうどよい空気を作り出す「ミキシングルーム」です。

(暗いのでうまく写真が撮れませんが・・・)
カスミにとって最も快適な空気は・・・
温度 13℃
湿度 65%
この状態をこの部屋で自動的に作れるようになっています。
天井にぶら下がっているこの大きな靴下のようなものは何ですか?

「ソックダクトっていうだ。靴下(ソックス)のソック。
カスミソウはデリケートで傷みやすい花だから、直風が当たるとすぐに傷んでしまうんだ。だから、このソックダクトを通してじんわりと、やんわりと風を送るんだよ」
なるほど~。送風のときには靴下がこのように膨らみます。随所に見られる商品品質向上への配慮ですね。

↓

そこで疑問が浮上。。.::・゚なぜ昭和花き研究会ではカスミソウを生産しているのか?なぜ会津で造形深く農業を営む菅家さんが、あえて選んだ品目はカスミソウなのか。
はいはい、それではお答えしましょう!(ウン探の出番です!)
菅家さんは学校をご卒業されてから、農協でアルバイトをされていました。
「3年間ね。集金やら練炭の配達やらだよ」
しかし、ココ昭和村ではもともと炭焼きと葉タバコの生産が盛んで、菅家さんのお父上は戦後からずっとこのようなお仕事に従事されていたので菅家さんご自身もそれを手伝うようになり、農協のアルバイトを辞めてから7年間は、葉タバコなどの生産に携わっていました。
ところが・・・!∑( ̄ロ ̄|||)!?
1985年、日本専売公社が日本たばこ産業株式会社(JT)に民営化するとき・・・電々公社(ナツカシッ!)がNTTに民営化、国鉄(コクテツ)がJR(ジェイアーゥ)に民営化されたその流れですね・・・JTから「昭和村のタバコは買いません」というお達しがあったそうな。
その理由は、昭和村のたばこの作付面積が少なく、不採算地域としてみなされてしまったからです。質は良いけど収量が不十分ということで葉タバコを生産し続けることが難しくなってきた。
そこで、隣の田島町で成功していた例に倣い、カスミソウの栽培を始めたというわけです。それが昭和花き研究会誕生のきっかけとなり、1984(昭和59)年設立。85年にはタバコ生産を止めた人たちが続々と仲間入り。
その時に菅家さんも声をかけられて昭和花き研究会に入ることになったのです。
1980年代といえば、カスミソウが一世を風靡していたころです。どのようなシーンでも花のあるところには必ずカスミソウが入っていました。
例えば・・・
山口百恵ちゃんの引退コンサートを思い出してください!
♪Thank you for your everything, さよならの代わりにぃ~

日本武道館で白いマイクをステージに置いて去っていったあの姿。
思い出してください、あの時、百恵ちゃんが頭に装飾していたのは・・・・
(諸事情により思い出せない方はすみません)
な、なんと カスミソウ!ギョギョッ∑(゜◇゜;)
そうだったぁ~!!アタシも今度、頭にカスミ付けよっと(-.-)
レコ大(レコード大賞)でもカスミとカトレアの組み合わせで、受賞者の胸にコサージュが付けられていました。
そうそう、そうだった!このように、昭和50年代後半はカスミソウの最盛期であったことがよくわかります。
「あの頃はカスミソウは卸値が1本300円くらいだったんだよ。まさにカスミソウ史上最盛期だね」
ナント、卸で300円とは空前絶後の奇跡的な価格!!
話を元に戻しますが、1985年に発足した昭和花き研究会は、5年間で総面積34ヘクタール、28年経った現在ではほぼ横ばいの32ヘクタール。2ヘクタールは自然減によるもので、減少は特筆には値しません。むしろカスミソウの需要は平成を迎えてから下降傾向だったにもかかわらず、ほぼ変わらない生産面積を維持できるというのは、スゴイことなのです。

時代の流行り廃りに振り回されず、よく同じ栽培面積を維持されていますね。
「うちはねずっと連作しているんだよ。発足以来ずっとね。でも連作障害が出たことはないんだ。土壌消毒も1度もしたことはない」
え??土壌消毒せず、30年近くも連作って可能なものなのですか?
「この辺りは多雪地帯でしょ。冬はハウスのテントを外すんだけど、そうすると積もった雪が解けるときに土壌を洗い流してくれて、土がきれいになるんだよね。だから消毒いらずなんだ。
MPS昭和花き研究会のうち私を含めて8人がに参加しているけど、評価は92点でA評価。
このような昭和村の自然を生かした農業を行っているけど、それを客観的に評価する尺度ってこれまでなかったでしょ。自分たちにとっては当たり前のことをしているのだけど、MPSに参加して(良い取り組みをしているってことが)初めて評価されたんだよ」
どちらの農家さんも病気を出さないように土壌消毒はなかなか苦心されていることと思いますが、ここ昭和村ではその自然の恩恵に充分にあやかり、化学肥料や農薬などを一切使わずに30年間栽培を続けているのです。
自然を生かした農業へのアプローチはそれだけではありません。
こちらをご覧ください。

腐葉土です。
これを肥料にしてポット苗用の土壌に使用します。
これらは昨年の秋に周囲の森に生えるブナやコナラ、ミズナラなどの広葉樹の落ち葉を堆肥にしたものです。
これに米ぬか↓を発酵剤として混ぜて置いておきます。
米ぬかはビタミンなので、落葉と混ぜておくと微生物が増え、臭くなりません。
苗土の3分の1にこうしてできた腐葉土、3分の1に地元で採れた籾殻を炭化させた籾殻くんたん、あとの3分の1に土を混ぜ、苗土を作ります。
(↓籾殻)

(↓籾殻くんたん)

(↓腐葉土と混ぜてできた土)

このように森(FOREST)の恵みにあやかり栽培出荷しているのが、品種名FORESTという商品。
「ポット用土は自分たちで作る」これが菅家流。
人工の肥料に頼らず、山や森で得たもの、日ごろの農業による産物を最大限に生かし、次の農業に再利用する。森との共存。
これが「生まれた土地で農業を行うということ」と菅家さんは言います。
なるほど~。先ほどの雪室といい、雪による土壌洗浄といい、自然のパワーを最大限に生かした農業ですね。また、電力を使わずに地元で採れるものを最大限に利用する地元農業の叡智には頭が下がる思いです。
今度はこちらをご覧ください。
これは森の広葉樹の切り枝ですが、何に使うと思いますか?


ヒント:昭和村の方々はこれを「手」と呼びます。
これを使って3メートル先の人の肩を叩く・・・
・・・わけではありません。ヘ(。。)☆\(゚ロ゚ )ンナワケナイヤローーーッ!
答え:野菜などを栽培する際の支柱として使います。

「手」と呼ぶのは、植物の生長に「手をくれる」の「手」です。特に蔓物は支柱によく巻きつきますから、直射日光に照らされ熱くなったプラスチックの支柱は植物に良い影響を与えません。

「オーガニックな畑はホームセンターには売っていない。
自分たちが森からの賜り物として毎年新しいものを頂戴してくる。ここに昭和村の農業の精神性や森とのかかわり方があるんだ」
福島第一原発が爆発したときには、親切にも周りの人から外国の土地を借りて生産できるようお手伝いのオファーがあったそうです。しかし、菅家さんはあくまでも“地元で”農業を営むことに意義を見出しているのです。
菅家さんが昭和花き研究会の会長になられた1995年、当時はバブル崩壊後でカスミからバラ生産に転向しろと言われたり、2000年ころにはトルコギキョウを作れとか、いろいろな方からアドバイスをもらったといいます。
「でも、作るものを変えたらそれまでに蓄積された努力は水の泡。作るものを変えずに、作り方売り方を変える。社会に合わせる。だからこそMPSに参加したり、エコファーマーを取得したり、染めカスミに取り組んだり・・・」
なるほど主軸はぶれてはいけません。商品は変えずに、商品の文化性を時代に合わせてシフトしていく。昭和村の農業の神髄ですね。
昭和村では、600年ほど前から(!)からむし(イラクサ科のカラムシという植物から採る繊維。麻に似ているが、漁網にも使えるほど丈夫)の生産が盛んで、「からむし織の里」と呼ばれています。


紡績が得意な日本でこのからむし織は大変盛んになり、昭和30年代までは全国で行っていました。
しかし、現在では八重山と石垣、宮古とここ昭和村でしか行っていません。なるほど、昭和村以外は遥か南の離島ばかりです。
「そう、最後まで止めないことが価値の創造に繋がるんだよ」
アタタタッ(ノд-。)。三日坊主組のウン探取材班としては心に響きます。ズシーン!
なるほど、だからこそ昭和花き研究会は発足以来栽培面積を減らすことなく、カスミソウの生産に特化し、そのメンバーのほとんどがカスミソウの専業農家としてやってこれているわけですね。全国でもカスミの生産地として確固たる地位を築いてきたのです。
それは頑固一徹に一つものを作り続ける職人というのとは違います。社会の要請に応えるために、その商品の作り方やPRポイントはシフトさせます。移り気な時代に対して都度生産品目を変えていたら生産者としてのアイデンティティーは失せてしまいます。ならば商品の付加価値を変えて売っていこうという考えなのです。
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消費者の皆様へお伝えしたいこと 原発の影響は?
ご存知の通り、本年3月15日福島第一原子力発電所は、世界に甚大な影響を与えるほどの深刻な爆発を起こしました。
続く3月25日、原発からの距離に関係なく福島県下全域で土壌の安全性が確認されるまで農作業は中止という要請が出されました。ちょうどカスミソウの定植の時期に当たるにもかかわらず、農作業ができずに大変歯痒い思いをしていました。
4月20日安全宣言が出され、菅家さんは翌21日に定植しました。
ですから定植後50-60日で出荷するはずの6月、及び七夕前までの出荷量は半減してしまいました。菅家さんも少なからず原発による被害を被っています。
しかし、菅家さんの出荷に対する姿勢は前向きです。
現在出荷しているカスミに関して、青果物などの放射能測定を行っている横浜の某大手研究機関に放射能検査を依頼しました。
すると6月21日付けでこのように報告されました↓

何と書いてあるのでしょうか。

昭和花き研究会宛てね、フムフム。
分析結果は・・・?
NDとはNot Detected=検出されなかったということです=^-^=うふっ♪
加えて「結果注釈」 ヨウ素 セシウム 不検出とまで書いてある。

更にはダメ押しのように「本会のカスミソウを検査した結果、上記の通り安全です」って(≧∇≦)!!

ヤッタ(*^^)v
昭和花きのカスミは安心安全の商品であることが第三者機関により証明されました。
定植遅れから、まだ出荷量が少ないのですが、7月11日からは通常の出荷量に戻りますので、引き続き応援のほど宜しくお願い致します!
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蛇足的ですが・・・
カスミソウの名前の由来は、ご想像の通り全体に白く「霞み」がかった感じになることから。
地中海沿岸原産で、日本へは1879(明治12)年に入ってきました。その頃の名は「コゴメナデシコ」。
「コゴメ」とは、お米を収穫したときにできる規格外の小粒のお米のことです。小粒のコメだから「コゴメ」。「小米」と書きます。
カスミソウがこれに似ていたことから、当時このように言われました。なかなか言い得て妙ですね。
しかしながら昨今のカスミソウはお米の何倍も大きく小米どころではない。名前も変わるわけだ、コリャ。
更に進化して最近のカスミソウは、もはや“霞みそう”ではないんちゃうかと思うくらい大輪で存在感大。ダイズナデシコくらいの勢いではありますが、これはそれほど美しい名前ではありませんね・・・^_^;
なるほど、菅家さんのカスミソウもこんなに大輪。
左は大田市場で見つけた他産地のカスミソウ。右は菅家さんので、任意に選んだ一輪です。
<大田市場内> <菅家さん>

こんなにも違うんですね。
ん?コゴメナデシコ・・・「ナデシコ」?
コゴメは理解したとして、ナデシコって何?
そうです。カスミソウはナデシコ科なのです!
良く見ると、カスミソウの節はカーネーションの節にそっくり!

そういうことでしたか、カスミソウがエチレンに弱い理由。カーネーションもそうですが、ナデシコ科には内性エチレンを出すものが多く、出荷元での前処理が必須になります。納得、納得(゚ー゚)(。_。)ウンウン
猛暑日続き、湿度100%近い暑い暑い東京から昭和村への逃避行は、1日限りの避暑取材となりました。
こちらはこの地域の皆様が飲料水としている水です。

なんとも透き通っていてキレイ! “ちべたーーーーいッ(≧∇≦)”

昭和村からの帰り道はまるでカスミソウが道路に咲いたかのような霞。
なんとも幻想的です。



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昭和花き研究会の格言!
・ 採花後20分以内に前処理剤に浸けるべし。
そのためには、圃場で前処理剤のバケツに入れるのがGOOD!
・ 染めカスミは白いカスミの品質改善手段でもあると心得よ。
前処理剤を吸収しているかどうかは、染料を吸わせないとわからない!
つまり、そのカスミが長持ちするかどうかは染料が証明してくれるということなのでアル。
・ 時代に合わせてチェンジするものは、作付品目ではなく商品の文化性とPR方法。
最後までその品目を作っていれば、トップになれる!
・ 地元で農業を営むことの精神性を見直してみよう。
大地に感謝し、自然の恩恵と森の恵みで持続可能な農業を実現すべし。
皆さん、森を大切に♪
今日の四字熟語
・ 高温障害
・ 栄養生長
・ 生殖生長
・ 花芽分化
・ 到花日数
・ 小米撫子(=コゴメナデシコ) カスミソウの旧名でした。
・ 菅家博昭 さん また逢ふ日まで。
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さて、ウン探はバラの生産者さんを訪問しました。やってきたのは“つ:鶴舞う形の群馬県!”(『上毛カルタ』http://www.jomokaruta.org/)
あれに見えるは赤城山~!ってちょっと霞んでいましたが、空気が澄む冬などは、麓のおうち1軒1軒までクリアに見えます。

す:裾野は長し 赤城山
前橋市は関東平野の北西の端に位置します。ちょうど関東平野が終わりを遂げるところにあるわけですね。
少し話が逸れますが、“鹿沼土”というのは園芸界であまりにも有名ですが、ご存知の通り栃木県の鹿沼から採れた土のこと。実はこの土、赤城山がその昔噴火を起こしたときに、西からの偏西風が吹き、栃木県に舞い降りてできたものです。栃木の土ですが、群馬県のここ赤城から飛んで行ったものなのです(!)
もしかしたらその時の風向き次第では、"前橋土"とか"日光土"とか呼ばれていたかもしれません。


はい、ここで話を戻しますが、この前橋は群馬の典型的な農業地帯で、昔から米麦養蚕(べいばくようさん=米と麦と養蚕)が大変盛んです。アノ国定忠治も赤城山の麓に農家の長男として生まれ、まさに米麦養蚕業に励んでいたそうです。
「赤城の月も 今宵限りか あれぇ~」
上毛カルタでは前橋が次のように詠われています。
け: 県都前橋 生糸(いと)の町
ま: 繭と生糸(きいと)は 日本一
昔ほどではありませんが、繭を作るお蚕の大好物である桑の畑は、現在でもこの周辺にたくさんあります。

さて、今回はその前橋でバラを生産する前橋バラ組合にお邪魔させていただきました。

前橋バラ組合の圃場は赤城山の緩やかな南斜面
にあります。赤城の麓なので土壌は火山灰が多く、傾斜と相まって、大変水はけが良いのが特徴です。
また、ら:雷とから風 義理人情というように、強いからっ風が吹き下ろします。からっ風とは、冬場に日本海側から流れてくる湿気を持った空気が新潟県と群馬県の境にある高い山々にぶつかり、日本海側で雪を降らせ、山より東側に吹き下りてくる湿度のない強い風のことです。

群馬のからっ風のことを「赤城おろし」ともいいます。
ここ前橋で農業をするときは、このからっ風さえクリアできれば、群馬県は冬場の日照量は全国第2位、災害も少なく、農業には最適な場所
・・・とおっしゃるのは、前橋バラ組合の組合長の大澤憲一さんです。大澤組合長はJA前橋市の代表理事専務という大役もお務めでいらっしゃいます。

大澤組合長のおっしゃる通り、バラの場合は施設栽培ですから、からっ風は態勢に影響なし!大変環境に恵まれている土地柄といえるでしょう。
前橋の環境が良いことはわかりました。では、その土地でどのようなこだわりを持って栽培しているのでしょうか。
こだわりは、なにしろ土耕栽培ということです。
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「植物は長年土で育ってきたのだから、土で育てるのが基本なんだよ。ロックウールなども良いのは分かるけど、長い植物の歴史の中では最近現れたものだよね。人間が植物に合うように作ったものでしょ。植物のことを考えたら、結局は土が一番いいんだよね」
メリットは以下の2点。
① 水や肥料を保つパワー(保水性・保肥性)に優れている
=「置換容量(ちかんようりょう)」が高い
② 断熱効果が高い
①「置換容量」ってなんですか(゚_。)??
なんだか耳慣れません。。。
「土が持つパワーのことだよ。
肥料分を土中に蓄えたりする力。土耕栽培なら他の人工培地よりもこのパワーが強いんだよ。だからいいものができるんだ」
②断熱効果って必要なのですか?←シロウト(-.-)
「バラの場合、地温は20-22℃くらいが適温なんだ」
ふむふむ、夏場はそれ以上に暑くなることが頻発しますね。するとどうなっちゃうのですか?
ピカーン!
「これ以上暑くなると生長が止まるんだよ。人間でも暑いと疲れるし、動きたくなくなるでしょ。植物も仕事をしたくなくなるんだよね」
なるほど、暑いとダレやすいのは植物も同じだったのかぁ・・・

「ロックウールやヤシガラは土に比べると断熱効果が低いんだよ。だからそれらを使う人は、一緒に段ボールも使ったりするでしょ。土は1cmでも敷けば断熱効果が全く違うんだ。暑さ寒さに強いんだよ。
ロックウール栽培をしている人は、昨年の猛暑で株が枯れてしまったという話をよく耳にしたよ」
なるほど、昔の日本家屋でも、土壁を使って、寒暖の差が激しい日本を快適に過ごすという工夫がなされていましたね。土耕栽培を取り入れている前橋では、歴史的な暑さを記録した2010年の夏でも、株が枯れるという悲運とは無縁だったのです。
土が持つ自然のパワーを利用する!これが前橋のポイントのひとつです。
今年の夏も期待できます!
ここで、もうひとつポイントをご紹介します。
前橋バラ組合は土耕栽培でも、ただの土耕栽培ではありません。
「少量培地(しょうりょうばいち)」といって、プランターで栽培する方法を採っています。
プ、プランター??
プランターって、あのプランターですか??
ま、まさかね。私がイメージする普通のプランターで日本屈指の品質のバラができるわけが・・・
^_^;ナイナイ。
う~ん、百聞は一見に如かず。ちょっと拝見してみましょう。

な、なんと!!∑(゜◇゜;)

本当に家庭用のプランターではありませんか!

え?チョット、チョット ・・・キョロ|゚Д゚*||*゚Д゚|キョロ
豪華なバラの足元は、“大地に根を張る大きな木”のイメージを覆すコンパクトな家庭用プランターを発見!これは農業界のパラダイムシフトか??
中国の纏足(てんそく)を思わせる小さな足元。これに植えて、高品質のバラを生み出しているというのでしょうか!?
どして?どしてぇ??どうしてそんなことができてしまうのでしょうか?
根っこというのは、①木を支える根(=主根)と②肥料を取りに行く根(側根、ひげ根)の2つのタイプがあります。
①はその株を支える根でこの根が、底に着くと生長が止まり、代わりに②の根が生長してきます。すると、花芽の分化が早まり花を早く咲かせることができるのです。
プランターではなく、直に地面に植えるとバラの根は勢いがありますから、どこまででも主根が深く突き進んでいってしまいます。それを想定して、最初の土壌づくりのときは、ものすごく深く土を起こす必要がありますし、それでは改植も大変です。
ではどうすればいいかというと、①と②の根のバランスを取ることが大切なのです。
それを考えた時に出た結論が、“少量培地”というプランター栽培。ホームセンターに売っているフツーのプランターにバラ苗6株を植えて栽培します。
前橋で使っていたのは幅18cm×長さ60cm×高さ15cmのプランターで、土量にして12リットルですから、1株当たり2リットル(ペットボトル1本ですね)の土で栽培しているわけです。
そう考えると少なくないと思われるかも知れませんが、1つの株から年間平均20-25本のバラを切って、4-5年で改植するわけですから、およそ100-140本のバラを出荷するのに、土2リットルです。
人で言うと畳2畳の生活といったところでしょうか。ですから「少量」培地といいます。
う~ん、結構窮屈そうなイメージですが、これ以上多すぎても少なすぎても少量培地の効果が薄れてしまいます。だいたい5-6株くらいが適しているようです。
あれ?この土の下に敷いてある白い布はなんですか?

「傘の布地だよ」
か、かさッ?(。_。).。??
「傘は水をはじくために油でコーティングして被膜を作っているけど、これは加工していない元の生地なんだ」

どうして傘の生地をこのようなところに使うのでしょうか。
「防根シートとして使うんだよ。普通の布ではバラの根が元気だから突き破って外に出てしまうんだ。これだったら大丈夫。肥料とか土とか有効なものだけはしっかり確保して、余分な水は流れてくれるんだ。根っこもしっかり止まる」
なるほど、これは考えましたね。
傘の生地なら水はけをキープしながらも、勢いが強い根はしっかり止まるようにできるのです。
実は、前橋バラ組合でもかつては地面に植える通常の土耕栽培をしていました。しかし、これでは連作障害の心配もあるし、植え替えの労力も本当に大変なものです。
そこで試行錯誤を重ねるうちに、この結論に辿り着きました。少量培地ならプランターをササッと置き換えるだけですから、作業性の改善という意味もあるのです。
高いところに張ってあるネットや頑丈そうな支柱は、以前の土耕栽培の名残です。

いや~、それにしてもすごいですね。世界のバラ生産者の中でも、ここまで細かく観察して生産の工夫を凝らしている方っていらっしゃるのでしょうか。日本人だけでしょうか。それとも前橋の方だけでしょうか。与えられた環境と、限られた資源や土地で、最大限の商品を作るために創意工夫を凝らす力というのが備わるのでしょうか。脱帽です。
いずれにしても日本の生産レベルは世界のトップレベルということが窺えます。
はい、少量培地による土耕栽培というのが2つめのポイント。
ん?これはどうしたことでしょうか。
打ちひしがれて、がっくりとうなだれているバラたちがいらっしゃいます。

挫折組でしょうか?┐(-。ー;)┌ヤレヤレ
「挫折組じゃなくて、“ハイラック”っていうんだ。きちんと名前が付いているんだよ」

と教えて下さったのは同じく前橋バラ組合の吉原一郎さん。大澤組合長がお忙しくて留守がちな場合は、吉原さんが組合を取りまとめます。
あ、すみません。“ハイラック”ですね!
インプットしました(*`◇´*)ゞラジャ!
で、ハイラックって???c(゚.゚*)。。。
「“ハイ(high)=高い”、“ラック(rack)=台、棚”でしょ。だから、高いところにある台ってことなんだ。つまり作業をするときの高い台。いつも同じ高さで作業できるように、植物の生理と人の作業性を考えて考案された栽培方法なんだよ」
バラはどんどん上に↑上に↑伸びていく性質を持っています。そのとき、「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質を持っていて、最も高い部分(頂き)から伸びていこうとします。
出ました4文字熟語。これは必須単語です。
つまり、ここで折り曲げた場合は、この折り節が最も高くなるわけですから、ここから新しい芽が出て上に伸びていこうとするのです。
一度ここで倒すと、生長点が横にした長さだけ低くなるので、作業がしやすくなるのです。
放っておいて、どんどん高くなってしまったら、作業するのに梯子も必要ですし、作業効率が悪くなります。そこで、生長途中で一旦折り曲げておいて、高くなりすぎないようにするのです。これをハイラック仕立て法といいます。

横に倒したこれらの葉は、より広い面積で太陽の光を取り込み、栄養になります。
これも全てを倒すわけではありません。1株から立つ3-4本の枝のうち、1本かせいぜい2本。全てを倒すと新芽の生長が鈍くなってしまい、逆効果となってしまいます。この辺りに腕の良さが出てくるのでしょう。
はい、ここで本日はもう一つ4文字熟語を学びましょう。
「採花母枝」(さいかぼし)です。
“採花母枝”とは出荷できる花をつける枝のことです。

コレのことですね→

↑この場合は1株に3本の採花母枝があることになります。

↑この場合は4本。
一つの株からたくさん花を切ろうと思って多くの採花母枝を仕立てれば、それだけ花が採れ、効率が良いかもしれませんが、実際には花が小さかったり、品質が劣ったりします。何より大きくて丈夫な花を1本採るということであれば、採花母枝は1本でいいのかもしれませんが、それではなかなかコストを回収するほどの利益が出ません。
そこで、採算ベースに乗りながら、品質の良いものを収穫するには、1株から3-4本くらいの採花母枝を仕立てるのが良いとされています。1年に採花母枝1本から通常7回花を切ることができます。
3本の採花母枝 × 7回採花/年間 = 21本/年間(およそ)
先述した「1年間に採れる本数が21-25本」というのは、つまりこういうことなのです。
こちらは点滴チューブ。

病院の点滴のようにポタポタと少しずつ養液(養分を混ぜた水)を流せるようになっています。
こちらはコーナーウィール・・・とでもいうのでしょうか。

基本的には、消毒の際このマシンで自動で行うのですが、


葉の裏や細かいところなど、機械では行き届かないところはホースをグイーンと中の方まで伸ばして手動で消毒をします。その時にコーナーに引っかからないよう、このウィールがあるのです。
う~ん、うちのオフィスにも掃除機をかけるときに欲しい^~^!
難しいボキャブラリーをたくさん詰め込んだところで、ちょっとひとやすみ。
3.11の震災以降、前橋バラ組合が抱えるジレンマについてのお話です。
・・・前橋のジレンマ・・・
前橋バラ組合ではCO2排出削減のためにヒートポンプを購入、国内クレジットの売買契約を某大手電力会社と交わし、CO2排出削減にも貢献しながら、冬場の品質を確保していたところでしたが、なんと今年の夏は東日本大震災で消費電力15%の削減目標が・・・。これも達成できない場合はペナルティがあるそうで、冬場は燃料を使用しないようにしていたのに、今度は電力を使わないように・・・だなんて(:_;) せっかく今まで燃料を使わないよう奨励されてきたのに、今度は電力までもですか。少しでもよいものを消費者の皆様にご提供しようという前橋は、ジレンマと闘っています。
閑話休題、前橋バラ組合のこだわりは生産だけに留まりません。

まず採花。
「我々は1日3回切ります。」
えッ??(゚∇゚ ;)エッ!? 3回も?バラの場合は多いところでも1日2回だったりするのですが・・・一体、何時に切るのでしょうか?
「6時、11時、16時の3回だよ」
と吉原さん。
え、6時って朝の6時ですか??
「そう、朝5時半から切る人もいるよ。みんな早起きでね。冬の日の出が遅い時なんかは、ニワトリを起こして働き始める人がいるよ(笑)」
な、なんと!∑(゜ロ゜)ギョエ!!
ニワトリより早起きだなんて、皆さん働き者です。
それにしても、3回に分けて切る理由は何でしょうか。
「すべての品種で切り前を揃えるためだよ。バラは品種によって、
1. 朝開くもの![]()
2. 太陽光に反応して開くもの
3. 時間が経って開くもの
と大まか3つに分けられるんだ。それぞれの品種を見極めて、切るタイミングを図るんだよ。」
いや~、恐れ入りました。さすが観察眼が鋭い!
よく見ていらっしゃいます。ここまでできるのって日本人だけ?それとも前橋の人だけ?いずれにしても、いやぁ、参りました。
採花の次は「選別」。もちろん選別にもポリシーがあります。
「第三者による選別」です。

選別をする作業室には、前橋の生産者さんはほとんど足を踏み入れません。「良いものは良い、悪いものは悪い」と第三者による客観的な評価をし、選別を行うためです。その際に最も重視するのは「切り前を揃える」ことです。バラの場合は展開しているときのどのステージで切られたものかで評価が大きく変わるのです。

冷蔵庫をご案内くださる大澤会長

選別をする前もした後ももちろん冷蔵庫で保管します。
選別が終わったら次は梱包です。拝見していると・・・・[壁]д・)ジーーーー
なんだか完成させるまでの動きが少ない・・・。
業務を限りなく効率化し、必要以上に花を触ったり、動かしたりしていません。イメージ的には“サッ、サッ!”とやっているように見えます。動きの工程が、1作業に1つか2つかといったとてもスピーディで手際の良い印象です。

テープを早送りした「早い」というのではなく、工程数が少なく作業がスムーズなのです。

「そうなんだよ。花を動かせばそれだけ傷つくということだから、花への接触や移動は最小限に留めるんだ」と大澤組合長。

足元には水がこぼれないように作られたバケツを入れて、輸送中水が切れないように対処しています。


梱包の後は、市場への輸送ですね。“市場に届くまでが自分たちの責任”と輸送への取り組みも余念がありません。

選別の後梱包された商品は、速やかに台車に積まれ、その台車ごとトラックに積まれます。

それも作業場と繋がる扉からではなく、こちらの別の扉を開けると、搬出専用のトラックのプラットフォームになるのです。

う~ん、トレビア~ン♪
さすが、花の女王であるバラを傷つけないために、全ての過程において仕組み作りがなされているのです。

そして最後に、消費者の皆さんのところできれいに咲くようにした“咲き切る工夫”。

「まずは品種特性を知ることだね」と吉原さんはおっしゃいます。
もともとの品種による花保ちの差もありまし、開かせて出荷した方が良いもの、少し硬め(ツボミに近い状態)で出荷した方が良いもの。それぞれの品種に合わせた切り前を調整します。



そして水揚げはここ前橋の“きれいな水”で!![]()
切ったらすぐに前橋の奇麗な地下水に浸けて水揚げを行います。
実はその「すぐに!」がポイントなのです。どのくらい「すぐに」か?
バラは切られた瞬間に、切り口から空泡が入ります。この空泡がどんどん上にあがってきて、ちょうど首のところに来ると、ベントネックなどの症状を引き起こしてしまいます。
この茎の中の空泡がたくさん入り、水が入っていない部分が長かったりすると、ベントネックになりやすかったり、花保ちには大変悪影響を及ぼしてしまうのです。ですから、いかに短くして、水揚げをするかが勝負なのです。この勝負次第で、お客様のところでの花保ちに変わってきます。
それにしても地下水を使う必要性はあるのですか?
「地下水はカルキ分のない自然の水でしょ。植物にはいいんだよ」
何を隠そう、前橋の水はおいしいと全国でも有名なのです。
赤城山麓の水がペットボトルでも販売されていますが、その昔ペットボトルが普及する前に、缶コーヒーならぬ缶ウォーターが全国に先駆けを発売されたのもこの前橋市の水なのです。
そのようなおいしい水をたくさん飲んだバラは幸せだわ~+。*。+圉+。*。+☆□★+。*。+圉+。*。


ここまで仕組み作りができている前橋バラ組合の農業は、市場においても高い評価を得ていて、当然のように若い世代にも魅力的に見えるものです。
ですから魅力的な農業を実現している前橋バラ組合では、20代から40代前半を中心とした次世代が続々と育っています。
皆さんとても仲よし。全員で足並みを揃えていこうという協調性のある方々なのです。
それにしても、そもそも大澤さんがバラに出会ったきっかけは何だったのでしょうか。

昭和41年に農業高校を卒業された大澤さんは、その際に進路相談の先生から派米(米国に派遣)農業研修生制度というのがあるが、行ってみないかと言われました。米国での農業研修制度がとても魅力的に感じ、迷わず申し込んだといいます。研修制度の中でもいろいろとコースがあり、花の中でもバラコースを選びました。
“花では食べていけない。花を作る人は変わり者”という論調がまだまだ強かった時代にもかかわらず、そこで花を選んだ理由は何だったのでしょうか。
「先輩も何人か花をやっていたし、食べられないとは思わなかった。何よりやっぱりきれいだしね。
食べられるか食べられないかよりは、花が好きだった。だから花なんだよ。」
何年行ってらっしゃったのですか?
「2年。」
きょえ~w(゚o゚)w ワオー!
2年も米国(オレゴン州)に行ってらっしゃったなんて、それはもう英語ペラペラですね。バイリンガルの花農家さんて、かっこいいな~。

「米国に行ったら行ったで、それも大変。楽しかったけどね。真珠湾攻撃が記憶に新しい世代がまだまだ多くいた時代だし、有色人種差別も普通にあったからね。街で突然怒鳴られたりもしたよ(笑)」
その時に感じたことは?
「いろいろ経験を通して覚えたよ。欧米の雑誌を見ると、住居や花の写真などがたくさん載っていてね。高度成長期にあった日本も、いずれこうなるだろうと思ったんだよね。
日本が豊かになったときに、食べ物はお腹いっぱいになったらそれ以上はいらないけど、花の需要には天井がなくて、1人が2倍が欲しいといえば、純粋に需要も2倍になるわけでしょ。そこに花業界の将来性があると若いなりに思ったんだよね」
豊かになりつつあった日本を肌で感じていた大澤組合長は、生活文化面で先を行っていた欧米に日本の将来を重ね合わせていたのかもしれません。
そうして2年の研修を終えて帰国された大澤組合長は、昭和44年いよいよ自らバラの生産を開始します。
「ところが、自分でやってみると大変だったのなんのって・・・」
ハウスを建てるのにも十分な資金がなく、土地を売ってまで資金を集めたといいます。
「米国で仕事をしているときは、何(WHAT)をどのように(HOW)行うかは教えてもらえましたが、自分で農場を始めるときはWHATから決めなくちゃならないでしょ。“何をするか”から考えるのだから大変なんだよ。」
施設を建てたら今度はバラ苗の入手が困難!
当時は今のように簡単にはバラの苗は手に入らなかったのです。
「最初に建てた施設600坪を埋めるのに、2年かかったよ。当時のバラの先輩などに譲ってもらったりしてね。仲間や先輩、行政に恵まれて・・・みんなに面倒を見てもらったよ」

と謙虚に当時を振り返ります。
これが大澤組合長のバラ作りの原体験となりました。
こうして昭和44年に個人で始めたバラ生産は、45年に仲間を迎え、50年代には上向きに伸びていきました。55年には3人で1,800坪の施設を建て、共同出荷を始めました。(東前橋温室バラ組合設立)
56年以降、さらに仲間が増え、現在は12名にて約13,000坪、およそ70品種のバラを出荷するまでになりました。
広い圃場で皆さん作業中でしたので、全員集合とはいきませんでしたが、お集まりいただいた前橋バラ組合の方々で集合写真です。なかなか若い方が多いでしょ♪

「大切なことは助け合い。自分だけ良ければいいのではない。一人でできることは限度があるが、協調の精神を忘れずにみんなでやれば、相乗効果で個人の力の純粋な総和よりも大きくなる。コミュニケーションを取って自分の持ち場は自分で守る。これが“協同”の基本だよ」
前橋バラ組合の基本精神です。
大澤組合長にとっては「バラそのものが生活であり人生」。“バラ色の人生”とはこのことを指すこともあるのでしょう。
ろ:老農 船津伝次平(ふなつでんじべい)
船津伝次平とは、ココ前橋市出身の篤農家です。「明治の三老農」の一人で、従来の日本の伝統的な農業に、西洋の近代農法を取り入れ、この農法は全国に普及していきました。
なんだか赤城に流れる農業の才腕を感じます。
前橋バラ組合の格言
・ 人間よりも遥か前に生まれ、悠久の時を生きてきた植物は、ほかならぬ土に根を張ってきた。
土が持つ自然のパワーを利用し、やはり土耕栽培が鉄則と心得よ。
・ 土耕栽培で全国でも記録的な前橋の猛暑でも品質を維持すべし!
・ 少量培地で側根を発達させるべし。収量が上がり、栽培効率アップします。
・ 採花は1日3回。品種特性をよく観察して、それに合わせて採花のタイミングを図るべし!
・ 赤城の太陽と土と地下水を有効活用すべし!
・ 出荷作業は最少工程数にて!触れば触るほど、バラは傷つく!
スムーズな仕組み作りを実現すべし。
消費者へひとこと
毎日バラのある生活をしてほしいけれども、なかなかそうもいかないご事情もあるでしょう。せめて、記念日にはバラを使ってみてください。家の中でふと目をやるとそこに花がある、そんな生活をしてみてください。
お花屋さんへひとこと
店頭に並ぶ花は日々ご覧になっているかと思いますが、生産現場を知らずに、販売のときにご苦労されるお花屋さんはたくさんいらっしゃると思います。私たちはオープンですので、いつでもいらしてください。
今回学んだ四字熟語
「土耕栽培」(どこうさいばい)・・・人工培地ではなく、土に植えて植物を育てる一般的な栽培方法。
「置換容量」(ちかんようりょう)・・・土が持つ保肥パワー。
「少量培地」(しょうりょうばいち)・・・プランターなどの限られた容量の培地、またはそのような培地で行う栽培のこと。バラの場合は栄養を吸収する側根が発達しやすくなるため、収穫効率が良くなることが期待される。
「頂芽優勢」(ちょうがゆうせい)・・・その枝で最も高いところから上に伸びていくという植物の特性。
「採花母枝」(さいかぼし)・・・収穫用の花を付ける枝のこと。
「前橋バラ組合」・・・群馬県の赤城山の麓、前橋市において、全国でもトップレベルの品質のバラを作る生産者の集まり。次世代が育ち、技術も協調性もある精鋭生産グループ
・・・あ、これは四字熟語じゃなかった^_^;
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さて、香川県シリーズ第3弾です。
母の日前特集で前回からカーネーションリレーをしています。
花業界では決して無視することのできない年間一大イベントである「母の日」が目前に迫ってきました。全国各地のカーネ―ション産地はこの母の日に向け、今一生懸命準備中です。
カーネーションをご利用される皆様も、この産地ウンチク探検隊をご覧頂いて、ぜひもう一度カーネーションの生産に関するノウハウを少しだけインプットしていただきたいと思います。
今回やってまいりましたのは「JA香川綾歌(あやうた)南部」(以下「綾歌」)です。
綾歌のカーネーション栽培は森さん、岡田さん、岡内さんの3軒から成り、次世代後継者とともに生産に取り組んでいます。
3軒合わせてハウス10棟、延べ床面積6,000坪、栽培面積3,000坪、総生産品種は50品種にもなります。

はい、早速ですがここで一つお勉強です。
ハウス内全てを指す延べ床面積をカーネーションの場合「建て坪」、そのうち花が植えてある実際の栽培面積を「植え坪」といいます。

建て坪に対し植え坪50-60%くらいが平均です。前回の香花園さんは60%でしたが、綾歌さんは50%くらいのようです。(どちらが栽培に良いということではありません。念のため)
JA香川綾歌としてカーネーションの生産を始めたのは平成元年。
“それまでも花生産一筋48年!”というのは岡田さんのお父様である岡田義美さん。

「日本の花文化は確立していて、既に何百年も続いている。これからも廃れることはないだろう」との見通しから花生産に携わっています。カーネーションを選んだきっかけは、当時日本花き生産協会カーネーション部会の部会長をお勤めであった香花園の真鍋さんが近くにいらしたので、指導してもらえるからということでした。他の生産品目も案はありましたが、近くに指導者がいらっしゃるカーネーションを選んだというわけです。
さて、平成元年にカーネーション栽培を始めたこの綾歌には、どのようなウンチクが隠されているのでしょうか。
まずは生産から伺ってまいりましょう。
3軒がそれぞれの方法で生産していますが、森さんは100%ロックウール栽培をしています。
(中には土耕でやっている方もいらっしゃいます)

こちらは森健人さん、27歳。
「栽培はロックウールとピートモスを使い、改植は毎年。毎年ゼロからスタートするんだ」
同じ香川でも前回の香花園さんは土耕だったかと思いますが、ロックウールを使うメリットは何でしょうか。
「改植のときに時間短縮ができるんだよ。ロックウールは1ベンチずつ蒸気で消毒していくんだけど、この作業を1日で仕上げることができるんだ。一気に消毒、一気に定植して、その日のうちに次期に向けたスタートができるわけだから、効率的でしょ」
なるほど、これは作業効率が良いですね。労働力と時間が短縮できるというのは、ひとつの大きなアドバンテージですね。
「6月のブライダルシーズンでも“白が欲しい”というリクエストがあれば白を残して、別のところから改植を始められるという作業メリットを得られる。皆さんが欲しい時に買っていただいて喜んでいただくために、1年の中でもできるだけ長い期間、良い品質のものをご提供するための選択だよ」
そうですか。消費者のニーズを思ってこその選択なのですね。
栽培のときに注意していることはありますか。
「生き物やし、結果は正直に出る。肥料も含めて、天気に合った管理をしないとな。
同じカーネーションでも品種によって全然特性が違うから、それをつかむまでに試行錯誤。毎年変えていかないといかん」
何かコツとか勘どころってあるのでしょうか?
「6-7月に定植するんやけど、水も肥料も一気にたっぷりとやる」
え?“たっぷり”ってそんなことアリですか?∑('◇'*)エェッ!?
「そう思うやろ。普通は何でもエサを少なめにして、強く育てるんやけど、うちはちょっと栄養過多にするんだ。
そうすると枯れたりするでしょ。それでも残った良い株を育てていこうっていうエリート教育なんだよ」

あえて過保護にしてスポイルされた子はサヨウナラ(^_^)/~~サヨナラ
それでも逞しく生き残る子だけを育てるって、そういう方法なのですね。
そういうのって誰から教わるのですか?
「他産地にお邪魔して勉強させていただいたり、本を読んだり・・・まあほとんどは独学だよ」
お父様から聞いたり?
「こんなことは親父にも聞けん。プライドかな?親父に聞いたら親父を越えることはできん。」

おっと、森健人さん27歳、“親父越え”を目指します。
こちらは森さんのお父上。壁は高そうですよ~。

ここ綾歌でも、カーネーションの葉にはしっかりワックスが載って、葉がクルンクルン@@しています。


このことを生産メンバーのお1人、岡田浩二さんが分かりやすく説明してくださいました。
「ワックスは植物が自分自身を守るために出すもので、これがあるということは病気にも強いということなんだ。人間でいう皮脂が固まって白くなったものだよね。成分は油分だから水もはじくしね」
では葉のクルンクルン@@は?
「栄養状態が良く、ストレスが少ないとクルンと巻こうとするんだ。ストレスが強いと葉を伸ばそうとする。
葉を巻いても十分生長できるくらい栄養状態が良いということなんだよ」
なるほど。そういうことでしたか。“若くて元気で丈夫!”これはもうなんだかアタシから見ても「3大羨ましい」の全ての要素が入っていますね。
綾歌のカーネーションから若さと元気と丈夫さをいただいてしまいましょ!(o^∇^o)ノ
前回特集した香花園でもそうでしたが、綾歌でも炭酸ガス発生装置を使っていました。
コレコレ。


香花園さんと同じこのようなものから、森さんのところでは高価なマシンもご購入されたそうです。
(↓コレ、ホント、タカイ。そう見えないけどウン十万円;)

「きちんと一定量の炭酸ガスがあると生長も促進され、節折れしにくくなるんだよね」
そうそう、カーネーションといえば、お花屋さんでも花瓶から取ろうとするときにポキッといっちゃうんですよね。特にスプレー
・・・
これはお花屋さんにとっても悩みのタネですよね~*´Д`*
「品種特性もあるんだけどね。高かったけどこのマシンを導入してから秀品率が高くなったんだよね。今は90%が秀品」
出ました秀品率90%。なんとスゴイ!

ていうか、森さん、先ほどからお話をしながら何をされているのですか?
「芽かきだよ」
芽かき?
「そう、余計なツボミを取り除くことだよ。スタンダードもそうだけど、スプレーは次の芽がどんどん出てくるからね。

付いたままだとカッコ悪いし、極論だけど1本にツボミ10輪、花3輪だと結局お花屋さんでツボミを取らなくちゃいけなくなるよね。
取るときは葉が出ている方向と垂直の方にポキッとおると簡単に折る。
でもきれいに節から折らないと、完全に取りきれていないからそこからまた芽が出てきちゃうんだ。

2番花、3番花が出てきたら、1番花は必ず取る。すると2と3に栄養がいく。
2と3だけになるけど、あとから必ず4番花が出てくる。

そこでこの4を取るんだ」これが芽かきの手順です。
チョットチョット、ヾ(゜、゜*)コレなんですか?
御座のようなものがこんなところにありますが、何のためのものなのでしょうか。

「圃場で切ったカーネーションをこれに巻いて作業場に運ぶんだよ」

なるほど、でもなぜ、い草なのでしょう。
① 大きいから一度でたくさん運べる。→作業効率が良い
② 自然素材なので、素材が丈夫→耐久性が良い
③ ビニールに比べると、い草で巻いた方が花傷みが少ない→品質保持性
④ 入手しやすい→商品確保、流通性
などということのようです。
日本にある資源を有効に使うということは良いことですね。

収穫したものをこのようにい草マットに巻いて集荷場に持っていき箱詰めします。

このい草マットは出荷準備の作業台にもこのように使われています。


お邪魔した時はまさに出荷のピーーーーーーークッ!


皆さん黙々と作業されて、物音だけが作業場に響きます。
スゴイスゴイ。






おっと、大田花き行き発見!

(・_・).....ん?この青い大きな器はなんじゃ(・_・?)


夏の子供用プールか?そういえば森さんも岡内さんも岡田さんも育ち盛りのお子さんがいらっしゃると言うとったな。
教えて下さったのはJA香川県綾歌南部の瀬戸宏隆さん、25歳。(←若ッ!)

「前処理用の桶だよ。25本パックにした後、ここで花持ち剤入りの水で水揚げをするんだ。もちろん全量ね」
なるほど、こうやって出荷前にここに浸けて鮮度保持剤を吸わせるのです。


「たまに夏の暑いときはプールにしちゃうけどね・・・」
え??∑(゜◇゜;) あ、やっぱり??
「うそ」σ(゚┰~ )
はい、どうもありがとうございました。
出荷物は全量前処理を行います。
こちらがそのマーク。

出荷箱のここに付いています。

産地が行う前処理のことを“STS処理”といったりします。
出ました。業界のキーワード、“STS”。出る単間違いなし!
STSとはsilver thiosulfate(チオ硝酸銀)の略で、これが入った溶液で水揚げをするため、そう呼ばれます。
植物が収穫されたときに自らが出すエチレンガスにより、(エチレンガスを出す切り花は)一気に萎れていくのですが、このSTS剤はその老化作用を抑えて、切り花の寿命を長くするミラクルパワーを持っているのです。
殆どのカーネーションの生産者さんは、このようなSTS処理をしていますが、綾歌でもその処理をきちんとしていますよということを、出荷箱に明記しているのです。
![]()
さて、生産の次は綾歌の団結力について探ってみましょう。
綾歌では生産者の3軒と農協との4団体でチームを作り、担当制ではなく4組織で全部を行うという方法をとっています。
この組織の大きな担い手は25歳から36歳までの若いメンバーです。
こちらがその構成メンバー↓

あ、あのぉ普通でいいんですけど、普通で・・・^_^;
何もお願いしなくてもこんな風にフォーメーションを組んでしまうところが、日ごろの団結力の強さを物語っていますね。
「毎日会っています。会っている時間はお互いの奥さんより長いかも!」
というくらい彼らは密にコミュニケーションを取り合っています。
「公私を分けないんだよね。“ちょっと子供の熱出た!”みたいなことになると、事情も理解してお互い助け合う。“僕はこの担当”ではなく、4人で全部を担当するのです」
東京にも毎年定期的に訪問し、マーケット調査に余念がありません。
グループを構成するお1人にお話を伺ってみました。

あ、アレ?(゚ー゚?;)
お花の生産者さんですか?
「ハイ、岡内です」
これはこれは失礼いたしました(^^;)。。。綾歌のコアメンバーのお1人である岡内史行さん。27歳(←若ッ!)
こう見えて正真正銘のフラワーピープルです。
岡内さんはご卒業されてから某地方市場にご勤務されていましたが、平成18年から生産スタート。
仲間の皆さんの存在は?

「見本になるし、尊敬できます。経験豊富な方たちだから、助け合ったり教えてもらったり。“隣よりも良いものを!”っていう競争心も出るから良い存在です。競争原理が働かないと、良いものはできないからね!」
小学生のころ、ハウスに囲まれた通学路を毎日歩きながら花の生長を見ているうちに、自然に自分の庭で始めるようになったそうです。この時期には種をまいて、この時期には芽が出る、そしてこの時期には鉢上げが必要などというサイクルは、毎日朝夕見ているうちに自然に覚えたといいます。
観察力があるのですね。
みんなが同じような通学路を通っていたにもかかわらず、岡内さんには花や野菜が目に留まり、また別の人には別のものが目に留まるわけですから、やはり岡内さんは幼いころから植物の生長にご興味があったのでしょう。
そして、小学生低学年のうちからご自身でマリーゴールドやパンジー、ビオラ、サルビアなどのタネを撒き育て始めたといいます。
冬場でさえも、ご自分の部屋に土を持ち込んで、花を育てたのだとか。この興味と好奇心は半端じゃありませんね。
花生産て大変ではありませんか?
「大変というより楽しいな。苦にはならん」
花を生産するために生まれてきたような岡内さん。
生まれ変わったら、カーネーションじゃないとしてもまた花の生産をしたいといいます。
なんだか見た目によらず(あ、失礼!)本当に花好きなのですね。
綾歌はこんな花好きの生産者さんが集まっているグループなのです。

岡内さん、写真撮りますよ~。笑って、笑ってぇ~^_^;!!
【東京進出のきっかけは?】
綾歌は2009年から大田花き出荷してくださっています。お取引を始めてまだ年月が浅いのですが、何かきっかけはあったのでしょうか。

瀬戸さん「果樹や野菜の販売で大田市場でも野菜の方にはよく行っていたんだ。
あるときに大田市場の青果の方で会議があったんだけど、30分くらい時間が空いてしまって、フラッ~と花市場に行ったら、(大田花きカーネーション担当の)芳垣さんがいたんだ。
産地検討会などでお会いしたりして、顔だけは知っていたので声をかけてみたら、カーネーションを出してみようっていう話になってね。
それが始まりで今に至っているんだ。周りのみんなのお陰でいろんなことがトントン拍子でうまくいっている」
それまで花は地元と関西の市場のみに出荷していたそうです。
大田花きでカーネーション担当の「芳垣と目が合った」のがきっかけで東京に一度出荷してみると、意外にもマーケットの評価が高く、それ以降も「東京で勝負したい!」という気持ちが高まっていったといいます。
![]()
ここで復習ですが、そもそも母の日の発祥は何でしたでしょうか。
遡ること1900年代初頭、米国のアンナ・ジャービスという女性が、母親の追悼式で教会に集まった人々に白いカーネーションを贈ったことに始まります。
このアンナの母親というのは日曜日に教会で教師をしていて、なかなか人徳も篤く、南北戦争中に組織した女性運動クラブで敵味方を問わず負傷した兵士の衛生状態の改善に尽力した人なのだそうです。
母親の死後2年後に、アンナが教会で母親を偲び集まってきた人に白いカーネーションを贈る記念会を催したところ、母親思いのアンナに心を打たれた人々はいつも母親を思う大切さを認識して、毎年母親を集め母の日を祝ったことが発端となりました。
日本では、戦後米国の文化に倣ってカーネーションを贈るようになりました。カーネーションは日本でも生産され始めてから100年以上経ちますが、前回のウンチク探検隊でもご説明いたしましたとおり、昭和40年代のカーネーションの技術革新に洋花ブーム到来が相まって、国内のカーネーション需要と生産は爆発的に伸びていきました。
ところが、現在はコロンビアや中国などの輸入品が劇的に増え、国内生産者は生き残りをかけて策を講じていかなければならないのが現状です。
一般的には、工業製品では輸入が25%を超えると国産商品は大きな影響を受け、更に30%を超えると急速に息を潜めると言いますが、このデータから行くとなんと花き業界でもカーネーションの輸入は2007年の時点で既に30%程度。その後も増えていますので、更にその数字を上回っているものと思われます。こんなに右肩上がりで輸入が増えている花き品目をほかに探すのはなかなか難しいのではないかと思うくらいの輸入品率です。

このような輸入の増加は脅威に感じませんか?
森さん「全然感じないよ。」
マジで?∑(゜◇゜;)
「(消費者に対して)花の価値を下げなければ、輸入も受け入れたいと思うね。国産を買ったらモノが悪かった(だから花はもう買わない)とか、輸入を買ったらモノが悪かったと思われることがなければOKだよ。
むしろウェルカムくらいに思っているよ。周年通して消費者に良い花を供給するのが私たちの役目だから、輸入品とタグを組むことによってそれができるなら、ウェルカムだよ。
消費者の皆さんが欲しい時に自分たちが出荷できない時期だったとして、無理して変なものを出すくらいやったら、輸入にお願いしたいくらいやわ」
海外の見えない産地とも連携をして消費者の満足のために花を作るという森さんの心意気は、まさに本物。
コロンビアからでも火星からでもどんどん入って来い!って感じでしょうか。

もう一人、お兄さん格の岡田浩二さんにも同様に輸入品に対する見解をインタビューしてみましょう。
「脅威を感じないといえばウソになるけど、消費者は輸入品が必要だからそれを買うわけだよね。必要とさせた国内生産者に問題があるってことだと思う。マーケットが必要としているんだ。
本来なら必要のないものは生活に定着しないでしょ。
20年くらい前に米が不作だった時に、海外産の米を大量に輸入したことがあったけど、日本には定着しなかったよね。それと同じだと思う」
また、栽培者の高齢化が進み、栽培面積の減少、国産花きの将来の不安が叫ばれる昨今ですが、この綾歌においてはそんな話はどこ吹く風。ここでは20、30代を中心をしたこんなに頼もしい次世代経営者が確実に育っているのです。
森さんは後継に何の戸惑いもなかったのでしょうか。

「ないよ。19歳の時に大変そうな両親を見て手伝おうと思ったんだ。
花を触っていたら、自分の性格も元気に明るくなってね。それまでは“なんでそんなに怒りよるん?”て言われるほどいつも怒っていたのに。それで花をやろうと決心した。最近は“いつもニコニコ楽しそう”って言われるわ」
なるほどぉ~。その笑顔が若くて元気で丈夫なカーネーションを作る秘訣なんですね。
そのスピリットは、綾歌のカーネーションを手にされた消費者の皆さんにも届いているはずです。
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【香川県で花を作るということ】
カーネーションの原産国はシチリア島などの南ヨーロッパ、或いは北アフリカや西アジアなど地中海沿岸地域です。
前々回の丸福清花園さんのオリーブではありませんが、香川県で何かを栽培するというのはやはり地中海性気候に似た気候環境を生かせるという特徴があるのですね。
地中海といえばローマ帝国が繁栄を遂げたところでもありますし、周年を通して農産物は豊穣な収穫ができるからということもあり、周辺各国でも取り合いとなったほど自然の恵みに溢れているところですね。シチリア島などはまさに地中海の真ん中に位置して、みんなが“欲しい”と領地合戦の戦場となったところです。
そんなカーネーションの原産地地中海と同じような気候条件でカーネーションを作れるいうのは、香川県が持つ大きな強みです。
香川は少ない人口ながらも比較的就農率が高いと伺いました。

瀬戸さん「小豆島でオリーブ生産が盛んなように、瀬戸内海気候は地中海性気候に似ているんだよね。日照量が多くて雨が少ない。だから周年何か作れるというメリットがあるんだ。
一方、日本一面積が小さいから量では他県に勝てない。香川県は農業従事者数が多いけど、1軒1軒の所有面積も小さくなる。こういうデメリットをカバーするのに十分な気候があるから、香川県の農業はあらゆる品目を幅広く作っているんだよ。実は香川県は規模は小さいながら全国でも有名な農産物の産地なんだよ」

香川の特産はうどんやカーネーションばかりではなく、コメを始めとしてカキ(柿)、ブドウ、イチゴ、レタス、ブロッコリー、アスパラガス・・・もちろん県内、関西地方の消費のほかに東京のマーケットでは高級店を顧客に勝負しています。
こちらはちょうど取材当日出荷を迎えたイチゴちゃん。
「さぬきひめ」ですって。ネーミングも麗しい☆ヽ(*'∀'*)/☆゜:。*。

しかも・・・全長が5cmもあるぅ~(≧∇≦)

青森のリンゴ、愛媛のミカンみたいに「うちはコレ!」というのはありませんが・・・ま、オリーブがそれに当たるかな・・・幅広い品目を栽培できる、或いは他県にできない品目を栽培できるというのが香川県の得意技です。
また、香川の場合、多岐にわたる品目を栽培できるだけに果樹や野菜の生産農家は品目のかけ持ちが多いのですが、花と畜産では専業率が高く、80%以上が専門農家であることが特徴です。ちなみに畜産といえば“讃岐三畜(さぬきさんちく)”:讃岐牛、讃岐コーチン、讃岐夢豚も香川特有の農産物です。

讃岐三畜のほかに“讃岐三白(さぬきさんぱく)”というのもあります。
砂糖、塩、木綿の三つの特産を指していますが、実はここ綾歌にとって讃岐三白と言えば「砂糖、塩、ホワイトラブ」。
ホワイトラブとは綾歌から出ている白いカーネーションです。
「讃岐といえば、砂糖、塩、ホワイトラブ」という合言葉もどうぞお忘れなく( ^―゜)b
いやいや、それにしても雨が少ない快適な気候の下、香川で農業をするというのは様々な選択肢があるんですね。
「雨にはそんなに降られんけど、女の人にはよくフラれます・・・(;_;)」(by瀬戸さん)
“結婚しとるやろー!” ヾ(ーー )ォィッと突っ込みたくなりますが、フラれて傷心のときはカーネーションにイヤされてくださいな。

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JA香川綾歌南部の格言
・ カーネーションは過剰なくらいの栄養で育て、それでもスポイルされずに生き抜いたエリートのみを選りすぐるべし!(森さん流)
・ 部署担当制ではなく、グループ全体で全てを行うべし。
お子様が熱を出しても助け合い♪
・ 輸入品はライバルではなく、消費者目線で供給不可能な時期の協力者と心得よ。
輸入カーネの増加はそれだけ消費者が必要としているからという事実を忘るべからず。
・ 切り花を観賞するということは、ご飯を「いただきます」と一緒で、花の命をいただきますということ。
地中海のシチリア風日光を浴びて育った綾歌のカーネーションから若さと元気と丈夫さをいただき、自らの英気を養うべし!
消費者の皆様に一言
・ カーネーションは特に使い勝手の良い花なので、母の日のみならず日常で使ってください。(by 森さん)
・ TPP参加ムードが高まる中、花を作る人は花が好きな人だと思うので、職業としての花ではなく、花を愛する人たちによって育まれた温かいカーネーションを見てください。そして、綾歌の花のオーラを体感してください。(by 岡田さん)
・ 「綾歌の花で癒されてください」(by ISSA似のフラワーピーポー岡内さん)
綾歌のマークはこちら。買出人の皆さん、箱にこのマークがついていたら、香川の綾歌からカーネーションを出荷する若い精鋭たちを思い出してくださいませ。

↑この三角形のマークは、平成18年に綾上町と綾南町が合併して綾川町が生まれましたが、綾川町の前身にあたる綾上町の町章です。
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【ウン探のつぶやき】
カーネーション(carnation)の語源を考えてみました。
カーネーションて日本語でなんて言うのでしょう。ナデシコというと一般的には一重のナデシコを指しますし・・・

薔薇みたいに当て字もないし、carnationという言葉はどこからやってきたのだろう(~ヘ~;)ウーン
よく見るとcarとnationでできているではないか。
つまりcar+nation=車国家か??
いやぁ、違うでしょ。どう考えても。これは絶対にハズレ。
Reincarnation(輪廻転生)と関係があるのか?まさかね。
昔、英語の先生に聞いたら「全然関係ない」って言われたしな。
・・・と思ったら、それを語源と説く人もいるようです。
ナデシコやカーネーションを英名でpinkというように、その花色から肉体を連想し、Carnis(肉)、或いはincarnacyon(神の化身、肉体化)が語源であると。
これらの言葉に「再び」という意味のReをつけると、Re-(再び)+incarnacyonで輪廻転生という言葉になるので、無関係ではなく元の語は同じということになりますね。となると、いよいよカーネーションを見る目も変わってきます。なんだか深い。
更に有力なのはcoronation(花冠)やcorone(花輪)から派生したとする説。
カーネーションが自生していた地中海の国ギリシャで行われた儀式の冠にカーネーションが使われていたからだそうです。
ちなみに学名のダイアンサス(Dianthus)は「神の花」という意味を持ちます。
最初の疑問に戻りますが、カーネーションを日本語で何と言うかというと、オランダセキチクといいます。
日本には江戸時代初期にオランダ人経由で紹介され、オランダセキチク(石竹)とかオランダナデシコなどと呼ばれていました。「竹」の字にあるように、確かにその節が竹っぽいですね!

【カーネーションの花言葉】
母の日の花色選びの参考にしてくださいませ。
赤 : 真実の愛、愛情、母の愛、愛を信じる
白 : 亡き母を偲ぶ、尊敬、純潔の愛、私の愛情は生きている
ピンク : 感謝、上品、暖かい心、熱愛
黄色 : 美、友情
オレンジ : 温厚
紫、青 : 誇り、気品、永遠の幸福
オット、香川県シリーズ最後の最後に忘れてはいけない、讃岐うどんの話。
讃岐うどんが香川で普及したのは、うどんに不可欠である小麦、塩、イリコ(煮干し)、醤油などの原料がこのあたりでは特産品で、容易に入手できたからだそうです。
もともとは弘法大師空海が平安時代に唐から讃岐うどんの技法を持ち帰り普及させたとされます。
香川ご訪問の際は、讃岐うどんグルメツアーもお忘れなく。どのお店も外れなくおいしいですよ。

カーネーションの生産は1908年に東京都の中野で始まり、今や世紀を超える生産の歴史があります。
現在花市場ではありとあらゆる品目品種が流通しており、その多彩さは品質とともに世界トップレベルですが、国内で100年を超える生産の歴史を誇る品目は数えるほどしかありません。
カーネーションの流通は年間スタンダードで300品種、スプレーで400品種ほども。世界のマーケットを見ても、日本は最大級のカーネーションのマーケットを持っているといえるでしょう。
そんな中で、大田花きのカーネーション担当者を以ってして「確実にカーネーションのトップ産地のひとつ」と言わしめるのが、香花園(こうかえん)さんです。
香花園さんは香川県高松市塩江で市内でも少し標高の高いところ(香花園は標高約200m)にあります。


あれに見えるは四国山脈。あの山の向こうは鳴門の渦潮徳島!

香花園さんは誕生以来35年、谷口さんと真鍋さん、野口さんの3軒から構成される出荷グループですが、野口さんは鉢物生産がメインのため、大田花きには谷口さんと真鍋さんにご出荷頂いております。
谷口さん親子。右がお父様の伸次さん、左が伸輔さん。

こちらは真鍋さん親子。
お父様の光裕さんと佳亮(よしあき)さん

まずお邪魔したのは谷口さんの圃場です。
ん??


何か違う、何か違う、何か違う・・・何だろう
デッ、デカッ!!∑(゜◇゜;)
ツボミ、デカッ!!



なんと大きいつぼみなのでしょう。
え??ホントデスカ(←自分の目を疑う隊員)
・・・グルグル(@_@;)
コレ、ツボミィッ??


なんだかカーネーションのつぼみがロリポップキャンディーか・・・
もしくはに地球儀か見えてきました。
なんだかホルストの組曲『惑星』が頭の中をグルグルグルグル(@_@;)
ちょっと試しにグルリとガクの部分の円周を測ってみましょう。
どれどれ・・・

11.7cm・・・
な、なんと、11cm越え!?
あ、あれも、これもぉ??ドーユーコットデスカァア?
「大きいのは品種特性もあるんだよ。それは大きい品種なんだよね」
ちなみにこの品種の名前は?
「キング・オブ・キング!」

最敬礼!('◇')ゞ
大変失礼致しました!king of kingのサイズをメジャーで測ってしまうなんて恐れ多い。
それにしてもこのking of kingを除いたとしても、どうしてこのような立派な大輪ができるのでしょうか。

「何もやっていないよ。
普通に作っているだけ」と伸輔さん。
ンまたぁ~、もうそんなこと絶対ないナイ。信じナ~イ!
謙虚に答えてくださっていますが、これはやはり一つ一つお伺いしてみることにしましょう。
堆肥に秘密あり?
谷口さんのところでは大きな植木鉢に土を入れて栽培する隔離ベンチで土耕栽培しています。ここで重要なのが土作りです。
「土、見る?」


秘密の土作りかと思いきや、結構簡単に見せてくれました。
み、見たじょぉ~(-.-)!!!
夏には一度堆肥などの有機物を入れて良く耕します。
↓こちらがその堆肥。


ん?モミガラらしきものが入っている?
「牛糞堆肥を使っているんだよ。以前は水分調整のための副飼料がワラだったんだけど、それをくれる人がご高齢などを理由に止められてね・・・今はモミガラを使っているんだ。」
「こうして堆肥を混ぜた土に苗を植えてね、苗が小さい時はミストで潅水、根が活着して苗自体に吸水パワーがついたらパイプを経由して養液を混ぜた水をやるんだ」
ベンチの上にこういうパイプが2本走っていて、ここから潅水をします。



「これを“養液土耕栽培”っていうんだよ」
はい、出ました。「養液土耕」、ウン探の新しい四文字熟語。コレ花の生産のキーワード。
テストに“出る単”間違いなし。(゚-゚*)(。。*)ウンタン
土耕栽培は土に直接苗木を植えて育てる昔ながらの栽培方法です。より自然な状態で栽培するので、一般的には生命力の強い、引き締まったしっかりしたものが出来上がります。
このときに土にこだわりつつ、養液土耕栽培することによって、麗しくも強いカーネーションができあがるのです。
「作物はとにかく土だよね。ロックウール栽培はそれなりにはできるけど、その上ができん。土はそれなりに作るのは難しいけど、その上ができる!」
なるほど、これぞ品質にこだわりを持つ生産者のお言葉!
施設内管理に秘密あり?
チョットチョット、見てください。カーネーションの葉っぱってクルンクルンしているの、ご存知でした?
あっちこもこっちも、面白いくらいクルンクルン♪



「肥やしがよく効いて栄養がいきわたると、葉がクルンとするんだよ。だからクルンとしていた方がいい。もちろん、これも品種特性が大きいけどね。品種によっては栄養がいきわたってもクルンとならない葉もある。
そして、葉の表面に白い粉状のものがある方がいい。これを“ワックス”って呼んでいるんだけどね。
葉がクルンとしてワックスが載っていたら、肥やしが効いて元気な証拠。肥やしを効かせるためには施設内の管理が大切なんだ」
↓葉の表面上のワックス。

↓葉っぱのクルンは豚のしっぽ状がベスト!


このような良好な状態の花にするには、重要なのは施設内の管理ですか。
温度調節とか遮光とか、そんな感じかしら??←シロウト(-.-)

「いやいや、ポイントは空気の入れ替えなんだよ。換気がよくできていると結果的にワックスがよくのる。
夜明けとともに天窓を開けて空気の入れ替えをするんだ。日中は開けておく。これをすると全然違うんだよ」

むむむム「(´へ`;ムムム
何が違うのですか。何のために空気の入れ替えをするのでしょう。←まだワカッテナイ(-.-;)
目的は以下の通り。
① 湿度を下げる。
② 外気から炭酸ガス(CO2)を取り込む。
③ 朝外気を取り込むことによって温度を下げ、日中に向けて温度を上げていくという温度コントロールを行う。
なるほど~。
①は湿度が高いと病気にかかりやすいのと、葉の気孔が開かず呼吸できずに息苦しい、そして蒸散が少ないのでので、水や養分を吸わなくなってしまうということなのです。
また、②は夜間のうちに密閉された空間で呼吸していたカーネ様たちがたくさん酸素を吐いて、朝は酸素濃度が高くなっているのですね。
そうか、換気をきちんと行わないと、施設内の湿度が上がり、炭酸ガス濃度も高くなり、光合成や呼吸ができず生長しなくなってしまうわけや。←ワカッタ(≧∇≦)!!
炭酸ガス濃度を上げるためにこのような補助的なものも使っています。

基本的には空気中の炭酸ガス濃度が高い方が光合成が盛んになります。通常空気中には300ppmほど含まれていますが、閉じっぱなしにしているとすぐ半分くらいの値まで減ってしまいます。そうすると植物の生育に多大なる影響を及ぼしてしまうわけですね。
こちらは温湯パイプ。西日本独特の手法です。
「夏は暑いけど、銀色のマルチが熱を跳ね返してくれるんだよね。だからマルチのすぐ下は気温が低く、逆に下の方へ行くほどベンチの地温が高い。そうすると根っこは土とマルチの間でよく動くんだ。
ところが冬は、土の下に温湯パイプを敷いて地熱を温めるから、根を下の方に張らせる」
つまり、カーネーションにとって居心地の良いい快適温度があるということでしょうか?
「15度から20度くらいやね。最低温度は8度」
なるほど。これはまさに地中海温度ですね。
「改植後、とりわけ花芽を形成し始めたときにはよく肥やしを吸収するんやけど、毛細管現象で寒暖差があった方が肥やしをよく吸うんだよ。だから昼間は温かくても夜温は下がらんといかん。

関東はいいよね。関東ローム層でできているから、いわば“地球と繋がっているわけ”よ。だから地を温めるパイプの必要がない。土もフカフカだし、深いところに根を張るからベンチも温湯パイプもいらないんだ。ちなみに深いところに根を張ると、ガクが割れにくくなるというメリットもある。」
ほぉ(゚o゚ )、関東で栽培するはそんなアドバンテージがありましたか・・・でも関東には地球海性気候に似た瀬戸内式気候はありませんよ。
あらゆるハンディキャップをクリアして、日本でトップクラスのカーネを作ってしまうなんてすごいじゃないですか。

惑星のように球状のツボミがゴロゴロしているカーネーションの圃場にはウンチクが凝縮していました!
<小さなツボミから開花まで>
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品種選びに秘密あり?
谷口さんはスタンダード品種に限って栽培しています。どうしてスプレーを栽培しないのでしょうか。
「1回スプレーもやってみたんだけどね、スプレーとスタンダードは管理が異なるんだよ。
肥料管理も異なるし、温度管理もスプレーのほうが2℃高い。だからスプレーをスタンダードと一緒に作ると、スプレーがえらいごっつくなるんだよね。1本で見ると立派にできるように見えるんだけど、色気のないムキムキマッチョ系スプレーができてしまうんだ。しかも切る回転が遅くなる。だからスタンダードに特化しているんだ。消費者はしなやかで上品なカーネーションの方がいいでしょ」
一般的にカーネーションは栽培過程でガクが割れたりすることがありますが、これは大きくなりすぎてしまって割れてしまうのですか?
「まあだいたいは品種特性だね。そういう品種なんだよ。誰が作ってもね。ガクが5つの品種はまず割れるね。割れるのがいやだからヨーロッパでは盛んに交配をしていたんだ」
これ、よく見ないと気付きませんが、カーネーションのガクが割れないように留めているのですか?
↓ガクが割れないように透明のテープで留めてある。

「そうだよ。これひとつひとつやっていくねん」
つぼみが大きすぎてガクが割れてしまうのですか?
「いや、大きすぎてではなくて、これもやっぱり品種の特性だよね。
ガクが5枚だと大体割れちゃう。シム系(※)は大体5枚だからまず割れちゃう。6枚から7枚あると大丈夫だったりするんだけどね」
※シム系=スタンダード品種で、1938年米国のウィリアム・シム氏が育成したウィリアムシム(赤大輪)という品種から枝変わりで生まれた品種。100品種以上が選抜され、40年間に亘りシム系品種が一世を風靡したこともある。


おっとー、これらの惑星、いやカーネーションのガクにツボミのうちからひとつひとつテーピングをしていくなんて。
しかも花やから丁寧にやっていかんとあかんし、カーネーションやからちょっとした加減で節がポキッと折れてしまうし、上手にまかんと目立ってしまうし、きちんと巻いて貼らないと結局ガクが割れてしまうことになるし・・・これは気の遠くなるような作業です(+_+)
一方、真鍋さんは栽培品種のこだわりとしてスプレー品種も含め育種を行っています。
「自分たちが売るための品種を自分で開発できるからね」

将来は、必要とされるオリジナル品種で埋めたいといいます。
改植に秘密あり?
「改植(かいしょく)」とは、そのシーズンの出荷が終了したら、今ある株を総取替えして新しい株を植えることです。
この辺りにそれぞれの生産者さんのご苦労やらノウハウやらが凝縮しているはずなのですが、谷口さんはどのようにされているのでしょうか。

「毎年改植するよ」
おっと。

「出荷が終わったら株を抜いて堆肥を入れて、薬ではなく蒸気で消毒して、新しい株を植え込む・・・毎年するんだ」
2年で改植という生産者もいらっしゃると思いますが、どうして大変なのに毎年改植するのですか?
「2年目の株は彼岸や年末などのタイミングに合わせられずに早く咲いてしまうんだ。
根が張っているから、その分元気でしょ。だから出荷したい時期より早く咲いてしまうっていうことなんだよ」
なるほど毎年1年生を植えて出荷したいタイミングに出荷できるよう調整しているということなのですね。
2年生では自我が目覚めて言うこときかない?みたいな感覚でしょうか。
土耕栽培×毎年改植って、カーネーションの栽培パターンの中でも最も大変な方法だと思うのですが、1,000坪(約3,300m2)もあるこの広さを全て改植って、どのくらい時間がかかりますか?

「1か月かけるつもりで予定して3週間で終わらせるよ」
すごいな。谷口さん、働き者です。しかも1年で最も暑い時にそれそれは大変な作業でしょうに。
仕事できる人なんやろな~(*´∇`*)
「我々が採用しているカーネーションの栽培方法をカリフォルニア方式っていうんだ」
カ?カリフォーニャ方式??
う~ん、なんだか急にアメリカ~ン♪![]()
ホテルカリフォルニアという歌なら存じております(古っ!)が、カーネーションカリフォルニア方式って一体何??
「研究されたカリフォルニア大学に倣って“カリフォルニア方式”って呼ばれるんだ。
特徴は
① メリクロン苗(組織培養で増殖されたウィルスフリーの苗)を使う
② 土は完全無菌、蒸気消毒
③ ハウスの中は清潔に♪
という3つが大条件であるということなんだ」
なるほど、ここに香花園さんの栽培の基本があるわけですね。
これは真鍋光裕さんの御父上が学んで日本で広めた方法だそうです。
カーネーションの普及
冒頭で日本におけるカーネーション生産の歴史は100年を超えると申しました。
どうしてカーネーションが日本の花きマーケットで「バラ・キク・カーネ」と呼ばれるほど三大品目のひとつに名を連ね、今でも尚廃れることのないほどの膨大な流通量があるのでしょうか。
菊のように「日本の花」というイメージもありません。
だからとって年に一度の母の日の存在だけがその理由ではありません。
それはやはり100年の生産の歴史が物語ってくれます。あ、いえ、真鍋光裕さんが語ってくれました。

その転換期は昭和40年代に訪れます。

ちょうどこのころ、カーネーション生産の技術革新が起きたのです。
イギリスにおける産業革命、ヨーロッパにおける文芸復興(ルネッサンス)、或いは現代におけるIT革命のようなものです。その革新の内容とは以下のとおりです。
① 土壌消毒技術の確立
カーネーションは連作障害も起こりやすく、ウィルスにもかかりやすい。ですから、それまでは土を毎年(あるいは隔年)全取替えしていました。(こりゃ大変だ(+_+))
それを土壌消毒という技術を導入することによって、取り替えるのではなく、今使っている土を繰り返し使えることができるようになったのです。
② 無病苗の導入
無病苗(病原体を持たない苗)とはそもそもフランスのジャガイモ栽培において、モーレさんという方が初めて導入したものでした。
それを香川大学の狩野(かのう)教授という方が日本にも導入したのがきっかけです。ちなみに狩野教授は真鍋さんのお父上である真鍋行雄さんとご友人だったのだそうです。
③ フラワーネットの導入
このネットのことです。


今は最初からネット状になっているものを張るだけですが、技術革新前はまず外側に針金を張って、その間に糸を張っていくという地道で時間のかかる作業をしていたのです。
④ 自動潅水システムの導入
そうです。ご想像のとおり自動潅水システムが導入される前は、ホースで水をやっていたわけです。
しかし手遣りでは広い栽培面積をカバーしきれませんし、コストもかかりますし、今ほど大量のカーネーションを生産するのは困難になっていたはずです。
このような技術革新を経て、日本のカーネーションの生産効率は劇的に向上し、生産量、品質ともに世界一のマーケットを創出するに至りました。
これとあいまって同じく昭和40年代、日本に洋花のブームが到来しました。

カーネーションの需要は爆発、技術革新を迎えていたカーネーションはこの需要に応えるべく爆発的な量を生産、供給するようになり、この上向きのスパイラルが上昇気「龍」のようにどんどん伸びていったのです。このようにしてカーネーションは日本中に一気に広まっていったのです。
ところでカーネーションていつが一番キレイ?
カーネーションは周年出荷がありますが、いつが旬で最もきれいな時期なのでしょうか。

香花園さんでは出荷は9月から6月。出荷後に改植、再び9月から開花が始まります。
もちろん大田花きのカーネ産地の中でトップクラスに君臨する香花園さんのカーネはいつお会いしてもうっとり麗しいのですが、中でもいつが最もきれいかお伺いしてみました。
「花は何でもそうだけど、季咲き(人工的なコントロールを加えずに、季節を迎えたことで開花すること、つまり旬ということですね)がきれいなので、やっぱり4月から5月にかけてだね」

生産のプロがおっしゃっているのですから、これはホントウです。
母の日に向けたこのころのカーネーションが最も美しくなるのです。
9月から6月までの出荷のうち、3-5月の3ヶ月間で年間出荷量の3分の1、6月単月で3分の1を出荷します。
つまり通算10か月出荷しているうち、この3カ月半くらいで、全体の3分の2を出荷しているのです。美しさもそのころにピークを迎えると言っていいでしょう。
カーネーションは香花園の皆さんにとって・・・
谷口さん「釣りのための資金源やな」←谷口さん、いい味出しています。仕事にモチベーションは不可欠!
真鍋さん「人生の最高のパフォーマンスです」
何を隠そう、真鍋光裕さんのお父上である真鍋行雄さんは、昭和45年に結成された日本カーネーション技術協会の結成員のお一人。日本で近代的なカーネーション生産の技術を確立したメンバーの一員なのです。
「カーネーションは生産者にとっては扱いにくい品目じゃないかな。
連作障害はあるし、芽かきに始まり手のかかる品目だし、切りにくいし・・・」
切りにくい・・・?
「そう、ほかの花みたいに花が咲いたから切るっていうのではなくて、次にこのツボミが上がってくるからココを切らなくちゃいけないと考えながら切らなくちゃいけないんだ。
ほんとうまくいかないね。全然言うこときいてくれへん。今までカーネーションを作ってきて満足したことは一度もない。だけど嬉しいのは消費者の人に喜んでもらったときだね」
失敗談もあります。

「芽かきをパートさんに任せたら、4輪のはずが3輪になっていたことがありました」
ガーーーーン(沈没)(;_;)
これはショックです。
「でもすべて私が悪いんです。指導の仕方が悪かった・・・(泣)
いろいろ失敗してますよ」
カーネーションの生産者さんにとって芽かきは最も大変で重要な作業の一つです。
これに失敗すると、商品になるはずのカーネーションを傷つけたり、全体のバランスを悪くするだけでなく、次に上がってくる芽を摘んでしまうことにもなりかねませんから、なかなか被害甚大です。
↓芽かきで取られた芽


輸入激増 その対策は?
そうです。カーネーションは言わずと知れた輸入激増の品目。
下のグラフは平成19年までのデータですが、その後もカーネーションの輸入品は現在に至るまで右肩上がりに増え続けています。
このことをどう捉えているのでしょうか。

真鍋さん「海外品が多いというのは、問題と捉えるか、当然の流れで認めざるを得ないとするかのどちらかだと思いますが、私たちの場合はむしろ後者と捉えています。
安くて良いものが売れるのは当たり前ですから。
としたら我々は輸入にはないものを出していこうとする取り組みが大切なのです。でも花は食べ物と違って安全性などの点からは差別化しにくいでしょう。
コロンビアか中国かと言われれば、国産のカーネーション生産者が相手にするのはコロンビアですね。規格もきちんとしているし、生産も安定している。これ以外のことをいかに強みとして持つかが国内生産者の課題ですね。全てを価格で競争し始めてしまったら、将来はなくなります。
絶対にこれなら勝てるということはまだ見つかっていません。ただコロンビア産のカーネを“脅威”には感じていません。強敵であることは間違いないのですが」
海外品を良きライバルとして見て、ともに業界全体を盛り上げていきたいというお考えをお持ちです。
海外品にどう対処していくか、谷口伸輔さん、真鍋佳亮さんをはじめとする新しい世代の課題です。
香花園さんの格言
・ 養液土耕栽培 × 毎年改植 × 換気で炭酸ガス取り込み × 香花園さんの技術と愛情 = 史上最強のカーネーションの誕生
わ~、ホルストの惑星がまた聞こえてくるぅ~!!(≧∇≦)
・ 輸入品は脅威ではなく、良きライバルと捉え、国産勢として競争するべし。
そのことによって消費者のフラワーライフをより充実させることができる。
消費者の皆さんに一言
・ カーネーションの良さは扱いやすさと日持ちの良さ、また価格も安定していることです。色のバリエーションもたくさんありますから、是非素敵な1輪を見つけて使ってください。
・ 香花園でなくてもいい。良い花を選んで買ってください。買ってすぐ枯れるのが一番悲しい。良い花を買って、1日でも長く花と向き合って楽しんでください。そして、花屋さんは1日でも早く消費者に花を渡してください。
深い!^~^!
ふかいな~。
エゴからの脱却!
消費者のための花であるという基本から決してぶれることがありません。

・ 「同じ品種なら」(という条件において)葉がクルンと巻いているものの方がコンディション良好です。理想は豚のしっぽよ~ん。
香花園の皆さん

後列左は真鍋さんの御子息の真鍋修平さん
今回やってきましたのは、羽田からびよ~んと飛んで香川県。

香川県の人口約100万人、うち高松市の人口42万人。・・・だいぶ集中していますね。
皆様ご存知でしたでしょうか、高松とはその名の通り松生産のメッカなのです。
高松は盆栽に使われる錦松発祥の地で、現在でも全国生産の約8割がここ高松産のものです。
←松生産の圃場
香川といえば讃岐うどんとイメージを直結させてしまいますが、しかしこの花業界では別の方程式がございます。
松ではありませんよ( ^ー゜)b
香川から出荷される花桃(以下モモ)を忘れてはなりません。香川県で花桃の生産といえば、丸福清花園(まるふくせいかえん)さんです。香川県高松市国分寺町にあり、香川県の中心寄りに位置しています。
丸福清花園さんは、高松市街から20分、高松空港から25分のところにあり、徳島、高知、愛媛にもそれぞれ1時間で行けてしまう大変利便性の良い立地にあります。
こちらは、丸福清花園第2代目の現取締役会長の福家義哲(ふけ・よしお)さんです。
う~ん、“福の家”だなんて、なんとも縁起のよさそうなお名前![]()

なんと福家さんは大学をご卒業されてから10年間、皇居警察に勤務、現在の皇太子様が幼少の頃、護衛についていらしたという業界でも特異な経歴をお持ちの方です。
そもそも戦前は地主さんで900坪の庭木から生け花用に木を切って、生け花の先生方に提供していたそうです。
これを当時“切り出し屋さん”と言い、戦前はこれが結構盛んだったそうです。
ところが昭和48年、お父上である初代の福家行雄さんが枝物で農業を始められるということで、義哲さんは10年務められた皇居警察を退職され、御実家に戻り就農されました。ちょうどこの設立のときに義哲さんの奥さまのお腹にいたのが現在の代表取締役社長の耕也(やすなり)さん。
丸福清花園3代目。
生まれたときに「この子は生まれながらに就農するから頑張ってやってもらうように“耕也”」と命名されたそうです。現在の耕也社長はまさに丸福清花園の歴史とともに成長されたのです。 そのような経緯で福家家3代に亘り枝物生産に取り組まれている丸福清花園の知られざる生産現場を探ってまいりましょう!
原点とコンセプト
ある日、小さな子が入院中のおばあちゃまに
“桃の節句やし、モモの花でも買って届けて、早く良くなってもらおう”
とお店に行ったら、桃の節句直前だというのにモモの花がなく、泣きながら帰ったという話を行雄さんが聞きました。
昭和50年代当時、枝物の消費の中心は生け花用だったので、現在とは違い店頭で一般向けの桃は3月3日を目前にして、既に売り切れていたのです。
ショック・・・(+_+)チーン!
当時、全て生け花用として130cmのみを出荷していた行雄社長は、小さな子にこんなに残念な思いをさせてしまい、規格外の短いモモを捨てるのは忍びないと、地元国分寺町の園児約500人にモモの無償提供をを始めました。
すると、園児たちは小さいながらも字を書くことができて、多くのお手紙をもらったそうです。
その内容はついつい笑ってしまうものから、目頭が熱くなるものまで・・・
![]()
「飾ったら、となりのポチが見に来ました」
「家に持って帰ったら、ママが涙を流して抱きしめてくれました」
などなど、たくさんのかわいくて温かいお手紙を壁に貼って、子供たちの気持ちを受け止めました。
それを指さして当時の行雄社長が
「義哲!見てみぃ」と。
義哲さんの胸にこみ上げるものがあったといいます。
このことが丸福清花園さんが「普段使いの枝物」を開発する原点となったのです。
ところが、“モモの後片付けが大変だから・・・”と一部の園児の父兄から無償提供に関するご意見がありました。よかれと思ってやったことではあったのですが、それが善意の押し売りであったと思うようになりました。
そこで、行雄さんは「子供たちは求めているのだからと寄付ではなく、欲しい人が手に入れられるようにすればいい」とMSブランドを立ち上げることにしたのです。
こうして生まれた丸福清花園さんのコンセプトは“脱生け花の枝物”。
生け花用や特別の日のための枝物ではなく、消費者の皆様に日々楽しんでいただくための枝物を提案、供給していくことです。
最初に取り組んだスーパーでの販売で評判がとても良かったため、生け花ではない日常花としての産地作りが始まりました。
今では日常花としての枝物生産の専門性をより高めようと、品目を特化して栽培を進めています。
記録 ~「OTAへの出荷が始まる」~
福家さんは昭和58年以来約30年間、経営や生産に関することを毎日欠かさず記録していらっしゃいます。
これらの本はすべてその記録!w( ▼o▼ )w オオォォ!!
何かの辞書かと思ったら、福家さんの日誌だったとは・・・。 この記録には、●月●日に何があったらから東京市場に出荷しようと思ったなど、行動に至るまでのきっかけや思考回路など全てが記録されています。
「1999年2月8日、 OTAへ出張。◎◎さんとお会いして現物をお見せしたら1ケース送ってと言われ、送ってみた。するとXXフラワーの△△さん、YYYフラワーショップの▲▲さんから “他のものと全然違う!あるだけ全て送って!”と言われ、出荷スタート。」
当時、大阪のマーケットで「子供の成長を祝う桃の節句に、枝の先を切ってあるモモを販売するなんて何事だ!」と返品になったことがあったそうです。もちろんその商品は丸福清花園さんのものではありません。しかし、そのようなことが当たり前に起こることを知っていた福家さんは、1999年2月8日上京した際、東京に流通しているモモの枝先を見て、自分の商品も東京で勝負できると確信しました。
この記録簿は丸福清花園さんの歴史を語ります。
日々の弛まぬ地道な努力の上に築き上げられた真髄の結集です。
「モモの産地は確立するまでに時間かかるでしょ」という義哲さん。
比較的生長が早い草花に比べ、生長が遅く、特殊な技術を必要とする枝物は、一朝一夕に産地を形成できるものではありません。だからこそ、こうして記録を残し、後世に引き継ぐのです。
記録することって、大切なのですね。
風邪ひき×ピチピチピーチ
前回のウンチク探検隊で、モモの花色が紫がかることをブルーイングというと申し上げましたが、丸福清花園さんでは通称「風邪ひき」と呼んでいます。その原因の一つに生産者が出荷までに長い時間抱えてしまい、促成に時間がかかってしまうパターンがあると考えます。
市場ではきれいに見えても、消費者の皆様のお手元に届くときは“発症”して風邪はマックス。
「若い花が欲しい人に対して、おばあちゃんをどうぞと言っているようなもんやで」と福家さんはいいます。
確かにおばあちゃんが欲しい人にはおばあちゃんをお勧めすればいいのですが、モモちゃんの場合は受けたストレスレベルが低くて、若いピチピチピーチがいいのです
やはりモモですから。
他産地では普通1週間から2週間促成する一方、丸福清花園さんでのところでは促成期間は2月なら20時間から30時間。
1月でさえもどんなに長くても4日まで。高い技術で短時間で促成し、速やかにピチピチピーチちゃんを出荷するのです。
規格再編
このような経緯を経て、消費者の皆さんに日常楽しめる花として提案していくために、大田花きの担当者とミーティングを重ね、主にサイズと入り数の2点から規格を見直しました。
以前 → 現在
120cm L (100本) → 2L(60本)
100cm M (200本) → L(120本)
80-75cm × (ナシ) → M(100本)
70-60cm MS(400本) → S(500本)
これが丸福清花園の日用の花としての提案型販売です。
日本一小さい面積
都道府県別でいくと香川県は日本一小さい面積になります。
私たちが小学生のころは大阪府と習ったものですが(世代がばれてしまいそうですが)、1988(昭和63)年、国土地理院が面積の算定法を見直した際に岡山県との県境にある井島がどちらに所属するのか不明瞭との判断から、香川県の面積から差し引かれ日本で最も小さい県となりました。
更に大阪府には関西空港ができたことにより面積が埋め立てられ広くなり、香川と溝を開けられ、たとえ井島の面積をプラスにできたとしても、日本一小さい面積というポジションは不動のものとなりました(!)
しかし、香川県は全国でも有数な農産物の生産地。限られた農地をフルに生かして効率の良い栽培を行います。
もちろん丸福清花園さんも例外ではありません。こちらの圃場をご覧ください。
「これモモですか?」(゚o゚ )と突っ込みたくなるような高さだと思いませんか?
株と株との距離およそ150cm。

普通、桃の木は高さ3mくらいになりますが、福家さんのところではこのように低木に仕立てて密植しています。この生産方法は限られた土地の中で少しでも効率良く生産するために考えられた方法です。
このサイズで株を作り上げていくことによって、MSサイズを作りやすくなります。
これぞコンパクトでありながら、高品質のエッセンスをギュッと凝縮させた商品を作る秘技なのです。
もう一つ秘技を教えちゃいましょう!(≧∇≦)
実は、 水田と畑を利用して栽培しています。
皆さん、水田ですよ、スイデン!通常お米を作るところでモモを作っているんですよ!
水田で樹木を栽培しようとすれば、普通は根腐れしてしまいます。香川のこの乾く土地だからこそ必要に応じて溜め池から水を引いてきて、水分量をコントロールすることができるのです。
↑こちらは梅の生産圃場ですが、水田を活用している様子がよくおわかりいただけるかと思います。
【豆知識】
香川のことを「讃岐(さぬき)」といいますが、これは「通り抜ける(=さぬく)」が語源であることを義哲さんが教えてくださいました。昔からこの辺りは瀬戸内海を抜けるには必ず通らなければならない所で、瀬戸内の要所として発達してきました。
小さいながらも大きな機能を果たしてきた場所なのです。
('-'*)(,_,*)('-'*)(,_,*)ウンウン
日本の地中海
香川県は瀬戸内海式気候で地中海性気候と似ていると言われます。(なんだか香川ってアジアのナポリみたいだ~!)
似ているといっても日本ですから梅雨があります。しかし梅雨が明けると50-60日間は雨が降らず、更にここ福家さんの周辺は高松市でも内陸にあるので最も雨が少ないところの一つ。
この気候条件がまたモモの栽培には適していて、デリケートな花芽が形成される7-8月に雨が少ないということは、それだけ多くの花芽を付けることができるということなのです。
地中海性気候だけあって、地中海沿岸の特産であるオリーブがここ香川でも特産となっています。県木としてもオリーブが指定されていて、福家さんのところでも切り枝用のオリーブを栽培しています。
こちらのオリーブは超有名な某報道番組のスタジオに装飾された福家さんのオリーブ。 
もうこうなったら香川の海が地中海の輝きに見えてきちゃいます。
←見えますね( ^ー゜)b!
エシカル生産
エコ消費とかエコ活動など今まで社会のキーワードは「エコ」でしたが、ここから時代は流れて現在のキーワード“エシカル”(=ethical,倫理的な)になっています。社会貢献的活動を指す時に使います。
昨今あった伊達直人を名乗るタイガーマスク運動はまさにエシカルブームの一端と言えるでしょう。
丸福清花園さんも日頃からエシカル生産に取り組んでいらっしゃいます。但し、ブームではなく、福家さんに倫理的価値感に基づいてしっかりと定着しているものです。
ポイントは以下の通り。
① 有機リン系の農薬は一切使用しない。
その他の農薬も一切使用しません。モモにつきやすい害虫はヒメシンクイガという小さな虫です。農薬を撒けば一発バイバイですが、農薬は天敵も害虫も全ての虫を一気にやっつけてしまいます。
しかも同じ期間で害虫は5サイクル(5回繁殖期を迎える)に対し、天敵は2サイクルと、害虫の方が繁殖のサイクルが早いので、殺虫のために農薬を使い始めたら農薬ばかり使ってしまうことになるのです。
そこで、福家さんは農薬の使用を一切やめて、春先(シーズン終了後)に石灰などからできた天然の薬剤を株にコーティングします。
以上!
え?「以上」って??それだけ??
そうです。この薬剤はモモの株自体が病気になってしまったり、病虫害に遭うのを防ぐためのもので、もうホントこれだけ。
「虫は自然任せだよ」とさわやかスマイルの耕也さん。
皆さん、普通ありえませんよ、こーゆーのッ!
どうしてこれだけでやっていけるのでしょうか。
② 交信撹乱材(コンフューザー)の使用(していた)
「コンフューザー」とは商品名ですが、ヒメシンクイガのメスと同じフェロモンを出す装置で、これに交信を撹乱されたヒメシンクイガの雄が交尾ができず、産卵させないようにするものです。εε(@_@)33
こちらがそのコンフューザーです。
モモの枝先にこのように付けます。↓ 既にモモの枝は切ってしまっているので、今回は仮に桜の枝に付けていただきました。(う~ん、曇天)
しかしコンフューザーにも弱点があります。
弱点その1◆ コンフューザーはヒメシンクイガをターゲットとしているため、これを使うと、ヒメシンクイガばかりが減って、逆に天敵が増えすぎてしまいます。 天敵はジョロウグモ!
↓こちらの方です。
桃園(ピーチガーデン♪)をヒメシンクイガから守るために活躍してくださいます。
(イメージ写真)

コンフューザーに頼っていた時は、ジョロウグモが増えすぎたために、枝と枝の間には向うが見えなくなるくらいぎっしりとクモの巣が張っていたのだとか。
(イメージ写真)
良く見るとそこにヒメシンクイガの成虫がたくさん引っかかっているのだそうです。
これぞ天然の“ヒメシンクイガホイホイ”ですな。
弱点その2◆ コンフューザーが出す“フェロモンもどき”は空気よりも重いため、下の方に沈殿します。
ヒメシンクイガは枝の上の方を飛ぶので、高い枝に対しては効果を期待しにくいのです。
弱点その3◆ コンフューザー購入のコストがかかります。必然的に単価に反映せざるを得なくなります。
そこで!( ^ー゜)b 圃場での自然の生態系のバランスを整え、今やコンフューザーもほとんど使用しないところまで作り上げました。丸福清花園の圃場では、農薬を使わないので天敵(ジョロウグモ、テントウムシ、ハチ、カマキリなど)が自然に増えます。
そうすると彼らがヒメシンクイガを食べちゃってくれるのです。(*^^)vイェイ!!
「バランスを保ってやることが大事」という耕也社長。
これはまさにモモを生産しながらビオトープを作ってしまったということですね。
これぞまさに桃園のビオトープ
なんて素敵な響きでしょう(≧∇≦)
「モモは桃の節句に飾るものだから、小さいお子さんがかわいい頬にモモの花をあてるかもしれないし、誤って口に入れてしまうこともあるかもしれない。 そのようなことを想定しながら、農薬は使わず、堆肥を入れたり草刈りを一生懸命する。
わたしらのモモは桃花酒用の浮かべるモモとしても使ってもらっているから、安心安全の商品なんだ。
劇薬を使わないことで、私たち自身の体を守れる。消費者の安心安全を守る。そして、この栽培方法によって環境を守ることができる。 このようなエシカル生産を心がけているんだよ」
福家さんの観賞用としてだけではなく、桃花酒に浮かべるモモにも使えるといいます。そのくらい安心安全なモモなのです。 これらの生産ノウハウをまとめると、香川県ならではの特徴を生かしたもので、なかなか他県には真似できないものなのです。
ここに福家さんの栽培技術、ふかしの技術が加わると魂が吹き込まれたふっくらと優しいモモが出来上がるのです。
咲いた咲いた ~ふかしの技術 秘密の花桃
~ 桃のお節句が五節句の一つとして制定された江戸時代、旧暦を採用していましたから当時の3月3日は現在の4月中旬ころに当たります。
しかし、現在の3月3日では戸外のモモはとても開花していません。実際に消費者の皆さんがご購入されるのはそれより1-2週間前でしょうから、それまでにかわいらしい花を咲かせようというのはやはり特別な技術が必要となってくるのです。
ここからはオフレコですよ、読者のみ・な・さ・ん♪
って言ってもうてるやないかい!ヾ(・ε・;)オイオイ
でも、ちょっとだけよ~ん^~^!
一般的には、モモを吹かす際は室温25度、湿度80-90%で調整します。しかし、福家さんの場合は、室温はもう少し高い●●度(あ、読めない!)、逆に湿度はもう少し低い●●%(あ、読めない!)前後で調整します。
冬場の外気は乾燥するので、輸送中のショックを控えるためにこうしているのです。保温庫に入れるときも急にこの条件にするのではなく、段階的に設定していきます。
←保温庫内のヒーター
保温庫に入れてからは、2月なら20-30時間以内で促成加減を見極めて出荷します。先にも申し上げましたが、促成に1-2週間かける他産地と比べるとすこぶる短い。
たびたびすみませんが、普通ありえませんよ、こーゆーのッ!
ここにもやはりこだわりがあり、長く入れていると“風邪ひき”を起こしやすくなるので、3日で出荷できるノウハウを獲得したのです。
開花ステージを揃えるのも技術の一つ。誰から教えてもらったわけでもなく、丸福清花園さんで試行錯誤、研究された上で培った独自のノウハウです。この技術を持っているかどうかが、お客様が買って楽しめる花か、それともすぐに散ってしまう花かの分かれ道です。
福家さんの桃園はまさに「秘密の花桃」。マジックをかけられたかのように、最期まできれいに咲き切る福家さんのモモをぜひ一度お試しください。福家さんの試行錯誤はまだまだ続きます。丸福清花園さんはこれからも進化します。
ニセモノ・アケボノ・アラワル!∑(゜◇゜;)
これだけこだわりを持って試行錯誤を重ねて作り上げた福家さんのモモは本物。とりわけ福家さんが栽培している「曙」というのは、福家さんの育種品種です。
従来品と矢口という品種を交配して、選抜に選抜を重ねて誕生しました。 発色が良いばかりではなく、水揚げが良く、ストレスに強いのが特長です。
その名は『枕草子』の冒頭部分から引用しました。
「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明りて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。」
(イメージ写真)
まさに春の到来を告げる花にふさわしい名前ですね。これも家庭花として使っていただきたいという気持ちから付けられたものです。
↑こちらが福家さんが出荷されるときに使用する丸福清花園ブランドの箱です。
こちらをご覧ください。
丸福清花園さんはその「曙」の名前で商標登録をいたしました。花桃で「曙」という商品は、その名前そのものが丸福清花園さんによる良い花桃の印、まさに品質保証の証なのです。
曙は商標登録された商品ですから、権者(この場合は福家さん)が許可しない限り、花木などにその名前をつけて販売してはいけないのです。
ところが・・・!こちらは某生産者から出荷された商品。
「花桃 あけぼの」とばっちり書いてあります。
(; ̄Д ̄)なんじゃと?
ひらがなで表記されていたとしても、同類とみなされ違法行為となります。
耕也社長「(ニセモノは)咲きムラがあるでしょ。つぼみが固かったり花が散りそうなまでに咲ききっていたり。しかもこれは風邪まで引いている。ふかす技術が全く未熟な人の商品やわ」
ホント!ご覧ください、この差!左側が福家さんのモモ(ふかす前のものをお借りいたしました)で、右側がニセモノ。よく見ると枝の色艶も花の付き方も全然違いますし、芯(枝の先)もヒメシンクイガに食われ、黒くてボロボロしています。
福家さんのモモは1年生のピチピチピーチですから、右側ほど肌が黒くなることはありません。
また、1本の中で開花ステージに大きな差があることもお分かり頂けると思います。
(こちらはニセモノアケボノ↓)
福家さんのモモはつぼみのステージがきちんと揃っていて、芯(枝先)まで花が付いています。
このように・・・↓
(写真は両方とも福家さんのモモです)
こんなにも品質に大きな差があるのですね。 気軽に農業に取り組むのは良いことだとしながらも、福家さんが心配されるのは他産地から出荷された曙を買って、買ったとたんにすぐ散って、消費者ががっかりしてしまうこと。
「曙に対する信頼もなくなりますし、消費者の花離れが起きてしまう」と危惧します。
福家さん、とりわけ社長の耕也さんはこの件に関しリアクションは起こさないとおっしゃいますが、悪気がなくても福家さんの許可なく花桃を“曙”と名乗って出荷するのは違法となりますので、何卒ご注意ください。
「あけぼの」「アケボノ」「AKEBONO」など、どのような表現をしても同様です。
生産者の皆様、どうぞ宜しくお願い致します。
モットー

「瀬戸内海の太陽をの光を十分に浴びて、力強く育った新鮮な枝物をいち早く届けるのが私たちの仕事です。
つまり植物の生命力を精いっぱい引き出して、“生命の具現化”をすることです。
これが“つくり屋の本質”です。
子供がコップに水道水を入れて飾って十分というのが私どもの目指すところです。」
そういう義哲さんのお言葉には力強さが感じられます。
このようなモットーから丸福清花園さんは前処理剤を使用していません。
それなのに、丸福清花園さんのモモは全て咲き切ります。まるでマジックをかけたかのように。
枝物でありながら、前処理剤も使用せず、コップ一杯の水で咲き切る桃って、普通あり得ませんて、ホント。
讃岐うどんから学ぶもの
初代からの教えは「木を見、木に聞き、木に学ぶ」。
高品質の枝物を栽培し、需要家の皆様に提供することにより花文化の発展に貢献したいという思いから、「現場を離れることなく常に生産に注力すべし」という社是ならぬ、園是です。
ところが昼食でうどん屋さんに行ったとき・・・(そうです、香川の方はほぼ毎日うどんなのです。香川に行って初めてその気持ちを理解し、おいしいうどんに恵まれることの幸福感を共有しましたが、そのお話はまた別の機会に)・・・香川において多くのうどん屋さんはセルフサービスになっていて、極めて効率的に振舞うスタッフの行動や厨房の向こう側できびきびと動く人たちを義哲さんは、じーーーーっ(-.-)と観察しているのです。
そして発した言葉は・・・ 「讃岐うどんのこのサービスのシステムは究極のサービスなんだよ」
さすがアンテナがお高い。
「お客様を満足させるのはどうしたらいいかを追究し、自分たちの作業の無駄を省き、安くておいしいものを素早く提供する。
その中には“茹で置きをしない”などのこだわりもあるんだ」
確かに、香川のうどん屋さんはどこも“安くて、早くて、おいしい!”の三拍子が揃っています。なんとなく通り過ぎそうになったポイントでしたが、福家さんのご指摘で勉強させていただきました。
観察すべきは木のみならず、生活のすべてに及ぶのです。
父から子へ
義哲さんは皇居警察にお勤めでしたが、実は義哲さんのお父上の行雄さんも警察学校の教官でした。それはそれは厳格な方だったとのことです。
福家行雄さん
耕也さん、生まれながらに就農するとされてお名前までそのように付けられましたが、就農を決心される際に心理的な抵抗はありませんでしたか?
「全然ありませんでした。小さい頃に“自分は大きくなったらこういう風になりたいな”と思っていた通りに今なっているよ」
スゲッ!
すごいですな。自己実現です。
義哲さんは「息子が“学校卒業したら、農業継ぐけんなぁ・・・”と言ってくれたときは涙が出るほど嬉しかったよ」と振り返ります。
義哲さんの奥様は生け花とお茶の師範代、若奥様はNFD1級のお免状をお持ちで、お花屋さんご出身。
内需の功、いや、それ以上の戦力となっていて、彼女たちのお陰で利用者目線で品質管理や総合チェックができる仕組み作りができているのです。
出荷作業においては実際に女性の鋭いセンスと仕事の緻密さを必要としていて、現場では女性が活躍しています。
耕也さん「まだ私で3代目。枝物の産地は出来上がるまでに時間がかかるでしょ。3代目なんてまだまだ若い方です。
5代6代目くらいにならないとね。そのころにはお客様から絶大な信頼を得られる産地になっていたいですね。 “丸福清花園なら絶対安心!”てね」
将来脈々と受け継がれるであろう香川の枝物産地を築いく一世代としての責任を全うします。
「東京に3代住んだら“江戸っ子”といえる」と言いますが、枝物3代はまだまだだなんて、厳しい世界ですね。
丸福清花園に流れる哲学
農業を始めるときに、義哲さんは先輩に「お前、貧乏するぞ」と言われたといいます。でも義哲さんは次のように思いました。
「貧乏結構、たとえ貧乏になっても俺はやる!農業で儲けようなんて思ったらあかん。
農業は人々の生活の原点やから、それをやろうってことは自分は貧乏でも、社会にきちんとしたものを供給するということや。
例えば人の役に立って、お金をいただいたとしても自分はミニマムの生活をする。
さもないと大競争時代には戦っていけない」
そして、故行雄社長には次のようなことを耳ダコができるほど言われたことだそうです。
「質素で慎ましい生活態度で他人の倍働きなさい。それが良いものをより安く提供するということです。
それがものづくりたる農業の本質である。これを守ってこそ大競争時代に生き残っていける。世の中の基本を支えるのは農業なのだから」
他産地がどうこうよりも、自分の人生をかけて農業をやっているわけですから、この思いをお客様に伝えるまで。今は農業をやっていて良かったと思うと義哲さんは言います。
人の倍働き、慎ましい態度でミニマムの生活を送るとは、つまり清貧の思想というか、“足るを知る”ということでしょうか。これぞ福家さんのフィロソフィーです。
丸福清花園の格言
・ 瀬戸内海はアジアの地中海ィ~☆
瀬戸内式気候(温暖でドライな気候)を生かして、高品質を生み出すべし。
・ 地域の特性を生かし、日常用のコンパクトな枝ものはコンパクトな土地で効率良く栽培すべし。
香川の面積を侮ることなかれ!
・ 消費者の皆さんに日々の生活として楽しんで頂ける枝ものを志すべし。
目指すは枝物の脱生け花。
・ 農業は自分を守りつつ、延いては消費者を守り、環境を守るべし。
圃場では自然の生態系を作りエシカル生産を実現すべし!
・ フィロソフィーを持ち、貫徹すべし!
・ 現場を離れるべからず。
「木を見、木に聞き、木に学ぶ」作ることにエネルギーを注入せよ!
福家義哲さんご夫妻と福家耕也さんご夫妻
消費者の皆様へひとこと
・ 日本の地中海でできたモモを最期まで楽しんでください。
・ 咲きムラのないもの、枝肌が若くてきれいなもの、風邪ひきを起こしていないピチピチピーチを選んでください。
・ 丸福清花園さんはモモだけではなく、ほかの枝物も出荷しています。
しかし、より専門性を高めるために、その時期その時期にひとつの出荷品目に特化しています。
花桃の次は啓翁桜です。夏になればオリーブ、七夕金明笹、秋には実付きオリーブなどが出荷されます。
花桃だけではなく、是非福家さんの種々の枝物を使ってみてくださいませ。
<写真・文責:ikuko naito@hanaken>![]()
“灯りをつけましょ ぼんぼりにぃ~
お花をあげましょ 桃の花ぁ~♪
五人囃子の笛太鼓ぉ~
今日は楽しいひな祭りぃ“
ホント、日本には良い童謡がたくさんありますね!
そう、もうすぐひな祭りです!
ひな祭りの発祥についてご存知ですか?
発祥は古代中国で、3月に行われていた“身の穢れを清める行事”に由来します。この行事を3月最初の巳(み)の日に行うことから「上巳節(じょうしせつ)」と呼び、日本へは平安時代に入ってきました。
ですから今でもひな祭りのことを「上巳(じょうし)の節句」とも言います。

どうしてこれが“桃の節句”と呼ばれるようになったか。

現在ではひな祭りといえばひな人形を飾り、白酒、菱餅、ハマグリのお吸い物などで祝うのが一般的ですが、その発祥の頃には、川上から盃を流し、自分の席に流れ着くまでに歌を詠む「曲水の宴」が催されていました。その際にモモの花を添えて白酒を飲んだことから桃の節句と呼ばれるようになりました。
平安時代に日本に伝播後、室町時代には貴族の女児たちの人形遊びである「ひない祭り」と一緒になり、ひな祭りの原型ができました。中国ではモモがその花の明るさから冬の暗さを追い払ってくれる神聖な木とされてきたこともまた、女児の成長を祝う行事に使われている所以です。
やがて安土・桃山時代には貴族から武家社会に伝わり、江戸時代になると庶民の間にも広まっていきました。時代とともに「お祓い」の意味は薄れましたが、江戸時代に五節句の一つとして制度化されました。ひな壇のほかにモモの花を飾るなど、現在のひな祭りに近い形になったのも江戸時代です。
【まめ知識】
① ひな人形を片付け遅れるとお嫁に行き遅れると言われる理由
ひな祭りにひな人形を飾りつけるご家庭も多いことでしょう。しかし、そのひな飾りも3月3日を過ぎたら速やかに片づけないと「お嫁に行き遅れる」とよく言われます。
それはもともとひな祭りの原型がお祓いの意味を持っていたように、ひな人形に自分の身代りとして身の汚れを託し、川や海に流していた風習に由来します。昔は藁や紙でできた人形だったので惜しまず川に流すことができましたが、ひな人形が豪華になるにつれ川に流すわけにはいかなくなり、代わりにすぐ片付けることによって厄を流すとみなしたのです。お節句が終わってもひな人形をそのままにしておくということは、つまり厄を落とさずに放置しているということになり、「お嫁に行き遅れる」と言われるようになったのです。
② ひな祭りに飾る菱餅の色は何でしょうか?
正解はピンク、白、緑の3色!
ではこの3色が意味するものをご存知でしょうか。
それは白が象徴する雪が溶けて、大地から草(緑)が生え、桃の花(ピンク)が咲く事象を表現したものなのです。

この色の組み合わせはまさに春の象徴そのもの!直線的な菱餅の中に、温かく柔らかい春到来のストーリーが流れていたのですね~。
また、ピンクは「魔除け」、白は「清浄」「清純」、緑は「邪気祓い」、菱形は心臓を表現し、女児の健やかな成長を祈るという意味もあるようです。
なんとも奥が深いではありませんか。
今回のウンチク探検隊も奥深さでは負けていませんよ!
はい、もうお分かりですね。(だいぶ前置きが長くなってスミマセン^_^;)
今回はひな祭りを象徴する花であるモモの生産ウンチクについてお伝えいたします。
皆さん、不思議に思ったことはありませんか??
旧暦の3月3日は現在の4月中旬ころにあたります。現在の4月中旬ころはモモは満開ですが、3月3日では戸外のモモはとても開花しません。
ではどうしていたのか。
明治時代、新暦に改められた当初は梅の花を代用したり、遠く南国からモモの花を運んだりしたようですが、関東の花農家さんたちは色々と工夫を凝らし、地面に穴を掘って室(むろ)を作り、ここで麦糠(ムギヌカ)などを発酵させ加温し、小さなつぼみの付いたモモの花を枝を入れ、早く咲かせたのです。
この方法は大正時代に全国に普及し、現在はこれを元に改良された加温方法で花を咲かせて出荷します。
う~ん、たった“触り”を聞いただけでもモモの生産ウンチク、なんだか面白そうです!
モモの生産といえば、関東では何と言っても川崎市馬絹(まぎぬ)の吉忠(ヨシチュー)さんをおいては語れません。大田市場から車で1時間足らずのところに位置しています。
お伺いしてみると、何と意外にも閑静な住宅街。
「馬絹」といえば東京市場の枝物の大産地でしたが、今では便利な立地に伴う宅地化の波により、実際の圃場は郊外に移転している産地さんも多いのです。圃場は郊外、作業場は馬絹というパターンが多いようです。
こちらは吉忠4代目の吉田恵一さん。早速今でも馬絹にあるモモの畑に連れて行っていただきました。


・・・が、やっぱり花は咲いていない(-.-)
もう桃の節句まで1カ月もないというのに。
咲きそうなつぼみすらない。まだまだ固い。

恵一さん、こんなにカチンコチンなつぼみで、ひな祭りまでに間に合うのですか??((б_б;)ドキドキ)
どうやって間に合わせて出荷しているのですか?

「ふかすんだよ」
ふかす?
「そう。室(むろ)でふかすんだ。そしてつぼみを大きくして出荷するんだよ」
「ふかす」とは、切ったモモの枝を温かい室に入れてつぼみを大きくして、出火前に開花調整をすることです。早速その室を見せていただきました。
「こっちの室は今使っていないんだけどね、昔の室だよ。入ってみる?」

とおもむろにふたを開け始めたのは、出荷場の地下室(ちかむろ)。
ギョギョッ∑(゜◇゜;) !!!
ヘビとか出てきませんか?
「ヘビはいないよ」と笑いながら一蹴する恵一さん。
せっかく重いふたを開けてご案内いただこうというのに、これは失礼いたしました。

この下にはどのような世界が広がっているのか。なんだか川口浩探検隊(古すぎる?)に参戦しているかのような恐怖心と好奇心にかられます。
1段1段が意外と高い。
一歩一歩、恐る恐る地下へ歩みを進めます。一段下るたびに気温と湿度が上がっていくのを肌で感じます。
先に下りた恵一さんが室を明るく照らしていてくださいます。
この先にはどんな世界が・・・?

ピカーン!

な、な、なんとこれが噂の室ですか。なんとも秘密の基地的。


気温は・・・16度ですか。(取材日にはこの室は使っていませんでした)

外気温が10度にも達しないこの時期は、とても温かく感じます。
明治の新暦への切り替えをきっかけに作ったものです。生産者によっては防空壕を使ったりすることもあるようです。
このように地下にある室のことをそのまま地下室(ちかむろ)といい、一方地上にある室のことを岡室(おかむろ)といいます。吉忠さんは今は岡室をメインに使いますが、繁忙期もピークを迎え、岡室だけでは商品が入りきらなくなると、今でも地下室を使うこともあるのだそうです。
岡室はこちら。
岡室の扉↓


こちらの室で、気温は25度。
ホント、室の中でふかせたものは、つぼみが赤く色付いてきています。

それにしても真冬の寒い中、昔の人は麦糠だけで本当に25度にも保っていることができるのでしょうか。

「できるよ。麦糠(むぎぬか)を発酵させるんだ」
とご説明くださったのは、一代遡って吉忠3代目の吉田義一(よしかず)さん。
おっと、ここで日本の枝物界の重鎮登場です!
(業界の方程式 吉田義一さん=泣く子も黙る枝物の革命児。でもご本人はいつもニコニコ)
麦糠ですか・・・あまり聞き慣れませんが、米糠ではなく麦糠をご利用になる理由というのはあるのでしょうか。
「米糠はガスが発生しやすいんだよ。エチレンガスとかね。そうするとどうしてもブルーイングといって、モモの色が変わってきてしまう。ピンクではなく紫色っぽくなってしまうんだ。こうなるともう花も咲かない。
北風が吹く寒い時には室がちょうどいいんだけどね、南陽系の暖かい日には室ではどうしてもガスが発生しやすくなってしまうんだ。だから気温が上がりそうだなって思ったら、ちょくちょく室を見に行って、ふたを外して空気を入れ替える作業があるんだよ。外にいてもわざわざ戻って来て空気の入れ替え作業をするんだ。それは大変な作業だよ」
なるほど、陽気に気を使って、室内のコンディション調整に頭を使って、そして室に駆けつけるときは足を使う。
これは大変です。
「この発生するガスがなかなか油断ならないんだ。
昔はイモでも何でも収穫物を室に入れていたでしょ。だから、家の人が室に芋を取りに行って、ガスが発生しているのに気付かずガスを吸って倒れて亡くなっちゃったりすることがあるんだよね。今でもこの近所でもたまに発生する事故だよ。ガスが発生するとそのくらい有害なんだ。麦糠はそこまでじゃないけどね。だから危なそうな時は飛んで行ってすぐに空気の入れ替えをする。モモの出来の良し悪しは、いかに自分で陽気の変化に気づいて、室内(むろない)にきれいな酸素を取り入れるかにかかっているんだ。室の中のコンディションも大きく影響するんだよ。

麦糠を使った調整って大変でしょ(笑)。だから室内(むろない)の温度調整も、私の世代から電気ヒーターを導入したんだ。
それでも生きているものだから酸素が足りなくなってくる。だから今でもきちんと空気の入れ替えはするんだ。
やっぱり(モモは)生きているよぉ」
心で植物の生命を感じて、植物の良いコンディションをできるだけ整えるようにする。義一さんのお話を伺っていると、なんだか植物の声を聞ける人のようです。このような方のことを匠というのでしょう。
匠といえば、枝物こそ匠の技が光るもの。
枝の生産にはどのような技が隠れているのでしょうか。
「生産というより枝折り(しおり)の技術だよね」
シ、シオリ(゚o゚ )( ゚o゚)??
「そうそう、“枝が折れる”と書いて、枝折り(しおり)」
エダオリではありません。シオリです。シ・オ・リ。
ポキッといくわけではありませんので、くれぐれも。
「昔は“紙織る”って書いて“しおる”って言っていたんじゃないかな。
“枝折る”とは広がっている枝を折れないように柔らかく曲げて、コンパクトにまとめ上げるという技術のことなんだけど、枝を束ねるときに紐などで縛らずに、い草をよじるだけで止めるんだ。紙を“こよる”みたいにね」
枝折るのは、放射状に広がる商品の品質保護と運搬効率向上のためです。
「こうやって枝折ったものを昔は“い草”でこよって結わいていたんだよ」
い草ですか?あの畳のイグサ?
「そうそう。これを見てごらん。これがそのい草だよ。

これを使う前にお湯に浸して柔らかくしてから結わくんだ。そうすると乾いたときにしっかりと止まって外れない」
なるほど、それはしっかりと結わえそうですね~。
それにしてもどうしてい草なのですか。しかも熊本から取り寄せていらっしゃるのだとか?
「昔は“クゴ”を使っていたんだよ」
“クゴ”って何ですか??聞いたことありませんが。
(勉強不足ですみません^_^;)
「“クゴ”って草の名前。吉忠初代の吉田仲右衛門(ちゅうえもん)さんのときはクゴを使っていたんだ。海近辺の河口岸とかに生えている草でね、引き潮のときは淡水に浸されて、満ち潮のときは海水に浸されるんだ。これがちょうど九十九里浜辺りにあってね。採ってきて乾かして、使うときに濡らして使っていたんだよ。当時はこれが丈夫だとされていたんだ。この辺りの馬絹の生産者だけが使っていたんじゃないかな。
それが今は九十九里の川がきれいに整備されて、クゴが採れなくなっちゃったんだよ。
そこで私が考えたのがい草なんだ。
私が30代の頃だったかな。クゴが足りなくなったときに畳屋さんに畳の切れっ端をもらってやったら、ちょうど良かったんだよね。それで新しいものをもらって使ってみたら、編んでいないものの方がいいってことがわかってね。藁もやってみたけど、意外と使いにくかったんだよ。今でもワラを使っているところもあるよ。だけど、い草がいいと思って熊本から取り寄せたら、なんとクゴより安かったんだよ。
い草だからさ~、高いものだと思うじゃない。でも畳を作るときに出る副産物だから、安く出してくれてね・・・」
室の加温を麦糠から電気ヒーターに替えたことや、枝折るときにい草を使うことなど、現代の枝生産のノウハウも義一先生(!)が馬絹で確立しました。い草に目を付けるなんて、なんだか感覚にとても優れているんですね。センスがいいというか、目の付けどころが違うというか。
「枝折るときにはこのい草を湿らせて使うんだ。そうすると乾いたときにパリパリになってほどけない。
結ばなくてもキュッと止まるんだよ。枝にも負担が少なく、無理をかけないんだ。そして何より丈夫だね。全然切れない。

これを見てごらん↑。結んでいるように見えるけど、結んでいなくて、ねじって留めているだけなんだ」
ほんとだ。強く広がろうとする枝を撒きあげているのに、結ばずしてしっかりと留まっているではありませんか∑(゜◇゜;)

引き継いだものをそのまま守って継承していこうというより、変えていこう、改善していこう姿勢を強くお持ちの義一さん。
“これはどうしてこんなやり方しているのか?こっちのやり方でやってみたらいいのではないか?”というように疑問を持って、“なぜ?”を繰り返し、新しいものをトライして検証を重ねる。いつも良くしよう、少しでも経費がかからない方法でやってみようと試行錯誤をしつつ、ここ馬絹で枝物の生産体系を確立したのです。
それでいて、義一先生は全然偉ぶったところがないんですね。(いつもニコニコ、本当に良いお顔をしていらっしゃいます)
で、こうやって枝折ったものを以前はコモで巻いて出荷していました。このコモとは米俵の上に撒くもと同じものです。厚くて大きく見えるからと今でも使っている方はいらっしゃるそうですが、持てばお客様の服も汚れるし、逆に厚くて実際のボリュームを大げさに見せてしまうという心配があるので、お客様にとってはどうかなという部分もあるのです。
「ワラはセーターに付くと取るのが面倒でしょ。それに今となってはビニールの方が見た目もきれいだし、プチプチ(緩衝材)を使えばその分保温効果もあるしね。汚れないし、ちょうどいいよ」
見た目といえば、その「枝折る技術」も見た目が重要なのだとか聞いたことがありますが・・・。
「そうそう。この枝折りの技術の如何で市場での価格も変わるものなんだよ。そりゃあうまければ見た目もいいから、値段も上がる。」
どうやるのですか。
「まず1枝折りを作るでしょ。

1枝折りはこのくらい・・・“このくらい”を感覚で覚えるのも修行のうちだね!」
「だいたい3-5本の枝で1枝折りを作るんだ。こうやってね」 
そして花の向きを片面に合わせながら1枝折り作り、それを4つまとめたものが1束で、これを表に向ける。
4枝折り × 3 = 1束(12枝折り)

横から見るとこうなっています。

次に1束の裏にもう1束合わせて、表裏どちらから見ても花が付いている状態にします。これを半丸といいます。
1束 × 表裏 = 半丸(24枝折り)

↑半丸を横から見た状態

そして、この半丸にもう半丸を付けて、表裏をなくし1丸(ひとまる)をつくります。“丸”はバケツの丸からきているようです。
半丸 × 表裏 = 1丸(48枝折り)

「吉忠さんの丸は芸術!」と絶賛されるほど華麗に仕上がるそうです。逆にそれほど熟練した技術が必要なものということにもなります。
またこれをセリ場で持ち上げて(持ち上げるのも大変な代物なのです!)買参人の皆さんにお見せするとそれはそれは美しいものだったのだとか(大田花き社員談)。
今では一度に大量のモモをご購入される方の少なくなり、1丸も量を必要としない買参人さんが殆どで、セリにかかるときは大きくても30枝折り程度です。
なるほど、この枝折る技術、束ねる技術に吉忠さんのノウハウが凝縮しているのですね。
「そうそう、モモがきれいに見えるも見えないも、この腕次第。昔はよく品評会でこの良し悪しを競ったものだったよ。
本当に手が疲れるけどね。枝折っている間はずっと手で握って抑えているわけだから」
この技術を習得して一人前になるまで、どのくらいかかるのでしょうか。
「そうだねー、この技術は研修で丸2年、地元に帰って3年の合計5年くらいかかるかな~。
腕が良ければやっぱり早くてきれいな仕事ができるからね。技術の習得が肝要だね」
義一さんはやはり習得が早かったのでしょうか。
「そうね、割と手先は器用だったな。自分で言うのも何だけど(笑)」
手を拝見してもよろしいでしょうか。

わぁー、職人さんの手をしていらっしゃいますね。
「いやぁ、もう今は全然きれいだよ。今は枝折る機械を入れたんだ。昔みたいに1丸もの大きいものは作らないし、い草も使わないし、便利になったよね。
でも昔は親指の内側から人差し指の側面にかけて割れるほど荒れていたよ。痛いし、カイジュウの手みたいに腫れてね・・・」
アタタタタッ(>_<。)イタイ!
そうだったんですね。義一さんの手を思えば、機械で枝折れるようになってよかったですね。
今でももちろん、注文があれば義一さんが腕を奮って枝折ります。


義一さんがモモをやろうと思ったのは20歳くらいの頃。
御祖父様にあたる初代吉忠の仲右衛門さん(当時60歳+くらい)を見習って始めました。
「“上手に作れるようになったな”と褒めれた時にはそれはそれは嬉しかったね~」(*´ー`喜)
そうですよね。全国の名を馳せる枝物産地のゴッドファーザーに褒められたわけですから。
そのゴッドファーザーは当時37人のお弟子さんを持っていらしたそうです。“ちょっと教わりに来ました”的な人を含めると、もう人数は分からないほどだそうです┌|◎o◎|┘スゴイ!
そんな御祖父様の背中を見つつ「おじいさんが頑張って作り上げたものを無くしてはいけない!」と決心されたのがちょうど20歳くらいで、枝物生産を始めたきっかけだそうです。
「当時は苦しい思いをして寝ずに働いたよ」
と回顧する義一さん。
そんな時代があったからこそ、今の義一さんがあるのでしょうね。
【吉忠さんが成し遂げたこと】
① 供給が難しくなっていたクゴの代わりにい草を利用し始め、継続可能な素材を利用し枝折りの技術を伝承している。
② 麦糠を電気ヒーターに替え、室内のガス発生を抑え、品質向上。仕事も効率アップ!
③ 初代仲右衛門さんや二代目一男さんから引き継ぎ、枝折る技術を確立。多くのお弟子さんに伝授し、日本に枝折る技術を普及させた。
業界を進化に導いた革命児と言えるでしょう。
「でもね、全てが順風満帆であったわけではなく、昔はずいぶんいじめられたこともあったよ。
某市場に持っていくと、偉そうにしているお兄ちゃんが受け取りもしないで“そこに置くんじゃない!“と言ってきたり。体が小さかったからその分一生懸命やってやろうと思ったね」
山椒は小粒でピリリと辛い^~^!!といったところでしょうか。

「ウン探さんさぁ、知ってる?」
ん??何、ナニ?何をですか??(゚o゚ )( ゚o゚)
「モモの花は糖分が好きなんだよ」
へ~、そうなんですか。
甘くて栄養のあるものが好きなんですね。なんだか誰かの好み似ている・・・?
「モモの花が本来ピンクであるところ、紫色になってしまっていたりするのを見かけると思うんだけど、この現象がブルーイングで、栄養不足だったりするとこうなってしまったりするんだ」
ブルーイング現象を引き起こすと、つぼみも開かなかったり、花もすぐ終わってしまったりします。吉忠さんでは、このブルーイングを避けるために、出荷するモモは全量栄養剤を入れた水で水揚げをします。花き業界ではこのことを「前処理」といいます。
「もちろん出荷物は100%前処理を施すけど、お店やご家庭でも栄養をやってほしいね。市販の栄養剤を使うか、もしくは砂糖を入れてもいいかも。
栄養をやると今度は水中にバクテリアが発生して、水が腐りやすくなるから、一緒に殺菌剤を入れるといいよ。例えば水1リットルに台所漂白剤1滴+砂糖大さじ2-3杯とか。
でも栄養剤として売られている市販のものが一番いいよ。バランス良く配合されているしね」
はい、皆さん!( ^ー゜)b
モモを活ける時にくれぐれもただの水に入れないでくださいね。
吉忠さんからのこれらのメッセージは、生産したご自分だけが満足するのではなく、あくまでも消費者の皆さんに一番満足してもらうためのものです。ですから、皆さんも少しでも長い間きれいなモモをお楽しみいただくために是非栄養剤をご利用ください。忠実にやってみると、モモも長持ちします。
これホント(゚ー゚)(。_。)ウンウン!

せっかくですから枝折りの技術だけでなく、モモの生産についても教えていただきたいのですが・・・と恵一さんにお願いしてご説明いただきました。
吉忠さんのところでは、1株のモモの木から2年に一度、花を切ります。
これが今年切ったもの。丸坊主!

↓すると1年後の翌年にはここまで生長しますが、まだ切らずに我慢する。花が咲いても採花しない。

枝の色が若干明るく、若いことがわかります。
また、1年でここまで大きくなることに驚かされます。
↓そして2年目に強くて立派な枝まで生長するので、ここで出荷用の花を切る。

このナタで、ザクザクッと枝を切り落としていきます。

↓丸坊主のモモの木になる。

というサイクルを繰り返します。
切り落とされた枝はぐるりと巻かれて出荷場まで持って帰り、適切な大きさに束ねられ、先ほどの機械で束ねられて出荷されるわけです。

では、花芽をたくさん付けるために何か特別なことをされたりするのでしょうか。

恵一さん「特にないよ。枝に傷を付けて花芽を増やすという技術もあるみたいだけどね。」
どうして枝を傷つけると花芽が増えるのですか?
「傷つけられると、モモが
“あ!僕死ぬぅ~!”(;≧皿≦)。゜°。ううううぅぅぅ
と生命存続の危機を感じて、“ならばたくさん子孫を残さなければ!”とその分たくさん花を咲かせるんだよ。

でも、基本的には花芽の数は茎の太さで決まってくるからね。茎の太さは水を吸い上げる量に比例するでしょ。たくさん花芽を付けようと思って意図的に何かをしても、水を補給しきれないんだよ。つまりブルーイングになってしまうか、花保ちが悪くなってしまうか・・・。
花数が少ない方が大きくて力強い花が咲くけど、みんなは花がたくさん付いているほうがいいでしょ。だから自然のままがいいんだよ。枝に無理に負担をかける必要はない。それよりも枯れた茎をこまめに剪定してあげることの方が大切。そうすれば風通しも良くなって、病気も防げる。モモは縮葉病(シュクヨウビョウ;葉が縮れて落ちてしまう)などがウメやモモに多い病気なんだ」
なるほど~。フカイッ!
無理な負荷をかけずにモモが持つ自然の力を最大限に引き延ばすのですね。
あれ?ところで1年目の枝は切らないでそのままとっておくっておっしゃっていましたね。
となると、このモモの木にも桃の実がなるのでしょうか?
「小さな実が成るよ。落ちるくらい熟すととても甘くていい香りがするよ」
(よもや(-.-)、前々回のウン探のハボタン同様、恵一さんもモモの実を食べたことがあるのか・・・?)
「食べたことはないんだけどね」
あ、そうでしたか^_^; よかった。
実が小さいので可食部が少ないそうです。品種はあくまでも観賞用なので、モモの実の方は価値がは低いようです。
恵一さんは枝折りの技術も伝承しつつ、枝物に固執することなく時代のニーズに合わせ、他の草花も生産をされている頼もしい後継ぎさんです。
こちらの写真は義一さんが恵一さんに枝折りを伝授しているところの写真です。

三代目から四代目へ技術継承の瞬間です。お二人の笑顔が理想の親子像を物語っています。
そして更に遡って、こちらが吉忠2代目こと吉田一男さん92歳。お話をさせていただいたところ、お言葉もはっきりしていらして、とぉってもお元気です!

最後になんとこちらが初代吉忠こと吉田仲右衛門(ちゅうえもん)さんです。略して“吉忠”のお名前が生まれました。
じゃじゃ~ん!↓↓↓

何とまあ凛々しいお顔立ちをしていらっしゃる。
これらの写真は義一さんが見せてくださいました。

番外編になりますが、義一さんのご自宅はどこかの高級料亭かと思うくらい、大きくて立派で、室内もきれいです!



義一さん御自慢の南天やら松や梅などで床の間が飾られています。これらも昨年の12月28日に飾ったものがまだ元気に咲いているのだとか。早1か月半くらい咲いている計算になりますか・・・。
義一さんの前では「花が持たない」というのは花を飾らない理由になりませんね。ははぁ、参りました。
お部屋の中は賞状やらトロフィーやらでいっぱい!
よく見てみると、森嘉郎とか小泉純一郎とか、どこかで聞いたことのある方のお名前が賞状に入っているではありませんか。


(上の賞状に森元首相、下に小泉元首相のお名前が入っています)
所狭しと飾られた賞状の中の1枚は「農業技術の匠」の証でした。

農林水産大臣から与えられるものですが、平成20年に神奈川県で初めて授与されたのが何を隠そう義一さんで、『ハナモモ等「枝折物」の調整・出荷技術』において“生産性の向上など導入効果が認められる農業技術を開発や改良され~(中略)~地域活性化に貢献することが期待できるものである」として、農業技術の匠であることを証されています。
そして、授与は当時農林水産大臣であった石破さんから。
す・ゴ・い♪ こりゃホンモノだ。

「こういうの(これまでに受け取った数々の賞状)はね、たくさん頂いたし、偉い人の名前も入っているけど、その偉い人も任期6か月とかだったりする場合もあるでしょ。
それよりこれ見てよ、これ、コレ!私にとってはこれが一番だよ(笑)」
といって指差したのはなんと株式会社大田花き代表執行役社長磯村の名が入った「感謝状」。

平成23年1月との日付です。ついこの前!
「あちこちから賞状は頂くけど、市場からの感謝状ってあまりないでしょ。わたしにとってはこれが一番大切だし有難いね」
そのようにおっしゃっていただけて何よりでございますm(_ _)m ありがとうございます。
ところで、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか。モモをはじめとする植物は義一さんにとって何を意味しますか?
「人生の喜びだね!
良くできたときの喜びったらないよ。すごく嬉しいよ。それは市場での値段とは関係なく。
でもやっぱり値段が出ないとがっくりするけど(笑)。“値段は後から付いてくるもの”って生産仲間には言うんだけどね。
良いものを作りたいけど、気候やタイミングでうまくいかない。一生かかっても一人前にはなれないのが生産者。同じことをしていても、毎年毎年結果は異なる。
慣れていても毎年頭を悩まさないと、うまくいかないんだよね。“一生勉強”だよ。世の中は変わっていくから大変」
この辺りの言葉に「吉忠ブランド」を作り上げたヒントが隠されていそうですね。
常に探究心を忘れることなく生き物である植物を手掛けつつ、自分ではコントロールしえない天候や相場と対峙する難しさ。「吉忠」の飽くなき追究があるのです。
義一さん、生まれ変わったら何をしたいと思いますか?
「そうだね、生まれ変わってもまた花の生産をするだろうね。食べるための糧として花の生産をしていても、実は花が好きじゃない人もいるよね。

でも私は盆栽でも植木でも植物を見ると欲しくなってつい買っちゃったりするんだ。結局植物が好きなんだよ」
ここまでおっしゃった義一さんですが、なんと最後にどんでん返し(!)が。
花やら盆栽やらあらゆる植物をこよなく愛していらっしゃる義一さんですが、花関係の賞状と一緒に並ぶトロフィーたち。何のトロフィーだと思いますか。なんでも植物より好きなものなのだそうで・・・。
何と答えは↓・・・
「闘犬!!」
(ワンワン!)
とッ、闘犬??
「そうそう、闘犬。16歳のころから好きだから、植物よりキャリアが長いんだ。もう50年だね(笑)。」

ははぁ~、そのようなご趣味をお持ちだったのですね。犬と植物との共通点は何かありますか?
「何もないよ」(^-^)(サバサバッ!)
う~ん、そうですか。それにしてもどうして闘犬なのでしょう??
「そうだねー、普通の犬の(見た目の)品評会はお金持ちとか権力のある人が勝つってことがよくあるでしょ。お金があればよく訓練することもできるし、審査員に知り合いとかがいれば、口利きで審査が有利になることもある。
でも闘犬は大臣も政治家もお金持ちも、例え16歳の子どもでも土俵の上で勝負するには全く公平で正直な結果になるよね。嘘やごまかしはきかん。八百長なし!」
あ、そうですね、八百長、某業界では今問題になっていますが・・・。
「犬は“誰かに義理があるから負けてやってくれ”っていっても負けてくれないでしょ。面倒さえ見てやれば主人のために一生懸命頑張ってくれるんだよ。愛情を持って世話をすれば飼い主に貢献してくれるんだよね。
そういう意味では花と同じなんだね。私はそういう正直なものが好きなのかもしれない」
このようなところに義一さんの人となりが表れていますね。
そして出していただきました優勝旗!お手数をおかけしてすみません(゚ー゚;Aアセアセ

本年の1月23日に行われた大会で優勝されたそうです。ホントつい先日のこと。

じゃじゃん!
持ち回りの優勝旗です。あ!ありました。吉田義一さんのお名前!
一番前に出して、写真を撮らせてくださいッ!
パシャ!

「名前だったら他にもあるんじゃないかな。前にも優勝したことあるから。」
え?ホントですか?ではそれも合わせて2枚で写真を撮らせて下さいッ!
パシャ!

あれ??義一さん、ほかにも吉田さんのお名前がありますよ。出てくる、出てくる。
「あ、ホントだ」
って、え?忘れる??忘れてしまうくらい優勝が当たり前になっているのですか?強いですねー!!
もうこの際、全部まとめて撮らせてもらってしまえぃ!
パシャ!

極める人は何でも極めてしまうのでしょう。

【吉忠さんの格言】

・ モモの枝折り(しおり)の技術は芸術。国も認めた匠の技也!
・ モモ(植物)は生きている。呼吸して生長するものなり。
コンディションを細かく観察し、環境作りに心を配るべし。
・ 教えてもらったことをれたことをそのまま実践することなかれ。
常に疑問符を打ち、更に良い方法を編み出すべし!是、進化への道也。
・ 出荷物には100%前処理を施すべし!モモちゃんは糖分が大好き![]()
・ 植物は正直者。手間と愛情をかけただけ良いものが出来上がる。
時間を使い、生育環境に気を遣い、頭を使い、手を使い、足を使い、愛情を注ぐべし!
【消費者の皆様、およびお花屋さんへひとこと】
・ くどいようですが、モモは糖分が好き![]()
採花後は、出荷前もお店でもご家庭でも、糖分の入った水で栄養補給してくださいな。
・ モモは糖分が好きで、寒さが苦手。冷気や風に当てないようにしてくださいませ。エアコンもNGでございます。
【良いモモの選び方】
・ 枝折りになっているものについては、下よりも上の方が膨らんでいるもの。
・ ツボミが緩んで、きれいに色付いているもの。ここまで咲いていれば完全に咲きます。
但し、ブルーイングに侵されているものは選ぶべからず。
・ 黒い枝より飴色の奇麗な枝を選ぶべし。そして枝の肌もきれいなもの♪
それが枝が若くて元気な証拠です。

<写真・文責:ikuko naito@花研>![]()